1101
「ほぼ日刊イトイ新聞の本」が出るよ!

【見本読み その1】
アクセス数には気を取られない。



これから毎日、『ほぼ日の本』の
ところどころを、立ち読みしていきますね。

今日は、「ほぼ日」開始後、3か月の時点での
darlingこと糸井重里の「初心の気持ち」です。
まずは、お読みくださるとうれしいです。どうぞ。

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【アクセス数には気を取られない】

仕事は増えていったが、
ようやくウイークエンドに
ちゃんと休めるようになったのは
スタート二ヵ月後の八月くらいからだろうか。
無駄をなくし、よりスムーズにこなせる方法を、
個々のメンバーがつかんできた成果だった。

八月八日には久しぶりに釣りを楽しんだ。
深夜に鼠穴を出発し、
霞ヶ浦の近くの野池に着いたのは日の出前だった。
早朝だけルアーを投げ入れ、
昼にはもう東京へ戻ってきたが、
なんだか一日中浮き浮きしていた。

よく、三日、三月、三年という。

創刊してからちょうど丸三ヵ月目の
九月六日を迎えたときは、
第二の壁はなんとか乗り越えられたようだとほっとした。

はじめはなるべく力を抜いてやっていこうと思ったが、
はじめたらおもしろくなってしまった。
力を抜くどころか、当時甲子園で大活躍していた
松坂大輔状態で投げまくることになった。

次の「三年」という道標まではといえば、ずいぶん遠い。

ただこの時期、どうなることやらと心配しても仕方ない。

「まぁ、いいか」
と、いろんなことを軽く考えられるようにもなった。

アクセス数はすでに
通算では百万を越えようとしていたが、
アクセス数に足をとられないようにしようという
コンセプトは、当初からの編集方針だった。
アクセス数の増加を自己目的化すると、
どうしても「必要」な
ホームページになろうとするからだ。

「必要」なものとは検索、ニュース、便利なリンク集、
常連の掲示板、性欲、賞品などなどだが、
いずれも資本でつくりだせる。
こいつらしかできないと思えるものをつくるには、
「必要」の助けを借りないほうが練習になる。

ぼくらは
「必要でないもの」を配れる楽しみを持っていたい。
シロートのくせに生意気だけれど、
そう思ってじたばたしていた。

腹が減っているから食べるメシではなく、
腹は減っていないのに、
つい食べちゃおうかなっていうなにかをつくりたい。
そんなことを思って毎日、
くだらないことやクソ真面目なことを考えていた。

ただやっぱり、百万アクセス達成を目前にすると、
それはそれでうれしかった。
毎日、貯金通帳を眺めてほくそ笑むじいさんのように、
ぼくは日々のアクセス数を足し算しては喜んでいた。

でもそんなとき、ふと冷静にかえる自分もいた。

いやいや、こんなことで焦ってはいけない。
にやにやしていてはいけない。

もう一度気を引き締めようと思った。
初心を忘れてはいけない。
アクセス数に足をとられないようにして、
必要でないのに、ちょっと大事なような気がすること、
必要でないのに、あったほうがいいような記事や遊びを、
自分たちはつくっていくんだと、改めて決意した。


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創刊3年を前にしたほぼ日においても、
こういう必要のない遊びは、忘れがちなので、
「数値化できないおもしろさを味わいたいよなあ」
と、ことあるごとに編集部内で言いあってるところです。

4月初旬、多くの人が
初心を思い出すこの時期には、
妙にタイムリーな話題ですので、
初回の見本読みは、この場所をピックアップしました。
明日掲載の、見本読み第2回に、つづきます。

このページへの激励や感想などは、
メールの表題に「ほぼ日の本。」と書いて
postman@1101.comに送ろう。

2001-04-08-SUN

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