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糸井 |
ジョージさんデザインのほぼ日手帳が
こうして、できあがりました。
まずは、ありがとうございます。 |
勝地 |
こちらこそ、ありがとうございました。 |
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糸井 |
ぼくらは、この手帳の売り上げの一部を、
ジョージさんがずっと応援してきている
「アーク」という動物保護団体に寄付して、
彼らの活動を応援することにしました。
ジョージさんといっしょに
少しずつ積み重ねてきたことが、
ここでスタート地点に立てたかなと思います。 |
勝地 |
アークへの寄付のことも、ありがとうございます。 |
糸井 |
いや、ぼくらもアークを応援することに決めて、
ほんとによかったと思って、
水先案内をしてくれたジョージさんに感謝しているんです。
犬や猫のことについては、
いろんなやり方があるので、
ぼくらもどういう方法がいいのか、
迷ったまま、ずっとやってきたところがあるんです。
今回、ジョージさんといっしょに仕事をするなかで、
いろいろお話をうかがってきて、
これは、迷って足踏みしているよりも、
ジョージさんがされていることの、
流れに乗ろうと決めたんです。
そうしたら、一気にいろんなことが整理されて、
ずいぶんらくになったんですよ。 |
勝地 |
そうですか、それはよかったです。 |
糸井 |
ぼくは、「犬と猫と人間と」という映画を
制作した方々のおかげで、
いろんな人がいろんな活動をしていることを知ったんです。
この一年くらいの間のことですが、
ずっと考えてきていたところで、
ジョージさんが、アークのことを教えてくださって。
ぼくは、アークについて知らなかったことが
いっぱいあったんですが、あらためて見ると、
しっかりした仕事をなさってるのが伝わってきました。 |
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勝地 |
ぼくらも、アークに出会う前は、
やっぱり糸井さんと同じように、
悩んだ時期があるんですよ。 |
糸井 |
あぁ、そうですか。 |
勝地 |
ジョージは、1991年に
サンフランシスコで設立された会社で、
アメリカと日本に拠点をもってやってるんですが、
スタート時からポリシーとしているのが、
「動物を紳士的にあつかえる会社を作ろう」ということ。
そこがジョージの原点なんです。
アメリカでは、まだあまり利益も出ていない頃から、
「PAWS(ポウズ)※」という団体に寄付をして、
ビジネスパートナーのボビー・ワイズが
このPAWSのボードメンバーとして活動するなど、
いろいろやってきているんです。
※PAWS=Pets Are Wonderful Support
HIVやがんなどの病気で亡くなった人々のペットを救う活動を中心に、
犬や猫を販売していたペットショップチェーンに働きかけ、
生体の販売をやめ、ペットショップを里親探しの場に変えるなど、
アメリカの動物と人間の関係に大きな変革をもたらした団体。 |
糸井 |
なるほど。 |
勝地 |
日本でジョージをはじめたとき、
最初の頃におつきあいしたところのなかには、
「団体の職員が出張を兼ねて豪遊していた」と
新聞でたたかれたようなこともあって。
善意の気持ちで協力した先が
そういうことになるとやっぱり耐えがたいので‥‥
いったい日本に真剣に活動しているところはないのか、と
いろいろなところの話を直接聞きに行ったりしまして。 |
糸井 |
なるほど。 |
勝地 |
しばらく試行錯誤していたんですが、
あるとき、たまたまテレビを見ていて、
大阪の能勢にあるアークのシェルターのことを知ったんです。 |
糸井 |
シェルターというのは、
行き場のない動物たちを保護する施設ですね。 |
勝地 |
そうです。
捨てられたり、虐待されたり、
元の飼い主さんがいろんな事情で飼えなくなって
行き場のなくなった動物たちを保護して、
こころとからだの傷を癒して、
新しい家族となる里親を探すというのが、
シェルターの担う役割です。
欧米では一般にも定着しているシステムですが、
当時、日本に動物のシェルターはほとんどなかったんです。
なので、アークのことを知ったときに、
これは、と思って、
ぼくは能勢のシェルターに飛んでいったんですよ。 |
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糸井 |
なるほど、なるほど。 |
勝地 |
能勢って、京都の近くの山の奥なんですが、
行ってみると、手づくりの小屋がたくさん並んでいて、
鳥小屋みたいではあるんですが、
スタッフも手をどろどろにしながらやっていて、
彼らのできる精一杯のことをしているというのが
伝わってくるんですね。
ぼくはあそこを見たときに、
この人たち本気だな、と思ったんです。
代表のエリザベス・オリバーさんとも話をして、
協力するなら、この人たちだ、と。
それで、微力だけど、
協力させてもらえないかということで、
まずは、水飲みのボウルだとか、
必要となるものを寄付させてもらうところから
はじめたんです。 |
糸井 |
なるほど、うかがってみると
やっぱりジョージさんも、
やっているうちに整理されてきたことがあるんですね。 |
勝地 |
そのとおりですね。 |
糸井 |
ぼくは、「犬の飼い主」として、
ジョージさんとおつきあいがはじまって、
要するに最初は「お客さん」として
こちらにうかがうようになったんですが、
ジョージさんのお店は、
すごく居心地がいいんです。 |
勝地 |
ありがとうございます(笑)。 |
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糸井 |
この居心地のよさはなんなんだろうというのが、
ずっと気になっていて。
それがなにかはよくわからないんだけど、
いつか、ジョージさんとなにかをやりたいなぁと
ずっと思ってたんです。
ただ、それはぼく個人の趣味の範疇のことだと思ったので、
去年までは、ちょっと遠慮していたんですね。
でも今年になって、なにかもうちょっと
普遍化した考え方があるなと思いはじめたんですよ。 |
勝地 |
はい。 |
糸井 |
ぼくらは、もともと、
「われわれは、なになにを通して社会に貢献し‥‥」なんて、
スローガンみたいなものは一切ない会社なんです。
でも少なくとも、人をよろこばせるということは
自分たちの仕事だと思っている。
だとしたら、人をよろこばせるという範囲ですること、
自分たちにとってやりがいがあって、
それが人によろこんでもらえることであれば、
十分、自分たちの仕事になるじゃないかと考えたんですね。
そんなふうに、今年になってから、
いろいろ整理できて、動き出すことができたんです。
ぼくらは、ここを出発点として、
ちょっとずつ、無理のないかたちで、
できることをしていきたいと思います。
犬も猫も、やっぱり弱いですから、
弱いものを大事にしていくというのは
社会として大事なことだと思うんです。 |
勝地 |
そうですね。おっしゃる通りです。 |
糸井 |
アークのホームページを読んでいて、
とくに感心したのは、
里子に出すこともむずかしい子たちを
あそこで飼っていて、わたしたちが育てるから
スポンサーとしてそれを応援してくださいとか、
いろんなチャネルを用意してるんですよね。
システムも、おそらく組織としても、
きっとものすごく鍛えられてきてますよね。 |
勝地 |
たしかにそうです。 |
糸井 |
ホームページやパンフレットを見ても、
デザイン含めて、全般的にセンスがいいですしね。
これも大事なことだと思うんです。 |
勝地 |
あ、いや、デザインセンスの部分は、
最初からよかったわけじゃないんですよ。 |
糸井 |
え、そうなんですか? |
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勝地 |
最初はすべて手作りでしたから、
やっぱり泥くさかったんです。
でも、つづけるうちに、
ボランティアで手伝うデザイナーも出てきて。 |
糸井 |
あー‥‥それで人が入って。 |
勝地 |
そうなんです。
それでよくなったんです。
で、そうするとまた、人が人を集めるんです。 |
糸井 |
そうか、また新しい人が来ますね。 |
勝地 |
いまでは協力している人たちの
すごい厚い層ができてます。 |
糸井 |
なるほどなぁ。
ぼくも、このことに関しては、
ひとりの犬の飼い主としてね、
じぶんちの犬をどうするかということを
考えたときと同じように、
ひとりの人間として、自分のできることを
やってみたいと思っていたんです。
つまり、「みんなが知っている誰それ」
みたいなことじゃなくて。 |
勝地 |
わかります。
手帳に付属している冊子の糸井さんの言葉も、
そういうふうに書かれてましたよね。
一個人としてというか。
それがまた、よかったです。 |
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糸井 |
アークのホームページを見ていて、
そうか、こういう人たちがいてくれて、
自分のやりたいことを、
かわりにやってくれているんだ、と思ったんですね。
ひとりではできないけど、自分のやりたいことを
かわりにやってくれている人たちがいて、
だから自分は、またもう一回彼らの後ろに回って、
その手伝いをしたい。
そう、思ったんです。
(つづきます) |