ガンジーさんが来た日。
・・・鼠穴では、テープが回っていた。

第1回 失礼ですが、最初は好奇心からです。


   
ガンジー どうも。
糸井 いやあ・・・思ったよりも
百倍くらいお元気そうで、何よりです。
もう、誰も病気のことは忘れていますから
誰も見なくなるまで、やりましょうね。

顔だとか背格好だとか、
そういうことは何も知らないままに、
お会いすることになりましたけど。
あ、こいつらは、スタッフです。
スタッフ
こんにちは。
ガンジー こんにちは。
スタッフのかたは、お休み、あるんですか?
糸井 むりやりかためて休みを取りますね。
正月休まないでこれから休んだり、
あと、正月も休まなかったと言っても、
ここ(鼠穴)に来ていた人は、
ひとりもいないんですよ。

自宅で更新をしながら、
メールとかで連絡を取りあっていたり。
コンピュータは、そういうことをできますから。
ガンジー なるほど。
糸井 あ、ぼく、いずれ、
老人ばかり集めた会社をやりたいんですよ。
ガンジー そういう居酒屋は、ありますけどね。
糸井 居酒屋で満足できる人は、いいんですけど。

偉い人になったけど、仕事がない人って、
それまでの貯金もあるし、能力もあるのに、
そのままになっていたりしますよね。

それ、どこかで生かす方法ないかなあ、
と、前から、思ってたんです。
60歳で定年になったままで、
もったいないですから。

会社側からすれば、定年を決める体制は
しかたがないとも言えますけど、
ご本人のほうからすれば、働きたい。
だったら、ひとりでやるよりは、
会社にしてしまうといいんじゃないかなあ。
ガンジー でも、同じ年代であつまると、
なんかみんな、難しい顔をしていますね。
「俺は、元・○○なんだ」というような
話ばっかりを、していますから。
糸井 前にぼくのいたマンションの管理人さんが
やっぱり、昔に偉かった人で、
そういう人をわざと雇っていたのですが、
そしたら、昔のコネがきいたりするんですよ。
その役割も、あったりしますね。
ガンジー それは、かたちのかわった「天下り」ですね。
糸井 でも、給料は安いでしょう?
それなのに、偉い人のほうも、
それで何かしたいという気持ちを満たせる。
ガンジー なるほどねえ。
・・・あ、お忙しいと思いますから
さっそく伺いたいことを伺いますが、
糸井さんは、何でまた、わたくしごときに
ものを書かせようと思ったんですか?
糸井 ガンジーさんから来たメールは、
一見、うそのような内容だったけど、
文体からすると、うそじゃないんですよ・・・。

それは何か、わかりました。

だとしたら、うそじゃなくて、
ほんとうの気持ちでこういうメールを書く人は、
どういう人だろう?と、ぼくは最初に思いました。

何だろう? ちょっと、聞いてみようか。
そこだけでも、まずは落ち着こうと思って、
メールで連絡をしたら、ガンジーさんは、
すぐにお医者さんのことを話してくださった。
それは、びっくりしたんですよ、やっぱり。

ぼくの場合、父親が食道ガンで亡くなっていて、
どんどん衰弱して元気がなくなっていくのを
おぼえていましたから、それとの段差がすごくて。
「何か、この人と、やりとりをしてみたいなあ」と。
失礼ですけど、最初は、好奇心からですよね。
ガンジー それは、そうですよ。
糸井 他人のままですから。
ガンジー でも、勘がいいというか。
・・・糸井さん、じゃあ、来るメールを
ぜんぶ読んでいるんですか?
糸井 ぜんぶ読んでいます。
ガンジー ななめに読んだりしないんですか。
糸井 ななめに読ませるようなものはありますけど。
それでも、一所懸命、さいごまで読みます。
ガンジー わたしのメールも、ご自分で読まれたんですか?
糸井 もちろん。それはずっと続けています。
ガンジー へえ・・・。
えらいことです、しんどいでしょう?
糸井 そうですね。
ガンジー 私のところに来る読者からのメールも、
実際、おもしろいことはおもしろいんです。
だけど、おもしろいんですが、
読みおわったあとが、かなり疲れますよね。
糸井 メールを書く側としては、何か思っていて、
何かを考えてくれだとか、こうしてくれだとか、
そういう気持ちが、どこかにあるんですよね。
それを受け取ると、まるで、
約束を勝手にされちゃったけど
自分では果たせない、という事態に、
何だか、似ていますよね。

メールって、やっぱり、大きいですよ。
湯あたりじゃないけど、メールあたりしますから。
ガンジー ああ、そうですか。
糸井 だから本当は、調子のよくない時には、
いっさい、メールを見たくなくなりますけど。
でもそれは、しょうがない。読みます。
ガンジー それで、糸井さんの好奇心で
わたしと糸井さんのつながりができた、
というのは、いいとしても、その後に
「ほぼ日」でページをつくるとしたら、
ひっこみが、つきませんよね?
どうしてまた、はじめようと思われたんですか?
例えばの話、少なくとも、
三ヶ月は続かないと・・・でしょ?
糸井 正直、そのへんは、わからなかったですよ。
先のことを考えられなかった。

そういうところ、ガンジーさんは、
ぼくと性格的に近いかもしれないけど、
どうなるかっていう着地点を考えてやっても、
まずは自分がおもしろくないんですよ。

ガンジーさんの場合は、ご本人も、
もし苦しくて「だめ」ってなったら
ご自分でおっしゃる性格だろうし、
ありがたかったのは、お嬢さんが
あいだに入ってくれていたことです。

ぼくは、ガンジーさんのメールアドレスと
お嬢さんのメールアドレスと、
となりあわせにおいておけますよね。
それなら、もし、側で見ているかたが
「苦しいだろう」とお感じになったら、
いつでも連絡をとれると思っていたので。

でも、その意味では、ご本人がとにかく
文章、どんどんお元気になるから、
大丈夫というか・・・。
ガンジー あの子(娘さん)も、
ケロッととしていますから。
もし、何かあってもそうでしょう。
糸井 娘さんの冷静な姿勢も、いいですよね。

(つづく)

2001-03-12-MON

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