『ピサロ』は去年の3月に
パルコ劇場のオープニングシリーズ
第1弾として上演されるも、
45回の予定だった公演が
わずか10回で閉幕となってしまった作品です。
あたらしい劇場の門出にふさわしい
名作だったという評判は耳にしていました。
ただ、わたしも観られなかったひとりでした。
ですから、
再演が決定したというニュースもうれしかったですし
予定どおりに開幕できたという
その事実に気持ちを熱くしながら
劇場に入りました。
おおまかなストーリーは、こうです。
スペインの将軍
ピサロ(渡辺謙さん)が
兵を率いてインカ帝国の征服を試み、
インカ王・太陽の子である
アタウアルパ(宮沢氷魚さん)と
その一族に出会います。
ふたつの組織は
文化も、信仰も、言葉も、すべて異なり
わかりあうことがありません。
敵として対決し、血も流れます。
ただ、その相容れない
2人の関係性が、
次第に変わっていきます。
異文化の出会いと争い、
人間の欲や憎しみ、
ゆるがない信念と
現実を前にしたときの虚無に似た諦め。
肉厚なテーマが降り積もっていきます。
どっしりとお腹の底に響く演劇を
久しぶりに観ました。
俳優さんそれぞれも
その命を生きているかのような
説得力のあるお芝居をされていました。
とくに、インカ王を演じた宮沢氷魚さんの
気高い光をまとったような
立ち振る舞いや声が
印象に残っています。
壮大な話が進んでいくものの、
舞台装置はとてもシンプルだったのも
演劇的で好みでした。
そして最後、幕がおりたときに
じぶんの拍手を直接舞台へ届けられることに
あらためてよろこびを感じました。
わたしの目の前で
こんな演劇が起きている。
コロナ禍になってから、
毎回この瞬間に
なんだかじんとしてしまうのです。
パルコ劇場は
感染対策もしっかりおこなっていて
安心して観劇することができました。
終演も遅くならないように、
早めの時間から上演しています。
渋谷のまんなかにある劇場で、
異世界に没入するような約3時間。
まだチケットはとれるようですので、
重厚な演劇体験をしたい方に
おすすめします。