糸井 | 藤野さんのお話、とてもおもしろかったです。 5時間の内容を1時間にしていただいて。 |
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藤野 | ダイジェスト版でお届けしました。 |
糸井 | お話の山場になっていた「投資」について、 もう少し掘り下げて訊いてもいいでしょうか。 |
藤野 | ええ、どうぞ。 |
糸井 | 投資っていうのは 株価の細かい動きを見ていくんじゃなくて、 人が人を見るときと同じような目線で会社を見て、 応援したいと思ったところに投資をする。 これが、藤野さんの投資信託が 業界でいちばんの成績をおさめている秘密だと おしえていただきました。 「何に投資をするのか」ということ、 とても大切だと思います。 |
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藤野 | はい、ぼくは何に投資をするのかというと、 結局「人」にするしかないと思っています。 機械に投資をするって、ありえない。 機械を動かすのは人で、技術をみがくのも人。 最終的にすべて人にかえってくるんです。 ですので、そういう人たちを率いている 社長さんの考えって、ものすごく重要なんですよ。 そして、それに賭けるのが、 投資の王道だと思うんですね。 ぼくらは、結果的に そういう投資が高い成果を生むことを信じているし、 実際に成果も出ています。 |
糸井 | 投資をしている人たちにとっての成果とは、 「利益」という数字のことですよね。 |
藤野 | そうです。 |
糸井 | ぼくらの仕事の中には、 利益には表れないけれど 新たな価値を生むものもあります。 それを、一時期 ハードマネーとソフトマネーと言っていました。 ハードマネーというのが貨幣のことで、 ソフトマネーというのは たしかに価値があるんだけど 明確に数字として表現できないもののことです。 ソフトマネーを稼ぐ仕事をたくさんすることは 株価に直接反映されないんだけども、 総体として見たときに株価は上がるんじゃないか? って考えたことがあるんですね。 そのあたり、藤野さんはどうお考えでしょうか。 |
藤野 | ソフトマネーが豊かな会社が、 その価値が認められて社会に受け入れられると 株価にも影響してポコッと上がる、 ということはあります。 ただ、株っておもしろくて、 ぜんぜんダメだったところから 急にポコっと上がるんじゃなくて、 その前から、ちゃんと上がっていたりするんですよ。 もちろん、ぼくは株価を万能だと思っていませんが、 意外と市場はソフトマネーの部分を評価するし、 ぼくらもそこを評価していきたいと思っています。 投資家にもいろんな方がいて、 儲かってるか損してるかなんて関係なくて、 この会社の商品が好きだから株を買う、という 完全に応援投資をしている人がけっこういますよ。 たとえば、カゴメはまさにそういう会社です。 カゴメの株主総会は、 株主が、研究者や社長といっしょに カゴメの文化を共有するための パーティーになっているんですね。 そのパーティーに出たいがために、 カゴメの株を購入している人が たくさんいらっしゃいます。 |
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糸井 | ああー! たしかに、それは数字には表れない価値に 投資しているんですね。 |
藤野 | もちろん、 ソフトマネーが豊富にあっても、 無名で今はまだ評価されていない会社も いっぱいあります。 それでも、ぼくらは、 いつか必ず株価が上がると信じていますから、 そういう会社には投資をします。 ただ、しばらくは上がりません。 上がらないんですけど、 真面目に仕事をする会社であれば下がることもないので、 結果的には、投資家の資産は減らないんですよ。 |
糸井 | なるほど。 |
藤野 | そうしていると、あるときに 「この会社は価値があるんじゃないか」と 誰かが気づいて、 多額のハードマネーを払ってもいいという集団が現れる。 すると、ポコッと株価が上がります。 こういうふうに、ソフトマネーも ちゃんと株価に反映されていくんですね。 |
糸井 | ぼくは野球をよく見るのですが、 そういう市場でのソフトマネーの認められ方って リーグ戦をしているスポーツの選手の成績と とても似ていると思いました。 「あいつ、数字にはなってないけど、 いい選手なんだよ」 って玄人筋がほめた選手は、 そのあとちょっと数字が上がるんですよ。 |
藤野 | ああー、すごく似てますね。 ぼくらもそういう目線で、投資をしています。 たとえば、ある会社に1億円を投資して、 約5年で60億円になったケースがあります。 |
糸井 | 1億円が、5年で60億円に! |
藤野 | 60倍になりました。 投資先は、 「JINS」というメガネを売っている会社です。 今では、街で店舗を見かけるようになりましたが、 5年前はちょこちょこっとあるくらいで、 あまり知られていませんでした。 そのころ経営が行き詰まっていて、 JINS の社長の田中(仁)さんは思い切って ユニクロの柳井(正)社長に相談に行ったんですね。 |
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糸井 | 柳井さんに。 |
藤野 | JINS の株価などをさっと見たあと、 柳井さんはこう言ったそうです。 「このままだと倒産しますね」。 |
糸井 | わぁ。 |
藤野 | そして、 「あなたはなんのために メガネの会社をやっているんだ」 と訊かれたそうなんです。 そのとき、田中さんは うまく説明ができなかったんですね。 それで、説明できなきゃ絶対ダメだ、と。 社長がわかってなかったら 社員もわからないし、お客さんもわからない、 というようなことを言われて、 田中さんはショックで 2日間くらい寝込んだそうです。 |
糸井 | うんうん。 |
藤野 | でも、彼のすごいところは、 3日目に立ち上がって、社員と合宿をしたんですよ。 これからどうしたらいいか、 どうなりたいかをめちゃくちゃ考えて、 とてもシンプルな答えにたどり着きました。 「世界でいちばんイケてるメガネをつくろう」。 そこで、会社がグッと変わったんですね。 ちょうどそのときに、ぼくらが会社訪問しました。 |
糸井 | すごくいいタイミングだったんですね。 |
藤野 | そのあと、 JINS はパソコンのブルーライトをカットする 「PCメガネ」で大ブレイクしました。 この背景には、 社長が「イケてるメガネをつくりたい」と言って 会社を変化させたことがあるんですね。 |
糸井 | その、メガネに「イケてる」という言葉が くっついているというのが‥‥。 |
藤野 | そう、そこなんです。 そこが、彼らも腑に落ちたところなんだと思いますね。 世界一売るだけではなくて、 「かっこいい」とか「イケてる」というのを、 彼らはずっと考えているんです。 |
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糸井 | その言葉は一銭も生まないんだけれども、 その言葉を中心に集まった人たちが動くと、 無限に価値を生んでいくんですね。 |
藤野 | そうです、そうです。 そして、店頭でいいメガネが見つかったと お客さんによろこんでもらえると、 それがまた彼らの確信になる。 このプラスのスパイラルが、 JINS の躍進を支えたんだと思います。 |
2014-05-21-WED
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20年以上プロの投資家として活躍されてきた 藤野英人さんが、 「お金の本質とはなにか」について考えた結果を 1冊にまとめた本です。 この本を読んだ糸井重里は、 「非常におもしろかったです」と社内にメール。 希望者を募って本を配りました。 糸井重里の 「これは、いい参考書です。」いうつぶやきは、 この本の帯にもなりました。 |
「ほぼ日」の創刊12周年記念の特集で、 |
日本・台湾の実業家、作家の邱永漢さんの |
「もしもしQさんQさんよ」を連載していた |
就職すること、はたらくことについて |