糸井 |
これまでのお話を聞いていて、
もうひとつ思ったのは、お父さんの「鉄道模型」が
最たるものだと思うんですけれど‥‥
趣味っていうのは、「消費」のかたちをとった
「生産」だと思うんですよ。 |
原 |
ああ、なるほど。
それは、実感的にわかります。 |
糸井 |
これからの時代は、
そんな「消費」に裏付けられた「生産」が
大切になってくるだろうって
ぼくは今、ことあるごとに言ってるんです。 |
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原 |
うん、うん。 |
糸井 |
つまり、お金を儲けた行き着く先は
会社の「売却」やら「吸収」やら「合併」‥‥。
そんなニュースが、現代を象徴しますよね。
でも、これからの時代のビジネスには
「消費のクリエイティブ」が
どんどん必要になってくると思うんです。 |
原 |
消費のクリエイティブ。 |
糸井 |
ええ、ぼくが、以前からよく使っていた
ことばなんですけど‥‥。
つまり、「よい商品」を生産するには
つくり手の側が「消費のプロ」にならないと
ダメなんじゃないか、ということ。 |
原 |
うん、なるほど。 |
糸井 |
日本で今、そのことを自然にやれているのは、
おもに女性だと思うんです。
たとえば、同僚や友人と集まって、
おいしいレストランでランチを食べる。
会社にこもってる男たちからしたら、
「仕事もしないで!」って言うかもしれないけれど、
「よい消費」の経験がなかったら、
「よい商品」は「生産」できないはずなんです。 |
原 |
どこのランチがおいしいか、
いま、なにがおもしろいかってことを
知っていなければ、ね。 |
糸井 |
そのあたりのことをわかっていない人が
商品をつくっても、
たんに、ヘタな鉄砲を数撃ってるだけで。 |
原 |
当たりゃしない、と。 |
糸井 |
で、今日、あらためて原さんとお会いしたら、
「鉄道模型」という
とんでもない「消費の実体」を見た(笑)。
きっと、ここからまた生まれるものがあって、
それが、原さんのお仕事、
つまり「生産」に結びついていくんでしょうね。 |
原 |
それは大いにありますね。 |
糸井 |
今の原さんの興味は、どのあたりにあるんですか? |
原 |
いろいろとあるんですけれど‥‥。 |
糸井 |
ええ、知ってます(笑)。 |
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原 |
ここ最近、ずっとこだわっているのは
「コンピュータ以後のテクノロジー」。
コンピュータを使うのが、イヤなんですよ。 |
糸井 |
以前も、おっしゃってましたよね。
「計算機のなれの果て」なんか要らないと(笑)。 |
原 |
ええ。 |
糸井 |
たしかに、コンピュータのことを
「計算機の究極の進化形」で、
それ以上でもそれ以下でもないと思ったとたん、
自分を含めたみんなが、
その「なれの果て」に追い詰められてる姿に、
哀しくなっちゃいますよね。 |
原 |
そうでしょう? ‥‥あ、そうだ!
ついこのあいだ、
できあがったばかりのあれ、見てもらおう。
これね、わたしのつくった会社で
開発したんですけど、
「XVD」というテクノロジーなんです。
名前くらいは、ご存知かもしれませんが。 |
糸井 |
ははぁ‥‥ずいぶんキレイな映像ですね。
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原 |
ホワイトボードに書いた文字が見える
テレビ電話って、今までなかったんですよ。 |
糸井 |
へぇー‥‥。 |
原 |
でも、この「XVD」という技術を使えば、
ホワイトボードに書いた文字も見える。
しかも、これでデータ容量は「800K」。
つまり「1メガ以下」なんです。 |
糸井 |
これって、ハイビジョン映像ですか? |
原 |
そう、ハイビジョンのように巨大なデータも
特殊な技術で圧縮して
いわゆる「細い回線」、つまりナローバンドでも
画像の質を落とさずに、伝送できる。
それも、時間のズレがなく、リアルタイムに。 |
糸井 |
映像がカクカクしてませんね。 |
原 |
なめらかで、きれいでしょう? |
糸井 |
これが、原さんの今の興味なんですね。 |
原 |
これまでの圧縮方式だと
ハイビジョン映像を伝送するためには
20メガの回線容量が必要なんです。
つまり、さっきの「800K」の映像と比べたら
「25倍」の太さのパイプを用意しないと、
あれだけキレイには、再現することができない。 |
糸井 |
個人じゃムリだ。 |
原 |
そう、そこなんですよ。
専用回線を引かなきゃならないから、
月々、何十万円ものお金を払わなきゃいけない。
これじゃ、家庭に普及させるのは
まずムリでしょう。 |
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糸井 |
でも「XVD」なら‥‥「800K」で見れる? |
原 |
つまり、月々何千円という
ふつうの家庭用インターネットプランで
これだけの映像が見れるわけです。 |
XVDの映像のキャプチャ(クリックで拡大できます) |
糸井 |
‥‥すごい技術ですね。 |
原 |
たとえば、お互いに離れた場所どうしに
200インチぐらいのディスプレイを置いて、
そのあいだを「XVD」でつないだら?
ほとんど「通信料タダ」で
空間と空間をくっつけられちゃうんです。 |
糸井 |
つまり、あたかも「隣にいる」かのように
話しあったり、会議したりできる、と。 |
原 |
そのとおりです。 |
糸井 |
‥‥窓、ですね。これは。 |
原 |
そうです、窓です。 |
糸井 |
タイムラグもないわけだし。 |
原 |
やってみて気づいたんですけど、
これだけキレイに映ると、
テレビ電話でも、会議が白熱するんですよね。
一生懸命、話しかけちゃうんですよ(笑)。 |
糸井 |
そうでしょう、このクオリティなら。 |
原 |
そして、わたしたちは、
この技術を使おうと思っているんですよ。
ほら、あの‥‥このあいだお話した
バンクラデシュの「遠隔教育・遠隔医療」に。 |
糸井 |
おお! そこに繋がるんだぁ! |
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<続きます!>
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