HOLAND
オランダは未来か?

「ホ 〜!ラント」第3回目

第2回までのアート・ポルノの
下半身丸出しパフォーマンスの話を読んで、
ちょっと引いてしまった方々もいらっしゃると思います。
逆に身を乗り出していただいた方々も
いらっしゃるかもしれません。
引いてしまった方々、ここがガマンのしどころです。

オランダは面白い国だと思います。
私もビギナーですから、知ったかぶりはしませんが、
オランダにはいわば「しわ」があるんですよ。
贅沢三昧もした、どん底の貧苦もなめた、
ありとあらゆる人間とつきあって
さまざまな経験を積んできた経営者のおっさんや、
飲み屋のママさんが持っているような「しわ」、
大人の重みがあります。
そこに現実に存在するものは、とりあえず認め、
自分を開いて中へ迎え入れ、
つきあってみて判断するという
現実主義があるように思えるんです。
清濁併せ呑む、というようなね。

それはオランダが九州ほどの小国として、
厳しい自然や強大な国々に周囲を囲まれて、
そう生きざるをえなかった必然があったのでしょう。
オランダは、舞の海のように
創意工夫して生き抜くしかなかったんだと思います。
だから、オランダは面白い。
親に庇護されて生きてきたお嬢さんの人生よりも、
世間に放り出されて四苦八苦した女性の人生のほうが
味わいが豊かなように。

そしてオランダは、もしかしたら日本の国や社会が、
これからもっと開かざるをえなくなり、
吹きっさらしになるしかなくなった時に、
そこに未来の選択肢のひとつを示してくれている
貴重な存在かもしれません。
それはまだ私にも確たることはわかりません。
でも、試してみる価値のあることだと思っています。

てなわけで、
ちんちんだのアソコだのという活字くらいで引かないで、
一緒に「そこには未来があるのかい?」
とオランダに尋ねてみましょう。
つきあってみてください。損はさせませんから。

さて能書きぶっこきましたが、
第3回の幕を開きます。するする。

----------------------------------------

お縄パフォーマー・ツバキさんの話シリーズ 3
【アホでエッチなパフォーマンス集団、
アート・ポルノとは何か?】
(縄というのが、ツバキさんの発言です)
「そろそろパフォーマンス以外の話を
聞いていきたんですけど、
もう一つだけアート・ポルノの
パフォーマンスを聞かせてくださいよ。
だんだん慣れてきて面白くなってきちゃったから」
「デパブリックというアート・スペースで
彼らがやったパフォーマンスがあるの。
そのスペースをちゃんと
レストラン風に飾り付けたわけ。
ダイニングテーブルも置いて、
キャンドルも置いて、花も飾って。
キッチンもしつらえたの。
そこに大仕掛けな器具が登場するの。
病院で患者を運ぶ車のついた簡易ベッドがあるでしょ。
そのベッドが縦に回転するようになっているの。
鉄棒がベッドに直角に付いていて、
鉄棒を軸に体操の大車輪みたいに
ベッドがくるくる廻るのよ。
そのベッドに正装したアート・ポルノのパフォーマーが
くくりつけられてるの」
「当然その人もベッドと共に回転するわけですね。
立ったようになったり、
逆立ちしたようになったりするわけだ」

「そう。
で、正装してるけどお尻のところは
むきだしになっているの。
例えばズートをくくりつけたとすると、
まずズートのお尻にシャネルの
パウダーなどをぱたぱたするの。
それから彼のお尻の穴にチューブを挿して、
体内にイチゴのピューレとか
バナナのピューレとかを詰めていくの。
それから調理と称してベッドごと
ズートをぐるぐる廻して」

「嫌な予感がしてきたなあ」

「その大掛かりな器具はよく出来ているのよ。
ベッドもエナメルが塗ってあったし。
このためだけに作ったんだから。
それからその攪拌したピューレをお皿に盛って、
レストランのテーブルに持っていって
お客様に差し出すのね」
「そのお尻の穴から出したやつを?
食べてる人がいたんですか?」

「いなかったみたい。
それから下にキャンバスを置いて、
お尻から出るピューレを垂らして絵も描いてた。」

「何を考えておるのやら・・」
「その絵が売れるから怖いわよ」
「うんちみたいだよねえ」
「ズートは
実際うんちで絵を描いたこともあるみたい。
その絵も売れてるのよ。ズートの家に行ったら
乾いたうんちが飾ってあったし」
「アハハハハ。
とにかくハンパな連中じゃないね。
アムスきってのアヌス野郎ですね。
そのパフォーマンスは、
なんてタイトルなんですか?」
「『アナル・レストラン』っていうの」
「ハハハハハハハ。そのまんまの名前だな。
凝ってないのがすがすがしいくらいだな。
とにかく底抜けにくだらないね」
「そうね。それは言えてる。
群を抜いてくだらないの。
他にもあるわよ。
タコとからむ『オクトパス・ショー』とか」
「ハハハ。いや、ごちそうさま。
だいたい芸風は分りました。
底抜けにっていうところが、
きっとなんかなんでしょうね。
彼らは一方では何か
一生懸命考えているんだろうけど、
中途半端だったらそれが透けて見えちゃうもんね。
体ごと考えているようなところがなくちゃ、
こうは底抜けに
アホらしくできないんじゃないかなあ。
今度は彼らのふだんの
生活のことを聞いてみたいんですよ。
ツバキさんはジャネットの部屋で
居候してたんでしょ?」
「うん。部屋を空けてあげるから
来なさいよ〜って言われて。
そうだ、ジャネットの部屋の
上に住んでる変なオヤジの話があるよ」
「してくださいよ。
アムステルダムの住居って
細長い石造りの共同住宅ですよね」
「そう。で、そのオヤジは髭モジャのむさ苦しい、
何の仕事してるかわかんないような奴なんだけど。
そいつがジャネットとズートが
セックスしてるのを覗こうとして
床を掘ったらしいのよ。
石造りの家なのに根性出して。
そしたらその床が抜けたんだって。
ジャネットのベッドルームの天井を見たら、
確かにボコッと陥没してるの。
もう修理したから大丈夫よ〜
なんて彼女は言ってたけど。
どこが大丈夫なの?って感じだった。
最初は天井の小さな穴だから
気がつかなかったらしいけど、
次第に穴が大きくなってオヤジの目が見えたんだって」
「オヤジ、覗きたくて必死に床を掘ったんだ。
それでジャネットはどうしたんですか?」
「エッチしながら天井見上げて、
ハーーイ!とか言いながらヤッてたらしい」
「肝っ玉が太いんだなあ。
警察に届けたりしないんですか?」
「バッカっで〜、で済ましてる。
ジャネットはアムスがもっと荒廃してた時代から
危ない場所で過ごしてきたから、
見るものは見ちゃってるのよ。
だから、すべてはたいしたことじゃ
なくなってる女なのよ」
「ほ〜!
それはまるでオランダっていう
国自体みたいな女性ですねえ。
アムスがもっと荒廃してた頃って、
どんな時代なんですかね?」
「よく知らないけど、
そのへんのカフェでおばちゃんがラリって、
しかも客をとってて、
客のズボンを足まで脱がせて金を取って
逃げていって、
それを客がピストルを撃ちながら追いかけていく
みたいなことが日常茶飯事だった頃があったらしい。
そういう連中は淘汰されたっていうのか、
だいぶ少なくなって、
今のアムスはわりあい平穏だけどね」

----------------------------------------

『アナル・レストラン』の話が大半を占めて、
また引いてしまったかな。
しまった。

ツバキさんの話は、ジャネットやズートの生活の話から
次第にアムスの他の場面へと移っていきます。
ほ〜!
っという話がたくさん出てきます。まだほんの入り口です。
一歩一歩アメイジング・ワールドの中へ
踏み込んで行きましょう。
ちょうど時間となりました〜。

それでは皆さま、また次回〜。

 

1998-08-26-WED

BACK
戻る