糸井 | 今までお話を聴いてきて思ったのは、 藤野さんが投資をするときに 考えていることって、逆説的ですよね。 つまり、 みんなが「これはこうだ」と思い込んでいることを 藤野さんは「あれ? ほんとかよ?」って疑ってみる。 そしたら違うことが見えてきて、 実態としてほんとうじゃないということが わかってしまう。 |
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藤野 | ああ、そうかもしれません。 |
糸井 | 裸の王様を指摘し続けるこども、のような。 |
藤野 | 王様が裸だとも言いますし、 逆に、ボロボロの服を着ている人に対して この人は王子様だ、とも言いますね。 |
糸井 | ええ、両方ですね。 |
藤野 | まさに、そのギャップこそが重要で、 ぼくの仕事の儲けって、偏見にあるんですよ。 |
糸井 | 人々の偏見に? |
藤野 | はい。 やっぱり、人って偏見に満ちあふれているんですよ。 東大を出ている人は優秀だ、とか、 東京の丸の内にある会社は立派だ、とか。 ほんとうはいい企業のことを悪く思っていたり、 悪い企業のことをいい企業のように思っている。 そのどっちにも、チャンスが出てくるんですよね。 |
糸井 | それは、ぼくの考えとすごく重なりますね。 ぼくも意地悪と言えば意地悪で(笑)。 たとえ常識として通ってることでも おかしいと思ったら、 「それはおかしくないか?」と言います。 |
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藤野 | やっぱり、そこですよね。 |
糸井 | ぼくは今日のために、 |
藤野 | ありがとうございます。 |
糸井 | もうね、最初からつかまれました(笑)。 日本人って、自分たちが思っているようには、 美徳をもっていないんだ、というところから 話がはじまりますよね。 それが、ショックなくらいひどくて。 その中で、 東日本大震災のことに触れていらっしゃいますよね。 |
藤野 | はい。 寄付金について触れました。 |
糸井 | (聴いている「ほぼ日」の乗組員に向かって) あのときは日本中がお金を寄付したと 思うでしょう? |
一同 | (うなずく) |
糸井 | 実は、例年の倍くらいの金額だったんですよね。 |
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藤野 | そうです。 あれほどの震災が起こったのに、 例年の2倍しか寄付しないのが日本人なんです。 しかも、次の年からは例年通りの額に戻りました。 そもそも、日本人は寄付するのも だいたい、ひとりあたり2500円くらいと 少額なんですよ。 |
糸井 | 年間で、ですよね? |
藤野 | 年間です。 もし、個人の金融資産の1%を寄付していたら、 寄付金は14兆円くらいになります。 でも、実際には数千億円に留まりました。 |
糸井 | (聴いている「ほぼ日」の乗組員に向かって) ね、ショックだろう? |
藤野 | もう少し詳しくお話すると、 寄付については、 する人としない人に分けられます。 日本の場合は、3人に1人が寄付をしている。 つまり、 3人に2人は、年間ゼロ円なんですね。 年間の平均が2500円なので、計算上、 3人に1人が7500円の寄付をしていることになります。 ですので、日本人の中には 年間7500円を寄付をしている3人に1人の人間と、 まったく寄付をしない3人に2人の人間がいる、 ということになります。 |
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じゃあ、アメリカはどうかというと、 アメリカ人は金融資本主義者で |
糸井 | 『投資家が「お金」よりも大切にしていること』を 読んでいて、 このつかみで、やっぱりおどろいたんですよ。 震災後に人の心は変わったんじゃないかって思って ぼくらはいろんな活動をしてきました。 そのつもりでいたんですけど、 実はあまり変わっていなかったし、 変わってもすぐ元に戻れるほどの振れ幅しかなかった。 |
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藤野 | そうですね。 |
糸井 | 自分たちが思い込まされている、 あるいは、思い込んでることが、 いかに根拠がないもので 自分の都合のいいように解釈していたか。 たとえば、今の寄付の話でも、 民間が多額の寄付をするから この問題のことを 政府がちゃんとやらなくなっちゃうじゃないか、 という人もいるんですよ。 でも、民間がやれてることだとか、 これからやっていくことの可能性は ものすごく大きいですよね。 |
藤野 | ほんとうに、そう思います。 |
糸井 | 弊社のCFOの篠田からよく聴く話なんですが、 アメリカでいちばん人気の就職先の会社、というか 組織はNPOなんだそうですね。 もうそこで、ぼくらのイメージとは違います。 そういうことが、 この本にはたくさん書かれていました。 もうね、最後のほうの章なんて、 書きながら興奮してたでしょう? |
藤野 | あははは。 興奮、していましたね。 |
糸井 | それがまた、ぼくにはおもしろかったです。 |
2014-05-23-FRI
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20年以上プロの投資家として活躍されてきた 藤野英人さんが、 「お金の本質とはなにか」について考えた結果を 1冊にまとめた本です。 この本を読んだ糸井重里は、 「非常におもしろかったです」と社内にメール。 希望者を募って本を配りました。 糸井重里の 「これは、いい参考書です。」いうつぶやきは、 この本の帯にもなりました。 |
「ほぼ日」の創刊12周年記念の特集で、 |
日本・台湾の実業家、作家の邱永漢さんの |
「もしもしQさんQさんよ」を連載していた |
就職すること、はたらくことについて |