・渋谷パルコの8階には「ほぼ日曜日」がある。
実は、そのぼくらのイベントスペースは、
8階のごく一部分なのであって、
渋谷パルコの8階とは、元々「PARCO劇場」のある場所だ。
ここで三谷幸喜さんの新作『大地』の公演があって、
ぼくは、運よくその観客のひとりになれた。
実は「大地」ということばに先入観があって、勝手に、
読んでもいないパール・バックの長編小説『大地』を、
三谷さんが脚色して舞台にしたものかと思っていた。
どうやらそうじゃないことはすぐにわかったのだが、
設定や登場人物たちの名前から、またまた勝手に、
今度は、東欧あたりの小説を元にした舞台かと思った。
どうやら、それもちがっていたようで、
まったく三谷幸喜さんの「作・演出」の作品だった。
それにしても、この『大地』という作品の構想は、
当然、ウイルス感染時期より前にあったと思うのだが、
どうしてこうも、こうして、
いまのいま観て響くように出来ていたのだろうか。
あらかじめ「安全で適切な距離を舞台上で保つ」
ために舞台構成に変更を加えたらしい、
ということは、どこかで読んで知っていたし、
その舞台の距離感は、とてもおもしろく機能していたが、
それ以上に、コンセプトというか、劇の内容が、
いまの時代の役者たちと観客に、そして作家自身に、
とても深いところで問いを投げかけるものだった。
演じること、笑うこと、ほんとじゃないことをすること
…そういったことのすべてが、どうして存在してるのか。
移動や接触を制限して生きているいまの時代だからこそ、
真剣に考えざるを得ない問題として見えてくるのだ。
そして、これはまちがった感想かもしれないのだが、
芝居が終わって席を立つときに、ぼくは、
この演劇の「大地」という無骨なタイトルに、
うれしくてなのか怖くてなのか、背筋が寒くなった。
「大地」とは、そうか「○○」のことだったのか、と。
・まったくお話かわって、おまけ…ぼくは、ちょうどいま、
大地の「土」についての本を読んでいるところでした。
みんなの知っているねばねばのある粘土って、
生物の歴史のある地球にしかないんです。
生きものと鉱物の合作なんですよね。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
演劇の上演があって、その場にいられた幸運に感謝します。
(2020年8月3日の「今日のダーリン」より)