GEORGEの勝地さんと話した 犬と猫と人間のはなし。
「ほぼ日手帳2011」のラインナップに 「犬と猫の助けにも」なるという カバーがあるのをご存じでしょうか。 それは、ペットグッズショップの ジョージさんといっしょに作った 「スティックグッドドッグ」のこと。 その発売を前にしたある日、 ジョージジャパンの代表、勝地栄太さんと 糸井重里が語り合いました。 ジョージさんのこと。 NPO法人「アーク」のこと。 そして、犬と猫と人間のこと。
GEORGEホームページ ARKホームページ スティックグッドドッグ

糸井 ジョージさんデザインのほぼ日手帳が
こうして、できあがりました。
まずは、ありがとうございます。
勝地 こちらこそ、ありがとうございました。
糸井 ぼくらは、この手帳の売り上げの一部を、
ジョージさんがずっと応援してきている
「アーク」という動物保護団体に寄付して、
彼らの活動を応援することにしました。
ジョージさんといっしょに
少しずつ積み重ねてきたことが、
ここでスタート地点に立てたかなと思います。
勝地 アークへの寄付のことも、ありがとうございます。
糸井 いや、ぼくらもアークを応援することに決めて、
ほんとによかったと思って、
水先案内をしてくれたジョージさんに感謝しているんです。
犬や猫のことについては、
いろんなやり方があるので、
ぼくらもどういう方法がいいのか、
迷ったまま、ずっとやってきたところがあるんです。
今回、ジョージさんといっしょに仕事をするなかで、
いろいろお話をうかがってきて、
これは、迷って足踏みしているよりも、
ジョージさんがされていることの、
流れに乗ろうと決めたんです。
そうしたら、一気にいろんなことが整理されて、
ずいぶんらくになったんですよ。
勝地 そうですか、それはよかったです。
糸井 ぼくは、「犬と猫と人間と」という映画を
制作した方々のおかげで、
いろんな人がいろんな活動をしていることを知ったんです。
この一年くらいの間のことですが、
ずっと考えてきていたところで、
ジョージさんが、アークのことを教えてくださって。
ぼくは、アークについて知らなかったことが
いっぱいあったんですが、あらためて見ると、
しっかりした仕事をなさってるのが伝わってきました。
勝地 ぼくらも、アークに出会う前は、
やっぱり糸井さんと同じように、
悩んだ時期があるんですよ。
糸井 あぁ、そうですか。
勝地 ジョージは、1991年に
サンフランシスコで設立された会社で、
アメリカと日本に拠点をもってやってるんですが、
スタート時からポリシーとしているのが、
「動物を紳士的にあつかえる会社を作ろう」ということ。
そこがジョージの原点なんです。
アメリカでは、まだあまり利益も出ていない頃から、
「PAWS(ポウズ)※」という団体に寄付をして、
ビジネスパートナーのボビー・ワイズが
このPAWSのボードメンバーとして活動するなど、
いろいろやってきているんです。

PAWS=Pets Are Wonderful Support
HIVやがんなどの病気で亡くなった人々のペットを救う活動を中心に、
犬や猫を販売していたペットショップチェーンに働きかけ、
生体の販売をやめ、ペットショップを里親探しの場に変えるなど、
アメリカの動物と人間の関係に大きな変革をもたらした団体。

糸井 なるほど。
勝地 日本でジョージをはじめたとき、
最初の頃におつきあいしたところのなかには、
「団体の職員が出張を兼ねて豪遊していた」と
新聞でたたかれたようなこともあって。
善意の気持ちで協力した先が
そういうことになるとやっぱり耐えがたいので‥‥
いったい日本に真剣に活動しているところはないのか、と
いろいろなところの話を直接聞きに行ったりしまして。
糸井 なるほど。
勝地 しばらく試行錯誤していたんですが、
あるとき、たまたまテレビを見ていて、
大阪の能勢にあるアークのシェルターのことを知ったんです。
糸井 シェルターというのは、
行き場のない動物たちを保護する施設ですね。
勝地 そうです。
捨てられたり、虐待されたり、
元の飼い主さんがいろんな事情で飼えなくなって
行き場のなくなった動物たちを保護して、
こころとからだの傷を癒して、
新しい家族となる里親を探すというのが、
シェルターの担う役割です。
欧米では一般にも定着しているシステムですが、
当時、日本に動物のシェルターはほとんどなかったんです。
なので、アークのことを知ったときに、
これは、と思って、
ぼくは能勢のシェルターに飛んでいったんですよ。
糸井 なるほど、なるほど。
勝地 能勢って、京都の近くの山の奥なんですが、
行ってみると、手づくりの小屋がたくさん並んでいて、
鳥小屋みたいではあるんですが、
スタッフも手をどろどろにしながらやっていて、
彼らのできる精一杯のことをしているというのが
伝わってくるんですね。
ぼくはあそこを見たときに、
この人たち本気だな、と思ったんです。
代表のエリザベス・オリバーさんとも話をして、
協力するなら、この人たちだ、と。
それで、微力だけど、
協力させてもらえないかということで、
まずは、水飲みのボウルだとか、
必要となるものを寄付させてもらうところから
はじめたんです。
糸井 なるほど、うかがってみると
やっぱりジョージさんも、
やっているうちに整理されてきたことがあるんですね。
勝地 そのとおりですね。
糸井 ぼくは、「犬の飼い主」として、
ジョージさんとおつきあいがはじまって、
要するに最初は「お客さん」として
こちらにうかがうようになったんですが、
ジョージさんのお店は、
すごく居心地がいいんです。
勝地 ありがとうございます(笑)。
糸井 この居心地のよさはなんなんだろうというのが、
ずっと気になっていて。
それがなにかはよくわからないんだけど、
いつか、ジョージさんとなにかをやりたいなぁと
ずっと思ってたんです。
ただ、それはぼく個人の趣味の範疇のことだと思ったので、
去年までは、ちょっと遠慮していたんですね。
でも今年になって、なにかもうちょっと
普遍化した考え方があるなと思いはじめたんですよ。
勝地 はい。
糸井 ぼくらは、もともと、
「われわれは、なになにを通して社会に貢献し‥‥」なんて、
スローガンみたいなものは一切ない会社なんです。
でも少なくとも、人をよろこばせるということは
自分たちの仕事だと思っている。
だとしたら、人をよろこばせるという範囲ですること、
自分たちにとってやりがいがあって、
それが人によろこんでもらえることであれば、
十分、自分たちの仕事になるじゃないかと考えたんですね。
そんなふうに、今年になってから、
いろいろ整理できて、動き出すことができたんです。

ぼくらは、ここを出発点として、
ちょっとずつ、無理のないかたちで、
できることをしていきたいと思います。
犬も猫も、やっぱり弱いですから、
弱いものを大事にしていくというのは
社会として大事なことだと思うんです。
勝地 そうですね。おっしゃる通りです。
糸井 アークのホームページを読んでいて、
とくに感心したのは、
里子に出すこともむずかしい子たちを
あそこで飼っていて、わたしたちが育てるから
スポンサーとしてそれを応援してくださいとか、
いろんなチャネルを用意してるんですよね。
システムも、おそらく組織としても、
きっとものすごく鍛えられてきてますよね。
勝地 たしかにそうです。
糸井 ホームページやパンフレットを見ても、
デザイン含めて、全般的にセンスがいいですしね。
これも大事なことだと思うんです。
勝地 あ、いや、デザインセンスの部分は、
最初からよかったわけじゃないんですよ。
糸井 え、そうなんですか?
勝地 最初はすべて手作りでしたから、
やっぱり泥くさかったんです。
でも、つづけるうちに、
ボランティアで手伝うデザイナーも出てきて。
糸井 あー‥‥それで人が入って。
勝地 そうなんです。
それでよくなったんです。
で、そうするとまた、人が人を集めるんです。
糸井 そうか、また新しい人が来ますね。
勝地 いまでは協力している人たちの
すごい厚い層ができてます。
糸井 なるほどなぁ。
ぼくも、このことに関しては、
ひとりの犬の飼い主としてね、
じぶんちの犬をどうするかということを
考えたときと同じように、
ひとりの人間として、自分のできることを
やってみたいと思っていたんです。
つまり、「みんなが知っている誰それ」
みたいなことじゃなくて。
勝地 わかります。
手帳に付属している冊子の糸井さんの言葉も、
そういうふうに書かれてましたよね。
一個人としてというか。
それがまた、よかったです。
糸井 アークのホームページを見ていて、
そうか、こういう人たちがいてくれて、
自分のやりたいことを、
かわりにやってくれているんだ、と思ったんですね。
ひとりではできないけど、自分のやりたいことを
かわりにやってくれている人たちがいて、
だから自分は、またもう一回彼らの後ろに回って、
その手伝いをしたい。
そう、思ったんです。

(つづきます)
冊子に寄せた糸井重里のメッセージはこちら
前編をよむ
2010-11-15-MON
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN