そろそろ、われわれは、
おいとをましなければなりません。
もっとお話を聞きたかったのですが、行かなくては‥‥。
電車の時間がせまっています。
「ぼちぼち失礼します」というわたしたちを、
正造さんは、「せっかくだから見ていって」と、
雪の中、庭の倉庫に案内してくださいました。

そこにあったのは‥‥
57年間にわたって描きつづけられたノートたちでした。

こういうノートに、2300冊以上。
誰かが読むことを考えずに、ひたすら‥‥。
最も古い時代のノートが入っている
ケースを見つけました。

ノートの表紙には、
ひっそりと、でも誇らしげに「1」の数字が。

慎重に手にとり、はらりと開いてみたら‥‥。

ああ、見たことのある絵です。

『はげましてはげまされて』で目にした絵の、
原画がそこにありました。

すばらしい‥‥。

「記憶よりも記録」。
そうおっしゃる正造さんですが、
記録を見ながら思い出を話してくださるとき‥‥
その笑顔はとびきりだと思いました。

正造さん、そして甥っ子の正顕さん、
今回はほんとうに、ありがとうございました。

(おわります) |