はげはげ日記の  正造さん(94)。  57年つづく、まんが絵日記の物語 なんともステキな本に出合いました。
『はげまして はげまされて』。
90歳を越えるおじいさんが50年以上にわたって
描きつづけてきた絵日記を紹介する一冊です。
ページを開いてみたら‥‥。
日々のエピソードが、ていねいに、あたたかく、
ユーモアといっしょに積み重ねられていました。

わたしたち「ほぼ日」は、
1日1ページの手帳をつくっています。
それは絵日記と同じ、毎日を重ねていくもの。
たのしくつづけるコツがあれば知りたくて‥‥
著者の竹浪正造さん(94)に、お会いしてきました!
 
その2 なんでもないから、描ける。
ほぼ日 57年間で、2300冊を越えるノートに。
正造さん そうですねぇ、まぁ、描いてきました。

ほぼ日 もともと、絵はお好きで。
正造さん 好きでした。
だから、たとえばこんな‥‥。
昭和48年にわたしが
東北電力を卒業する記念に、自費出版をした本です。

ほぼ日 へえー、拝見します。
‥‥ああー、いいですねぇ。

正造さん 1320冊つくったのに、
予約だけで900冊なくなって、そのあとも売れて、
いまはこれ1冊しかなくなりました。
ほぼ日 自費出版でそんなに‥‥。
ああ、いいなぁ(笑)。

正造さん あとは、こういうものとか‥‥。

ほぼ日 作品集。
おお、これは漫画というよりイラスト的な。

正造さん そうですね、それはイラストです。
まぁ、そういうようなことを、
いろんなところで描かせてもらってますよ。

ほぼ日 へえー。
正造さん これは、鶴田町の広報誌でやってた、
「むかしのあそび」の連載です。

ほぼ日 「文と絵 竹浪正造」となってます。
エッセイも書かれてたんですね。
正造さん こんなのもあります。
これ、ほら、いいとこありますよぉ(笑)。

ほぼ日 わぁー(笑)。
正造さん 色気があるでしょう。
ほぼ日 「ゴクリ」というのが(笑)。
正造さん 混浴だったの。
ほぼ日 (笑)
正造さん と、まぁ、そういうようなことで、
いろいろ描きましたよぉ。
勤め先の社内報にも描いてました。
東北電力では当時、
「マンガの大将」って呼ばれて、すこし有名だった。

ほぼ日 ちっちゃいころから、絵は描いてたんですか?
正造さん ああ、中学校時代から描いてたなぁ。
漫画が好きで。
ほぼ日 漫画家になりたかった。
正造さん うん、なりたかった。
ほぼ日 その道に進もうとは思わなかったんですか。
正造さん 進もうと思ったけど、
とてもできるもんじゃないって諦めた。
漫画を職業にするっていうのは、
たいへんなもんです。
高い高い、想像力、勢力、
そういうものがなければならない。

ほぼ日 はい。
正造さん ところが、日記っていうものは、
その日にあったことを描くだけだから、
やさしいわけ。
ほぼ日 ああー。
正造さん でも昔、
漫画の賞をもらったことがあるんですよ。
ほぼ日 すごい! それはどんな賞だったんですか?
正造さん あれは第二次世界大戦中、
満州鉄道の社員だったころに、
「満州日々新聞社」のマンガ展に応募したんです。
そしたら、入選した。
ほぼ日 おおー。
正造さん で、記念の盾がおくられてきたんだけど、
その名前が、竹浪「正造」ではなく、
竹浪「正浩」ってなってた。
ほぼ日 あ、名前がまちがってた。
正造さん 「正浩」っ!
これはいい名前だ! と思った。

ほぼ日 はははははは。
正造さん いつか嫁をもらって男の子がうまれれば、
「正浩」と名付けよう。
賞をもらったのは26歳だったかな。
そのときから決めてました。
ほぼ日 自分に子どもができたら、
まちがえられた名前をつけよう、と(笑)。
正造さん そうそう(笑)。
それで、結婚して、
まず、おなごがうまれた。
つぎ。
これがまたおなご。
で、ようやく長男がうまれた。
ほぼ日 なるほどー、それが正浩さん。
絵日記をつけはじめるきっかけになった、
ワンパクな男の子なわけですね。
正造さん そういうことです。

ほぼ日 最近は、どんな日記を描いているんですか?
正造さん 最近は、そうですねぇ‥‥。
たとえば、こういうのとか。

ほぼ日 これは‥‥?
正造さん テレビをみたり、本を読んだ人が、
日本中から手紙をくれるんです。
それをノートに貼りつけて、
「こういう手紙をもらったので、
 こういう返事を書いた」
っていうのを日記に書く。
ほぼ日 はあーーー。
それはつまり、ファンレターですね!?
正造さん ファンレター。
あのね、わたしのところに来るファンレターは。
ほぼ日 はい。
正造さん みんな女。

ほぼ日 (笑)すばらしい!
正造さん 女性からの手紙がほとんどです。
ほぼ日 モテモテですねぇ‥‥。
(ノートを見つつ)これも最近の日記ですか?
正造さん うん、最近のです。

ほぼ日 テーブルを作っている?
正造さん それは、正顕さんが組み立ててくれてるのを描いた。
ねえ、正顕さん。
正顕さん いや、いままでね、テーブが低かったんです。
だから「ニトリ」で買ってきて、
わたしが組み立てました。

正造さん 新品で、腰かけも合わせて8980円。
思ったより安かったな。
正顕さん これ、このテーブルですよ。

ほぼ日 あーー! ほんとだ(笑)。
おもしろいですねぇ。
こういう日常が、ひとつひとつ‥‥。
正造さん 日常だから、むずかしくない。
その日にあったこと描くだけだから。

ほぼ日 なるほどぉ‥‥。
正造さん これは、テーブルが新しくなって
はじめてお客さんが来たときの日記。

ほぼ日 あ、これおもしろい、ケーキづくり。

正造さん これで1ページになるからね。
ほぼ日 レシピですね。
正造さん レシピ。
こういうものを、食べたとかね。

ほぼ日 ああー。
正造さん もう、ほんとうに、
なんでもないことばっかりですよ。

正造さん なんでもないから描けるんです。
(つづきます!)
2012-09-27-THU
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