糸井 |
このあいだ、お会いしたときに聞いた
バングラデシュでの遠隔医療・遠隔教育に、
この「XVD」を? ‥‥すごい。 |
原 |
カメラの前に医者を座らせた、遠隔医療。
カメラの前に先生を座らせた、遠隔教育。
わたしはそれを、バングラデシュでやりたい。 |
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糸井 |
ほんとに、すばらしいことだと思います。
しかも、より多くの資金を投下できるように、
慈善事業でやらず、
きちんと利益を出す仕組みでやるんですよね。 |
原 |
いいでしょう? |
糸井 |
病人が、苦労して医者のもとまで移動しなくていい。
ベッドから動かなくたって、いいわけですね。 |
原 |
ええ、そういうことです。 |
糸井 |
バングラデシュのような発展途上の地域でも
問題なく、実現可能なんですよね。 |
原 |
ええ。 |
糸井 |
‥‥というか、バングラデシュのような
途上国の通信インフラでも対応できるんだったら、
他のどの国でも実現できるってことですね。 |
原 |
そう、まさに、そのとおり。
なかでもハードルの高い国でできるなら、
アメリカやヨーロッパ、
日本でやるなんて、簡単なことですから。 |
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糸井 |
なるほど‥‥うん。 |
原 |
それ以外にもね、
いろいろ「XVD」には、いいところがあって。 |
糸井 |
なんですか? |
原 |
本来、ハイビジョンというのは
データ容量が、すごく大きいじゃないですか。
だからね、この、わたしのパソコンみたいに
安もののモデルだと
ダウンロードできないんです、ふつうは。 |
糸井 |
ハイエンドなパソコンじゃないとダメ。 |
原 |
ところが、この「XVD」を使った場合には、
映像を見る側は、
安物のパソコンであろうが何だろうが‥‥
極端にいえば「携帯電話」だって大丈夫。 |
糸井 |
えっと、「800K」で見られるわけですもんね。 |
原 |
厳密に言うと、相手が携帯電話であろうが、
PDAであろうが、安もののパソコンであろうが、
あるいは逆に、
高精細なハイビジョン画面であろうが、
ひとつのコンテンツを
あらゆるスペックの機器に送ることができる。 |
糸井 |
つまり‥‥受ける側に合わせてる? |
原 |
そう、相手の許容容量に合わせて
自動的にデータを調整・圧縮してくれる。
技術的にそんなことが可能なのは
いまのところ、この「XVD」だけなんです。 |
糸井 |
いや‥‥それは、すごい。 |
原 |
そういえば‥‥思えばこれも、
もともとは「考古学」だったんですよ。 |
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糸井 |
というと? |
原 |
ほら、たとえば遺跡から発掘したものを
電話かなんかで
「高さ何センチ、直径何センチ、
こういうような文様が描いてあって‥‥」と
いちいち説明するより、
ハイビジョン映像でパッと見せちゃったほうが、
何かと話が早いでしょう。 |
糸井 |
発想が、徹底的にご自分の身体感覚ですよね。 |
原 |
そうそう、「自分用」というか、
さっきの話でいえば、わたしのやりたいこと。 |
糸井 |
原さんご自身の「欲求」ですね。 |
原 |
そう、なるべく安いほうがいいと思ったのも、
自宅で、自分が使いたいからだし。 |
糸井 |
なるほど。 |
原 |
さらにこれ、撮るほうもコンパクトなんですよ。
ほら、これだけの装備でOKなんです。 |
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糸井 |
リュックサックをしょってます。 |
原 |
ハイビジョンというのは、データ容量が多いから
ふつうは中継車が要るんですけど‥‥
われわれの「XVD」は
ぜんぶ、このバックパックに入っちゃうんですよ。 |
糸井 |
えっと、機材が? このなかに? |
原 |
そう、これだけ。 |
糸井 |
だったら、エベレストのてっぺんから
たったひとりでハイビジョン中継できますね。 |
原 |
ええ、やろうと思えば(笑)。 |
糸井 |
へぇー‥‥。 |
原 |
たとえば、地震なんかが起きたとき。
これまでは、中継車が入っていけないとなると、
撮影できる場所で撮った「同じ映像」ばかり、
くりかえし、流すしかなかったじゃないですか。
でも、この装備なら、どこへでも入っていける。 |
糸井 |
しかも、リアルタイムで生放送できる、と。 |
原 |
さらにね、これ、本当に軽いんです。
中継車一台の機能が、
たったの「5キロ」で済んじゃう。 |
糸井 |
女性カメラマンでも、背負えちゃいますね。 |
原 |
ちなみに、このバックパックは
わたしがスポーツ用品店で買ってきた
既製品なんですよ。
そのなかに、ポンッといれただけ(笑)。 |
糸井 |
街でふつうに売ってるリュックサックのなかに、
最新鋭のテクノロジーが(笑)。
その「こだわりのなさ」も、原さんらしい。 |
原 |
だってね、オリジナルを作ったりしたら、
それだけ高くなるでしょう。無意味に。 |
糸井 |
ええ、ええ、そういうことですよね。 |
原 |
安く手に入るものがあるなら、
わざわざ作ることはないんですよ。 |
糸井 |
草野球チームのユニフォームといっしょで、
自分たちのオリジナルって、
つい、ウットリしちゃうんですけどね(笑)。 |
原 |
でも、その「ウットリ」よりも
このテクノロジーを普及させるためには、
少しでも、安くしたほうがいい。 |
糸井 |
なんて言うんだろう、
そういう、まわりのみんなの身の丈と合った
原さんの金銭感覚って、
今まで、ブレたことはないんですか? |
原 |
ないと思います。 |
糸井 |
たぶん、そのあたりも、
今の、原さんという人をつくりあげている
重要な要素なんでしょうね。 |
原 |
そうでしょうかね(笑)。 |
糸井 |
でも、この「XVD」って
放送業界のいろんな常識を変えますよね。 |
原 |
ええ、変えてくれるでしょう。 |
糸井 |
原さんのことばを借りて言うなら、
まさに「技術を使って世界を変える」ですね。 |
原 |
やはり、これからの新しい時代に必要なのは、
「新しいテクノロジー」なんです。 |
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<続きます!>
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