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原 |
いま、積極的にやろうと思ってるのは、
日本のお医者さんのプロジェクトなんです。 |
糸井 |
はぁ、お医者さんですか。 |
原 |
この平和な日本という国で
6年間、医学部に通ったら医者になれてしまう。
将来の食いっぱぐれもなさそうだし、
女の子にだって、もてるだろうし。 |
糸井 |
だから、医学部に入りさえすれば‥‥って。 |
原 |
でも、その結果ですね、
なんのために医療に携わっているのかという
自覚のないまま、
医者になってしまう人が多いじゃないですか。
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糸井 |
医者としての理念を持ってない‥‥。 |
原 |
そこで、アジアのなかでもいちばん貧しい
バングラデシュという国で、
医療と教育を改善するための事業をはじめたんです。
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糸井 |
バングラデシュ、ですか。 |
原 |
ええ、バングラデシュという国は
幼児死亡率が非常に高いんです。
6人に1人の子どもが
3歳までには、死んでしまう。
そんな国に、たとえば
日本の若い医学部生に行ってもらうと。 |
糸井 |
うん、うん。 |
原 |
かたわらで子どもたちが、バタバタ死ぬんですよ。
放っておいたら。
つまり、自分の手で子どもが死ぬのを
助けられるんです‥‥というか、助けざるを得ない。 |
糸井 |
そういう経験をしていたら、
きっと、いいお医者さんになるでしょうね。 |
原 |
ええ。それと、もうひとつ。
バングラデシュという国は
平均年収が100ドル、
日本円に直すと12,000円ぐらい。
GDPにすると、だいたい1人1日、1ドル強。
年でいうと400ドル前後で
ほんとうに貧しい国なんです。
人口は約1億4,000万人で、日本より多く、
面積は北海道の約1.7倍という小さな国。 |
糸井 |
最近、ニュースでもやってましたけど、
洪水で水に浸かってたりしてましたね。 |
原 |
で、なんで貧しいかっていうと、
ひとつ、「教育」の問題が大きいんです。 |
糸井 |
つまり、遅れている? |
原 |
はい。たとえば、
大人の2人に1人以上、字が読めないんです。 |
糸井 |
識字率が、5割以下。 |
原 |
で、どういうところから
教育を改善しなければならないかというと‥‥
まずね、「教師」がいないんです。
学校だけなら
35,000校くらいあるんですけれど。 |
糸井 |
教える人がいないんですね。 |
原 |
だから、それらの学校どうしを
ワイヤレスの
ブロードバンドの先端技術でつないで‥‥。 |
糸井 |
ああ、放送大学だ。 |
原 |
しかも、大画面のハイビジョンでね。
日本にもまだないような技術です、これは。 |
糸井 |
すごいな‥‥それは。 |
原 |
で、この改善事業、「慈善事業」では、やらない。 |
糸井 |
つまり、その事業を通じて利益も上げようと、
そういうことですか。 |
原 |
そういうことです。 |
糸井 |
でもそれ、儲けようって動機というよりも‥‥。 |
原 |
非営利団体がやるような事業を
営利の組織でやることによって、
税引前利益の40%を、投下できるんです。 |
糸井 |
ようするに、非営利でやるよりも
使える金額が大きいということですね? |
原 |
そのとおりです。
しかし、話だけでは信用されないので、
まずは成功例を作って、そのうえで、
そうした仕組みを
作りやすくするための法律を提言する。
ですから、そのために、
日本政府の委員会にも入ったりもしてるんですよ。 |
糸井 |
そうやって政府の側にいるのって、
やはり、そっちのほうが合理的だからですか? |
原 |
たとえば、民間の経済団体の会長なんかが
首相や所管大臣に報告書を提出するとしますよね。
民間ができることは、そこで終わり。
で、その報告書どうなってます、いつも? |
糸井 |
握りつぶされる‥‥ことが多い。 |
原 |
そう。テレビや新聞のうえでは、
報告書を渡してる場面なんが報道されるかもしれない。
でも、大部分、そこで「終わり」なんです。 |
糸井 |
だから、報告書を「もらう側」にいるんだ。 |
原 |
ええ、報告書をもらって、党で議論をしたり、
政府の委員会で政策を決定していく。
つまり、法案をつくるところにいたほうが
ぜんぜん、効率がいいんですよ。
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糸井 |
徹底的に、合理的なんですね。 |
原 |
ええ、時間がないんで、わたしには。 |