藤野 | さきほどもウェブサイトに顔写真があるかないか、 という話をしましたが、 インターネット社会になって、ぼくは 真面目に生きるしかない時代になったと思っています。 |
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糸井 | まさしく、そうですね。 |
藤野 | ですので、経営者も嘘をつかずに、 真面目にやるしかないんです。 投資という世界においても、 嘘つきが排除されるしくみになってきていて、 すばらしいことだと思っています。 |
糸井 | たしかに。 ただ、ちょっと過剰なまでに、 みんな品行方正になってますよね。 といっている自分がそうなんですけど(笑)。 |
藤野 | そうなんですか?! |
糸井 | はい。 今ちょっと、全体的に過剰だなと思っています。 ふつうの、健康的な人間がもつ「汚れ」みたいなものを どうやって身につけるのか、というところが‥‥。 映画を観るとか、ゲームをするとか、 エンターテインメントと接するという安全圏の中で 「汚れ」を身につけるしかなくなっている気がしますね。 |
藤野 | ああ、わかります。 それでいうと、 ちょうどいいスライドがあったはず‥‥。 あ、あった、これだこれだ。 |
糸井 | 会社と工場? |
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藤野 | そうです。 絵の会社の中には、仕事をがんばっている人もいれば 寝ている人やタバコを吸ってサボっている人もいます。 会社って、汚いところもいっぱいあるんですよね。 |
糸井 | ありますね。 |
藤野 | みなさんも、 外出先から会社に戻るときに気が重くなって、 山手線を何周もしたり、 喫茶店に寄ったりしたこと、ありませんか? それ、ふつうです。 ちっとも異常なんかじゃない。 でも、そういう自分もいるけれど、 死ぬほどがんばって仕事をした自分もいますよね。 みなさんが いいところと悪いところを兼ね備えているように、 ぼくは、会社も両方もっていると思っています。 |
糸井 | なぜなら、人間がそうだから。 |
藤野 | 人間がそうだから。 |
糸井 | いやぁ、おもしろいです。 | 藤野 | すごくいい会社なんだけど、 短期的に言うと、 市場からは評価されていないこともあります。 だからこそ、ぼくらの会社は 成果を出すことができているんですね。 ぜんぶが正しい評価だったら、 どこにも儲ける余地はありません。 評価というのは必ず、ずれていたり、 上がったり下がったりするものですから。 |
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糸井 | その、藤野さんがおもしろいと思って 見ているところを、 多くの人が見ないでくれているおかげで、 飛び抜けていられるんですね。 |
藤野 | そうですね。 ただ、今は評価されていなくても いずれ価値観が顕在化していくことが重要なので、 その見極めがとても大切になります。 今は受け入れられていなくても、 いつかは受け入れられるはずだ、という。 |
糸井 | 今じゃないんだけど、という タイミングの問題はありますよね。 |
藤野 | ありますね。 たとえば、 今はもうメジャーになっている会社ですが、 ドン・キホーテってご存じですか。 |
糸井 | ええ、もちろん。 |
藤野 | ドン・キホーテが株式市場に出てきたときって まだ6店舗くらいしかなくて、 多くのファンドマネージャーやアナリストは 低く評価したんですよ。 バッタもんみたいなモノばかり売っているし、 ごちゃごちゃしていてなんだかよくわからない、と。 |
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糸井 | そうなんですか。 |
藤野 | まず、 日本のファンドマネージャーとかアナリストは、 ほかの国と比べると 同じような出身の人たちばかりなんですね。 一流の中学、高校、大学を卒業した 中流家庭で育った人という。 だから、ドン・キホーテのような店を見ると、 理解できないんですよ。 |
糸井 | 藤野さんはどう思ったんですか? |
藤野 | ぼくは、遊園地の一種だと思いました。 |
糸井 | 「遊園地」。 |
藤野 | 消費の場なんだけど、 同時に時間つぶしの場だと思ったんです。 夜に友達と行って遊んだりする、 わくわくするような場所。 あの店にはユニークなものがたくさんありますから。 ぼくがそのときに見たので言うと、 「等身大の聖徳太子の人形」。 |
一同 | (笑)。 |
糸井 | いらないね(笑)。 |
藤野 | いらないですよね(笑)。 でもね、500円だったんです。 |
糸井 | 500円ですか。 |
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藤野 | 500円なら、買ってもいいかなと思いますよね。 お店を経営している人だったら 一種のつかみとして、 お店の脇に置いておいてもいいわけで。 |
糸井 | 招き猫なら買いますもんね。 |
藤野 | あと、震度5以上で大騒ぎをする「ナマズ君」という 警報機もありました。 |
糸井 | 震度5だったら、みんな起きちゃうよ(笑)。 |
藤野 | でも、それが300円だったら 買っちゃうかもしれない。 |
糸井 | ギャグとしてプレゼントすることもできますね。 |
藤野 | そういう、 消費のエンターテインメントとしての需要があったので、 ぼくらはその価値観でドン・キホーテを 評価し直しました。 当時の株価はとても低かったのですが、 5年後には社会現象になるほど人がたくさん集まって、 売上も利益も伸びて、株価も大きく上昇しました。 |
糸井 | まだ生まれていないけれど、 いずれ生まれるはずの価値を見越して、 投資をしたんですね。 |
藤野 | はい。 これが投資のおもしろいところで、 知的な部分だと思います。 |
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2014-05-22-THU
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20年以上プロの投資家として活躍されてきた 藤野英人さんが、 「お金の本質とはなにか」について考えた結果を 1冊にまとめた本です。 この本を読んだ糸井重里は、 「非常におもしろかったです」と社内にメール。 希望者を募って本を配りました。 糸井重里の 「これは、いい参考書です。」いうつぶやきは、 この本の帯にもなりました。 |
「ほぼ日」の創刊12周年記念の特集で、 |
日本・台湾の実業家、作家の邱永漢さんの |
「もしもしQさんQさんよ」を連載していた |
就職すること、はたらくことについて |