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「ほぼ日刊イトイ新聞の本」が出るよ!

【見本読み その8】
『ほぼ日刊イトイ新聞』で行こう。

見本読みの、第8回目は、
「ほぼ日」のネーミングと、コンセプトについて。

『古い間口で新しいもの』
という考え方が軸になっていてのことなんですよ〜。

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【ホームページの名前は『ほぼ日刊イトイ新聞』で行こう】

ホームページの名前に「新聞」という言葉をつけることは、
考えはじめたときからイメージにあった。

ヒントはレンタルビデオで有名なTSUTAYAだった。
TSUTAYAが最初、
レンタルレコード店をはじめたとき、
日本ではまだレンタルレコードや
レンタルビデオなどは一般的ではなかった。
そこで社長の増田宗昭さんは、蔦屋書店という
誰でもわかる「書店」という業態からはじめた。

ここは本屋さんなんですよ、といったん
誰にでも理解してもらえる枠組みを提示して、
そこに新しい業態のレンタルシステムがある、
というスタイルにしたのだ。

新しいことを始めるときは、
入り口の間口をわかりやすいように広く取る。
いきなり入り口から
「これは新しいですよ」という部分を前面に出すと、
新しいものに敏感な一部の人々しか
入ってきてくれなくなるおそれがある。

その点、「新聞」だったら
誰でも入ってきやすいだろう。
だいたい、新聞の定義とは何か、ということも
ほんとうはよくわからないものなのだけれど、
みんながわかっているつもりになっている。
正確になんであるかを説明できるように
苦心しているよりも、
古くからある何かの変種として
新しいものを少しずつわかってもらったほうがいい。

また、ネットサーフィンをしながら
感じていたのは、毎日更新され続けていることに、
大きな魅力があるということだ。
たとえ一行でも、
主宰者が毎日その場にやってくるというのは
非常に重要だ。
そのことは、料理屋などと同じだと思う。
主人が毎日どこかにいるだけで、
店の活気は生まれるものだ。
料理屋の主人の不在が多くなると、
だいたいその店から客の足も遠のいていく。
これは自分の経験から知っていた。

だから、なにがなんでも、
「日刊」ということは
前面に表現していこうと思っていた。

内容については、
文字中心のコンテンツでいくつもりだった。
毎日文字中心のコンテンツを届けるものといえば、
新聞じゃないか。ますます、新聞という言葉はいいぞ。

新聞、と、日刊、は確定だ。

タイトルに「ほぼ」をつけたのは、
自分に対するエクスキューズで、
『日刊イトイ新聞』にして、毎日更新することが、
自分たちの強迫観念にまで
なってしまうのはいやだったからだ。
自由さがなくなったら、ぼくにも読者にもつまらない。
「ほぼ」といういいかげんな二文字のおかげで、
ぼくらがその後も
どれだけ自由でいられたかと思い出すと、
この判断はほんとによかったと思う。

もし、万が一更新できなかったとしても、
「うちら『ほぼ』日刊ですから」
という「こころのゆとり」のようなものを
残しておきたかったのだ。
もちろん、この「ほぼ」のおかげで
ちょっとインチキくさい感じはつきまとうんだけどね。

「イトイ」を付けるかどうかは、
かなり悩んだのだけれど、
検索しやすいということを考えると、
これくらい個人のにおいを
付けておいたほうがいいだろうと決めた。
しかし、「糸井」としなかったのは、これも、
お気楽なイメージを残しておきたかったから。

ネーミングも、コピーライターという
本職の仕事なのだけれど、
自分のこととなると難しいものだった。
しかし、決まってしまったら、
もう好きになるしかない。
まぁ、よかったんじゃないかと、
いまでは思っているけれど、かなり
長いこと心配だったことも告白しておきます。


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※次回は、スタッフを集める話です。

2001-04-15-SUN

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