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原 |
まぁ、いつも元気な人って、たしかにいますよ。 |
糸井 |
それが、アメリカのエリートの姿だと
描かれるじゃないですか、典型的に。 |
原 |
なにせ、アメリカって国は
俳優を大統領に選ぶところですから。 |
糸井 |
ああ、そうですね。 |
原 |
優秀な学生は、ハーバードだ、
スタンフォードだのの
「ビジネススクール」なんかに通いますけど、
あれって結局、「しゃべり方教室」なわけですよ。 |
糸井 |
演説の練習をしているんだ。 |
原 |
そう、そう。
「1のことを、まるで10のように」。
そういう表現技術を学ぶところです。
いかにも自信満々に、ニコニコとね。
それが、ハーバードのビジネススクール。
みんながみんな、本当に優秀かどうかというと‥‥
まぁ、どうかなと。
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糸井 |
そうなんですか(笑)。
ちょっと安心しちゃいますね。 |
原 |
スタンフォードのビジネススクールのほうは
「ソロバン教室」ですね。
株価をいかに高くするか。
言ってみれば、まぁ、それだけです。 |
糸井 |
ええと‥‥はい(笑)。 |
原 |
つまり、なにが言いたいかというと、
どうやったら社会をよくできるかなんて、
教えてないんですよ、どこも。 |
糸井 |
なるほどなるほど‥‥そうですか。 |
原 |
自分を「魅せる術」については、
ものすごくトレーニングを受けています。
あれだけ、人種・宗教・言語・国籍が
多様な社会にもかかわらず、
「お金持ちになれば幸せになれる」と
画一的に信じ込まされてしまうんですよね。 |
糸井 |
それが、アメリカンドリームの正体だと。 |
原 |
アメリカの病といっても、いいかもしれない。 |
糸井 |
だから、実際にお金持ちになったときに
本当に幸せかどうかって、また別の話なんですよね。 |
原 |
ええ、ベンチャーキャピタルという仕事柄、
いくつものベンチャー企業が、
大会社になっていくのを、見てきました。
昨日まで、それこそ
「脂っこいファーストフード」ばっかり
食べていたような若者が、
とつぜん、何百億円という資産を持つ身に
なってしまうわけです。 |
糸井 |
それって‥‥どういう気分になるんだろう?
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原 |
やっぱり、みんな
「お金を使えば幸せになれる」と信じてますから、
いろんなモノを買うんですね、まずは。
で、買っても、買っても、買っても‥‥
なんだか、とくに幸せになった感じもしない。
そこで、どうしたらいいのか
わかんなくなってしまう人って、けっこういますね。 |
糸井 |
ははぁ、なるほど。 |
原 |
で、麻薬に手を出してしまったりとか。 |
糸井 |
それはもう、社会的な問題ですよね。 |
原 |
実際に知っている例でいいますと、
若いころから
大きな家がほしいと思っていた人が成功して、
本当に、大きな家を買えるようになった。
で、買っちゃったんですよ、スイスに。
‥‥お城を。 |
糸井 |
わかりやすいですねぇ(笑)。 |
原 |
でも、家というのは、
ある一定の大きさ以上になると‥‥住みにくい。 |
糸井 |
あはははは(笑)。
たしかに、そうでしょう。 |
原 |
家が大きくなったら、奥さんと子ども以外にも
掃除する人だ、庭の手入れする人だ、
料理人だ‥‥ってたくさんの人が要るじゃないですか。
自分の家なのに、落ち着かないし、
ヘンに気を使っちゃったりとかしてね。 |
糸井 |
どこに住んでるかわかりませんね、それじゃあ。 |
原 |
だから、本当の幸せってのはね、
お金のある、なしに関係ないんでしょうね。
使い古された言いかたかもしれないけど。 |
糸井 |
でも、原さんは実際の例を「見てる」から
それが、実感として、わかるんでしょうね。 |
原 |
わたしも、大学を出て考古学をやっていたときなんて、
年収にしたら、60万円ぐらいしかなかった。
でも、生活態度としては、
いまと、ほとんどいっしょでしたよ。 |
糸井 |
ぜんぜん、変わらない? |
原 |
ええ、変わりませんね。 |
糸井 |
その、若いときの考古学って、
いまのお仕事に活かされていると思いますか? |
原 |
日本とは別の価値観があるんだってことを
若いときに
肌身で感じられたことが、いちばんの収穫ですね。 |
糸井 |
なるほど、原さんという人のルーツって、
そのあたりにありそうだなぁ‥‥考古学。 |