KAGUCHI
カナだから、の手紙

【カナダのご報告5】       
   
恐怖の一夜の巻

氷河から帰ったその夜・・・・・。
岩場を登って運動が足りたせいか
寝付きは、ものすごくヨカッタ。
寝袋の中に湯たんぽ
(正確には、水筒。
沸騰したお湯が入れてあり
これが次の日の
飲み水になるのです)も
ほかほかで、言うこと無し。

で・・・・・ぐっすり眠って、
どのくらいたっただろう?
ある頭の重さで、眼が覚めた。
重さとは、頭が痛いとか、
どんよりしているとかの重さではない。
重さ、すなわち何かの重量がテントの布越しに
寝ているワタシの頭にかかっているのである。
もっと言えば、何かがワタシの頭を押している。
                 
「えっ?」っと思って近眼の眼で
寝たまま頭上を見るとテントが動いている!

「うおおおおおーーーーーーーっ」っと
思わず飛び起きるカグチ!!!
(こういう時って「きゃーっ」って高い声が出ずに、
小さく低い声。)

もう一度眼をこらして見ると、
テ、テントの揺れに合わせて
何か爪でひっかくような音さえする。
時計を見ると、午前2時。日本でいう丑三つ時である。
でもこれってお化けじゃない。
何か動物・・・動物・・・・・・・・ク、、、、、
【クマ】!!!

えらいこっちゃ、えらいこっちゃ。
隣のマネージャーの菜穂ちゃんを見ると、
いつものとおりグッスリ。
今夜は、寒いのか黒いフードですっぽり頭をおおっている。
そうだ寝る時に、
「ワタシって、モジモジ君みたいですよねー」っと
言ってたっけ。そのモジモジ君は、
上から見るとなんだか【変な小動物】のようである。

おっと、観察している場合ではない!
彼女は昼間、ワタシより重い荷物をしょったり
お皿洗いの手伝いをしてワタシ以上に
疲れているはずだから、もしクマでなかったら
起こすのはかわいそう。
【小動物】は、そのまま寝かせておくことに決めた。

となると戦うのは、ワタシ1人。(もう戦う氣になってる)
そーだ!こういう時の味方、
【ベアスプレー】があるではないか!
急いで暗がりの中を探すが、
いつも枕元においてあるはずなのに今夜は、なぜかナイ!
しまった。昼間、氷河に行った時
「こんな寒いところクマなんかいませんよねー。」
とスタッフに預けておいたのであった。
しかも、ワタシのリュックの中にクマも
好きであろうチョコレートが入っていることに、
今、氣がついた!
(テントの中には、
いっさい食べ物おいておいてはいけない)

こういう油断している時こそ、敵はやってくるもの。
『助けを呼ぶべきか?』
『でも大きな声だしたら、
ヤツもびっくりして襲ってくるかも?』
『ここで、静かに鈴とか鳴らせば、
人間がいますよーってアピールできるのかな?
しまった、日本で買った南部熊鈴、
自宅に忘れて来てしまった。』
『じゃぁ、口笛では、どうだろう?』
『ワタシって、日本で初‘クマに襲われた女優’
って言われるのかな?』

などと思いながら、寝袋の上で正座すること1時間。
ヤツは、去っていった・・・・・・・。

今だに、この動物がなんだったのか解明されていない。
モーマットがただ、
ワタシの頭の上によりかかったという説もあるが
あの重みは、もっと大きな動物だったような氣がする。
ほんとだってば。

恐ろしかった恐怖の一夜のお話、これにておしまい。
来週に続く。

1999-07-24-SAT

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