KAGUCHI
カナだから、の手紙

『出発前、原稿なんとか書きました!』

カグチヒナコさま

お返事遅くなりました。
『ほぼ日』が1周年ということは、
「カナだからの手紙」もほぼ1周年ということ。
その間、いろいろありましたね〜。
中国茶、パン作り、大きくならないウサギ、インド映画、
竹中直人の会、筋トレ、タンゴ−−−。

そして、先日、ついに、カグチさんとオペレッタを
ご一緒することに成功!
じつは、私は大のオペラ好き。
オペラさえあればいいという日々を生きている私は、
カグチさんと、一度、オペラをご一緒したいと、
なんかオペラの押し売りをしてしまいました。
思うに、オペラって、好きか嫌いか
どちらかしかないんじゃないかと思うのです。
まあまあ好きという好きになり方はあんまりないと
思うのです。
それで、私は、カグチさんに楽しんでいただけるかどうか、
内心、とても心配しました。
これには、プロローグがあって、じつは、去年の秋、
ボローニャ歌劇場が来日したとき、
イトイさんがご招待されてご覧になったんですが、
見事に熟睡されたとか。
で、カグチさんも、「私、寝るんじゃないかしら」と、
始まるまでは、ちょっと不安げ。

そんなこんなで、東京文化会館改装のこけら落としの
「チャールダーシュの女王」の一幕は終わって、
バルコニーでシャンパンを飲みながら、
カグチさんが結構オペラな気分になってくださって、
私も幸福につつまれてオペラの夜は更けていったので
あります。

ちなみに、「チャールダーシュの女王」は−−
侯爵家の御曹司と当代随一の踊り子が恋に落ちて、
母君である公爵夫人の猛反対を受け、
あわや悲恋に終わるかというところ、
そこは、さすがオペレッタ。
これがオペラなら刃傷沙汰になって、
死者が出て悲劇的な結末を迎えるでしょうが、
オペレッタは、カグチさんがおっしゃるように
明るいのです。
じつは、なんと、公爵夫人も経歴詐称というか、
もともとは踊り子だったという素性がわかり、
件の若い二人はめでたく結ばれるという人情話。

さて、「オペラとオペレッタの決定的な違いは何ですか」
というカグチさんの問いに、私なりに、
ここでお答えしたと、あれから猛勉強したのです。
それでお返事が遅れてしまいました。(あ、言い訳)

まず、決定的な違いはないというのが結論。
一言で言えば、オペレッタは軽いオペラ。
生まれは、オペラがルネサンス時代なら、
オペレッタはぐっと新しく19世紀後半。
歌劇(オペラ)の合間に上演される喜歌劇として誕生。
いわば、能と狂言の関係ですね。

うきうきする序曲。
タイムリーで通俗的なテーマ。
小粋で辛辣な演出。
甘い歌とミュージカルにつながる軽快な踊り。
風刺に満ちた滑稽な台詞。
庶民的で気取らない。
世紀末を反映する憂愁、感傷。
楽しければいいじゃないのという開き直り。
と、まあ、こういうものがオペレッタの魅力ですが、
作曲家のサン・サーンスがとてもうまく言っています。
「オペレッタはオペラの堕落した娘」。
その娘は、美人で陽気で愛嬌たっぷりで、
したたかに人々に愛され続けているのです。

イタリアオペラ一辺倒だった私も、徐々に
軽妙なオペレッタの魅力がわかりつつある一人ですが、
中でも「メリー・ウイドゥ」は抜群に好き。
心惹かれながらも、素直になれない大人の恋。
ハンナとダニロの恋の鞘当て、意地の張り合いが健気で、
たまらなく人間を愛したくなっちゃいます。
「メリー・ウイドゥ」がオペラではなく演劇になったら、
陽気な未亡人のハンナ・グラバりー夫人には、
カグチさんがぴったりと、私は兼々思っているのですが、
どなたか、そんな舞台を見せてくださる演出家は
おられないのでしょうか!?

きょうは、オペラの話ばかりになってしまいました。
もっと話したいことがいっぱいあるのに、
またメール送らせていただきま〜す。

Chikako Sasaki



佐々木さ〜ん、メールありがとうございました!
佐々木さんのオペレッタへの熱い想い、
ひしひしと感じました。
今度は、ぜひぜひオペラご一緒したい!!!
と思っているカグチです。
と、こんなに簡単にオペレッタのこと
すませちゃいけないんですけど
今、ワタクシ、非常にあせっております。

それは、なぜか?
あと1時間後にカナダへ出発しなくてはいけないからです。
今回の旅支度なんだか異常に時間をとってしまい
メールを書く余裕がぜんぜんなかったんで〜す。
スミマセン。

なんたってカナディアンロッキーをトレッキング
というテーマなので
 
1、もしクマがでたらどうすればいいのか?
2、蚊の大群に襲われたらどうすればいいんだろう?
3、寝袋で寝るときには、パジャマではまずいだろう。
  (4日間テント生活)
4、4日間お風呂に入れないってことは、
  水のいらないシャンプーとかいるわけだ。
5、大陸横断鉄道に7時間乗るってことは、
  おしりが痛くなるのかな?
6、そーだ、釣りもあるしカヌーだって
  こがなくちゃいけなし、
  なんたって1日歩きどおしなのだから
  カラダ鍛えなくっちゃ!

な〜んてことが頭の中をかけめぐり
アウトドアショップとか、スポーツジム、薬局など
いろんな所に通っておりましたの。ほんと〜に大変だった。



でね、まず何を一番始めに用意したかっていうと
【南部熊鈴】。
これナンブクマスズって読みます。
用途は、クマよけ。
クマっていきなりヒトに遭遇すると
びっくりして襲ってくるらしいんです。
だからこの鈴を鳴らしていれば大丈夫とのこと。
南部鉄で出来ていて、ひとつひとつ手作りなんですって。
2つの鈴は、それぞれ音階が違って、なんとも良い音色。
ただ、思った以上に音が大きいので、ひょっとしたら
スタッフの音声さんにしかられるかもしれない
という恐れあり。
そういう時は、同行するマネジャーの腰に
ぶらさげてもらおうと思っているのですが・・・・・・。
どうだろう?



この【南部熊鈴】は、優しいほぼ日読者の方
(ミホさん)からクマよけグッズが
通信販売で買えますというメールいただいたので
さっそく取り寄せたモノです。
他にも、クマに襲われた患者さんを
実際に治療した看護婦さんとか
近所にクマが住んでいるという地方の方とか
いろいろ情報いただきました。
今回は特に身をひきしめてメール読ませていただきました。
皆さんありがとうございました!!!

と、ここまできたら出発まであと5分しかないことに
気がついた!
と、とにかくカナダへ行ってきま〜す。
ひょっとしてカナダからご報告が送れるかもしれませんが
なんせ山の中にはいると携帯も使えないらしいので
期待しないで待っててください。

それでは、佐々木さ〜ん、読者の皆様、行ってきま〜す。

Hinako Kaguchi

1999-07-02-FRI

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