HOLAND
オランダは未来か?

 

「ホ 〜!ラント」第8回目

前回、能書きを長々と垂れちまったんで、
おいらも江戸っ子、
今回はスパーンとインタビューに入りますぜ。
おっと、聞いちゃあいけねえよ。こちとらでえくでい。
黙って読んでおくんねい。
細工は隆々仕上げを御覧じろってね。

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お縄パフォーマー・ツバキさんの話シリーズ8
【未来都市アムステルダム?】
(縄というのが、ツバキさんの発言です)
「オランダ人はケチ、
じゃなくて清貧じゃないかって話でしたよね。
どっちにしてもオランダ人ってのは
質素な暮らしをしてるんですかね?
都会であるアムスでもそうなんですか?」
「私の知り合った人たちは
バスタブ持ってなかったな」
「バスタブ?
あの石鹸皿をでっかくしたみたいのに横たわって、
泡立ててふとももあげて足の先で
男を招くやつですね?
ああいうのはみんな持ってるのかと思ってた。
それがない?」

「うん。シャワーだけ。
バスタブ高いし、水道代も高いからって」

「清貧ですねえ」

「今アムスはアジアン・ブームらしいの。
ニューエイジとかの。
アロマテラピーとか禅とかが興味を持たれてる。
その延長でアロマ風呂とかが流行ってるの。
そこには行くみたい。
男女混浴の共同浴場で、
サウナやジャグジーやマッサージなんかもある」

「ラドン温泉みたいなものかなあ。
私も松戸のラドン温泉時々行くんですけど、
いいんですよムームーみたいの着てだらんとして。
シャワーしかないんじゃ時々は
お湯に浸かりたくなるでしょうね。
つましい暮らしなんだなあ」

「ラドン温泉よりはずっとオシャレなものだけどね。
つましいって言えば、
アムスでは移動はたいてい自転車だし。
アムスは自転車だらけ だから。
自転車専用道路がいたるところにある」

「またまた清貧ですねえ」
「でも使うところでは使うみたい。
ジャネット達もぽーんと
タイにひと月も旅行に行っちゃうし。
オランダの家は通りに向かった窓の
カーテンを閉めないのよ。
いつも通行人に窓の中を見せてるの、
すごく綺麗にして。
だからそういうところには
お金をかけるんじゃないの」
「え?カーテンを閉めないんですか。
私の家をご覧くださいって感じで?」
「それはオランダの特色みたい。
窓辺にチューリップを植えたりして。
アムスは100年前200年前の家はざらだから、
そういう家は窓がとにかく大きい。
中がよく見えるの。
それでけっこうみんな平気で着替えてたりとか」
「ほ〜!それは面白いな。
ヨーロッパの中でも変わってるんでしょうね。
開けっぴろげなんですねえ。清貧で開けっぴろげと」
「アムスの運河にはハウスボートが
いっぱい浮かんでるのよ。
それも見せることを考えてるから
綺麗だし楽しいの。
ハウスボート見てるだけでも飽きない」
「見せることを考えてるってことは、
おつきあいしましょうっていう
前提があるってことですよね。
エブリボデーカモンという。
そういうとこはケチとは違うなあ。
ケチは人間関係もケチりますからね。
オランダの人は概して
気難しい国民性ではないみたいですね。
気がいいのかな」
「気のいい奴らが多かったよ。
友達になるのがすごく早い。
ジャネットのセックスを
天井の穴から覗いてた奴がいるでしょ。
あいつヨーストって言うんだけど、
ひげもじゃのおっかないオヤジなんだけど、
町で会うと『よおネイバ ース!』
って声かけてきたもん」
「きさくな覗き野郎ですねえ」
「オランダ人は寄付もよくするみたい。
親切な人が 多いんじゃないかな。
ハウスボートの中に
キャット・ボートっていうのがあるの。
アムスの友達に
『猫ボ ートって知ってる?』って言われて、
猫と遊べるボートがあるっていうんで、
私猫 好きだから行ってみたら、
そのボートの中は猫でいっぱいなの。
その猫は実は野良猫なんだって。
野良猫を連れてきて、
餌をあげたり寒い時は暖め てあげたりしてるみたい。
欲しい人がいればさしあげますよって感じで。
それを全部カンパでやってるの。
そこを訪れる人たちの寄付で。
だから野良猫にも 親切なのよ(笑)」
「ほ〜。にゃんともそれは親切だ」
「そうかと思えば、
やっぱハッパ・ボートもあって。
ボートでハッパをやるし」
「ハッパというとマリファナですね。
ボートでぷかちょか。
ハッパも吸えば、野良猫も助けるわけだ」
「親切といえば、
セックス・ショップのすごくいいおばちゃんがいた。
私はこの人大好きなの。
スキンとか愛撫する道具を売ってる店なんだけど、
セックスについてのカウンセリングもしてるんだ。
時々電話がかかってきて相談に乗ってあげてる。
私も『クラミジアには気をつけなさいね』
なんて言われて(笑)
『こっちではクラミジアが
流行ってるんだけど日本はどうなの?』
って聞かれた。
『あれは赤ちゃんができなくなったりするんだからね、
ちゃんとスキンはつけるのよ』とか
『でも日本のスキンは
いい作りだからいいわね』だって」
「日本のスキンに誇りを感じますね」
「おばちゃんは日本製コンドームは
素晴らしいって言うのよ。
でも、もっと大きいサイズがあったらいいけど、
って言ってた」
「あ、サイズがね・・・小さいと」
「そう、サイズ(笑)」
「それはすんません。ホントにすんません。
その店はどんな店なんです?
日本の大人のおもちゃの店みたいな?」
「違う。その店は猥雑さの
全くないセックス・ショップ。
シンプルで明るくて誰で も入っ ていける。
アムスにはセックス・ショップがたくさんあって、
やっぱり大きな窓に堂々と
バイブ とかを飾ってるの。
窓中ちんちんだらけになってる店もある。
このおばちゃんの店は そんな中では珍しい店よ。
エイズになったけどどうしようとか、
ゲイなんだけどどうしようとか、
そういう相 談にも乗ってて、
すべて彼女は受け入れてくれるのよ。
何でも相談できる。
私が行った時はおじいちゃんが相談に来てた。
おばちゃんが
『最近どうなのよ』みたいなことを聞いてて。
そのおじいちゃんはヘビーな人みたいで、
コンドームを1ダース買ってったけど」
「ひょえ〜〜〜。
ガイジン怖るべしですねえ。
でも、
そうとう筋金の入った親切ですよねそれは」
「なんかすごくいいあり方だと思った。
日本でもHIVのサポートをするとか
すごく頑張ってる人たちがいる。
でも普通のセックスとか、
SMでケガさせちゃってとか、
そういう相談を持ち込めるところってないじゃない」
「そうだなあ。
セックスってものに面と向かう根性が
日本人には足りないかもね。
やるだけはさかんにやってるんだけど」

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今日の仕事はここまでだい。
また数日後に会おうじゃねーか。
どいた、どいたい!
アムスは今日もオランダ晴れでい。

1998-09-27-SUN

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