はげはげ日記の  正造さん(94)。  57年つづく、まんが絵日記の物語 なんともステキな本に出合いました。
『はげまして はげまされて』。
90歳を越えるおじいさんが50年以上にわたって
描きつづけてきた絵日記を紹介する一冊です。
ページを開いてみたら‥‥。
日々のエピソードが、ていねいに、あたたかく、
ユーモアといっしょに積み重ねられていました。

わたしたち「ほぼ日」は、
1日1ページの手帳をつくっています。
それは絵日記と同じ、毎日を重ねていくもの。
たのしくつづけるコツがあれば知りたくて‥‥
著者の竹浪正造さん(94)に、お会いしてきました!
 
その3 人に見せるもんではねぇんですよ。
正造さん まぁ、こういう、なんでもないことだけども、
ずっとつづけないと‥‥。
ほぼ日 すばらしいことだと思います。
正造さん こういう日もありますよ。
ほぼ日 病院で、治療を?
正造さん 膝を悪くしてるもんだから。
‥‥こういうのも、日記に書いてる。
ほぼ日 これは?
正造さん となりの家の人なんだけど、
この人がいつも雪かきしてくれたり、
お風呂に連れて行ってくれたりとか、
いろいろめんどう見てくれてるんです。
ほぼ日 はい。
正造さん 車の中でわたしが、
「日記を書くのが大儀だ」と愚痴ったんです。
そしたらその人が、
「もうやめて楽したほうがいいよ」
って心配してくれてるんです。
そのことを日記に書いてる。

ほぼ日 ‥‥(しばし日記を読む)。
このページの下に書いてある言葉を、
読ませていただきますね。

「やめたらと言うてくれたが、
 それではただの老人になることだ。
 日記をつけることは、
 誰でもやってないことの実行である。
 わたしは万難を排してでも、
 描けるまで続けていくつもりだと、自覚した」
正造さん まぁ、どうなるかはわからないけれど、
わたしはそのつもりですわ。
ほぼ日 すばらしいです。

ほぼ日 なぜそんなに、
強い思いでつづけられるんでしょう?
正造さん ‥‥意地っぱりだからかもしれない。

意地です。
意地で、これを描いてる。
描かないと、
俺はもう、ふつうの老人になってしまう。
ふつうの老人は
ただテレビを見ていたりだったりするだけで。
家族や仲間がいっしょならいいけど、
俺はひとり暮らしで‥‥
ひとり暮らしで‥‥。
だから、これをつづけないと、
ふつうの老人になってしまう。

ほぼ日 そうですか。

‥‥正造さんは、
どういう日記を描いているときが
いちばんたのしいですか?
正造さん たのしいのは‥‥
政治漫画を描くようになると、たのしいな。
ほぼ日 政治漫画。
正造さん 政治を風刺する、社会風刺っていうか。
それはいちばん自分の好みにあってると。
ほぼ日 これなんか、そうですかね(笑)。
麻生太郎さんの似顔絵が。

正造さん まぁ、そういう(笑)。
それはべつに麻生太郎さんを風刺してないけど。
やはり、そういうのは、
描いてておもしろいなぁ。
ほぼ日 ご長男の正浩さんのことで描きはじめたころには、
まさかこんなふうになるとは
考えていませんでしたよね。
正造さん 考えてません。
こんなにつづけるとも思ってなかった。
将来、正浩が見たときに、
親に苦労かけたっていうことを
反省するんじゃねえかと思って。
それだけだったから。

ほぼ日 反省しない正浩さん(笑)、
日記を読んではいるんですよね?
正造さん 読まない。
ほぼ日 あ、そうなんですか。
正造さん わたしも読まない。
ほぼ日 え‥‥そういうものなんですか。
誰も読まない。
正造さん 誰も読まない。
わたし自身も読まない。
ほぼ日 はあーー。
正造さん 描くたのしみ。
人に見せるもんではねぇんですよ。

ほぼ日 見せようと思って描かれたことは、
一度もないんですか。
正造さん ないない、ないないない。
だから、文法がまちがったり
字がまちがったり、
そういうのがなんぼもある。
ほぼ日 ああー。
正造さん 見せるつもりはないから、
これを本にしようって言われたときには、
うーん、びっくりしたなあー。
なんでもない、ただの日記だから。
2300冊の中から拾ってさ、
本にするっていえばたいへんなもんだし。
ほぼ日 でも、家庭のお話を中心に
とてもていねいに編集されていて、
すごくたのしく読めました。
とくに、最愛の奥様とのお別れとか‥‥。
正造さん ああ‥‥。
ほぼ日 奥様は、どんなかたでした?
正造さん どんなかたって、いいかただべな。
一同 (笑)
ほぼ日 なれそめを、うかがってもいいでしょうか?
正造さん なれそめったって(笑)。
ちょっと待っててください‥‥
(隣の部屋に行き冊子を持ってくる)
‥‥こういうものがあります。

ほぼ日 ‥‥それは?
正造さん まあ、こういうものです。

ほぼ日 ‥‥亡き妻の記録。
奥様の思い出は、また別にまとめたものが。
正造さん ほら。
こんな人でしたよぉ。

ほぼ日 ‥‥すてきですねえ。
正造さん 向こうは地主の娘で、
わたしとは身分がずいぶん違ったんです。
ほぼ日 へえーー。
正造さん 及ばぬ恋の間柄でした。
ほぼ日 でも、結ばれたんですよね。
正造さん そうだね、そこはまあ、いろいろあった(笑)。
ほぼ日 がんばった(笑)。
正造さん うん。
ほぼ日 そうですか‥‥。
正造さん うん‥‥。
ほぼ日 ‥‥‥‥。
正造さん ‥‥津軽美人でさ。
(つづきます!)
2012-09-28-FRI
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