豆苗を切った根元が伸びてきて 指をからめた夜のことなど
帰るねと ドアノブ触れた 君の手を ただ止めたくて 言葉を探す
湿り気を含んだ風に蘇る君の気配を反芻する宵
かんたんに答のわかる世の中で あなたのことだけわからない
指の背で眉のラインを撫でてみる 起きても起きなくてもいい朝
肩ふれる 深夜タクシー 見交わして 優しさ溢れ 沈黙なりけり
声も手も 指も吐息も 薄れゆく ダブルフェイス時計の刻む距離
唇が ほしい、尾も毛も 耳もほしい ほんとは君に 撫でてほしい
春昼に 小言浴びせる この上司(ひと)の 夫が褒めた 肌に手をやる
向日葵の葉のくらやみで手を握り あおぞらゆらり、さらって空に
「いつも想う」形見ひとこと 置くよりも 身かき抱いて 我が首絞めて
告げるべき 心が言葉に ならぬまま 君を初めて 抱きしめた春
明かり消してあなたがすべりこんでくる 手探りで触れるほおの冷たさ
ふうわりとあなたの両のてのひらの 蛍がひとつサイン送りをり
窓の外 いつもの声が響いてる 犬の散歩か今日は私も
眼と眼 合い 響く かみなり 星花火 今 めぐり逢い 虹色の旅
風はらみ新緑の木々さざめきぬ 君に告げたき言の葉のあり
私の手のばせばそこにあなたの手触れてかわそう ときめく心
あのときの後ろ姿を想いつつ 変わってないねと 微笑み返す
逢わなくて幾度の桜か三寒四温 行きつ戻りつ前進みつつ
春の陽に 若葉マークの二人連れ 微笑み添えて 見送る私
雨降りが あんなに嫌いだったのに うれしいこの頃 君を感じて
夏休み 君の夢見た夜の数 5割を超えたら恋だと思う
マニュアルに 無いその笑顔 続けてよ 好きなコーヒー の味など振る
泣きだした私を思わず抱き寄せて優しいあなた途方にくれる
セピアへと うつりにけりな いたづらに 視線はずれた その先の君
もう何年箪笥の中にいるのやら初めて会った日のワンピース
教室の 窓から見える 富士山(ふじやま)は あなたを想い 編むセーターの色
送られてくる「好き」よりもかみしめる 顔見たいだけ、の短い時間
きみどりと風の香りに背を押され 君のラインにメッセージ送る
夜9時半 待つ人のある 交差点 息をはずませ 駆け寄りてゆく
新たな日 胸に抱きて 確かめる ときめく魔法で 君は残るや
もしかして 恋のスイッチ入ったかしら お気に入りの本 貸したくなってる
満月に 浮かれて思わず スキップし 恋は突然 始まるものね
雪の日にそっと触れた指さきを今日はつないで歩く春風
背中越し 見た夢話す 声楽し 消えても上がる とりどり花火
日常が キラキラしたり ざわついたり 心くるくる 忙し恋
遠い日の花火のような恋をして空がほんとに青いと思う日
ひとり旅 満開の桜 花見酒 なのに思うは君との再訪
この想い うたにしたくて できなくて よんでみようか 『サラダ記念日』
いつもより 微笑みながら 紅を引く あなたの笑顔 思い浮かべて
満月に あなたとの恋 祈ってる いつも一緒で ありますように
バスケ部おりそっと黒帯締め投げられ落とされドラえもーん
ジャスミンの 香りが好きと 言う君が 弓張り月に あわく輝く
「暑いねえ」言い合いながら離さない繋ぐ手で知る夏の訪れ
みだれて髪 はらり首筋 雪解けの 汗に近づけ 香る白梅
パクチーの 懐かしきかな 昭和のカレ 誰に語らず 空を見上げる
いづこかに 置き忘れし 恋うこころ 思い出したい ここだ愛しき
運命と 思いし出会い やぶれても 心通いし 思い出残る
土の記憶 炎の中で甦り 走る緋襷 血の色に似て
茉莉花(ジャスミン)の 香り満ちたる風の夜 ふれる手と手に 電気が走る
いつの日か深き音色で奏でたし バッハ・シャコンヌ その一部でも
あの頃を大事にせずにごめん俺 同窓会で酔って告白
花の下 去りにし君の 面影を 心に秘めて 歩む我が道
恋に恋ひ 恋にこがれて 恋さがし 芽生えた恋に 気づかぬままに
初恋を 思い出しつつ 恋の歌 記憶の彼は 横浜流星
くちびるを重ねて囁くアイシテル 嘘じゃないけどホントでもない
亡き父の零戦への恋くだけ消え 栗林中将去りしその年
じゃあまたね いつものように 響けども 君の名のなき 同窓名簿
もういいの どっちでもいいのと すねてみる あなたのこころの 居場所さがして
切なさを 気づかないふり だましても 声聞くだけで 涙あふるる
iPhoneに ありしきみ住む くにのとき つかわぬ日々が つもりつもりて
恋う心 そんな気持ちはどこへやら 逆恨みして隣をにらむ
コンビニで 歌が聞こえて 立ち止まる 失くした恋が 泣き出した夜
「かつて好き」かつてと好きの間には行きつ戻りつ流れた時間
重ぬれば 巧みとなるが 常なるを なぜ苦しみぬ いつの折にも
来年は 三人でみる 桜だね 妻の手を取る 多摩川の土手
週末の朝はパンとコーヒーと君と青空があれば幸せ
幸せは 自分より あなたの皿に取り分ける 最後のエビ
ねこやきゅう ビールとんかつ ぬいぐるみ あなたの好きが 好きになる
こっちかなこっちがいいかな飲み比べ 君の好みの地酒探して
さきに寝たあなたの隣すべりこむ 脚からませ温もり奪う
アイロンのとおったあとの 白いシャツ 二十年たった 今も変わらず
歌を練る吾をからかうその笑みに いらだちつつもかなわないなあ
あなたとの思い出の本開くたび 二人の時間がまた蘇る
大声で がははと笑う きみの声 姿さがして ふりかえるけど
あなたの幸せの一部になりたい 幸せの役に立てませんか
夢の中 手をつないでる かの君は 若い日のまま 黒髪なびく
見ていたい 静かに動く君の肩 同じ空気にいるだけでいい
春めぐり 喪の日に流せしCDの 調べのうちに 君の音を さがす
君逝きてもう生きてなんていけないと思ってたけど今日も笑った