HOLAND
オランダは未来か?

「ホ 〜!ラント」第9回目

外務省のホームページに行ったら、
オランダに住む在蘭日本人は96年10月のデータ で、5812人。
また日本にいる在日オランダ人は
97年11月のデータで957人だと分りました。
いやあ、便利ですごいものですよねインターネット。
どこにもいかずにこういうことが分るんだから。
このオランダにいる約6千人の日本人、
そして日本にいる約千人のオランダ人、
この人たちは日本とオランダの現在について
最も体験的に貴重な知識を持っている方々でしょう。
そういう方々にお願いします。
もしこのホームページを何かの縁でご覧になっていたら、
ぜひ「ほぼ日刊イトイ新聞」にメールをください。
オランダが日本人にとって何かとても大切な試みを
すでにしているような気がしきりにして、
私はそれについて聞きたいんです。
教えてください。お願いします。
というわけで、平凡野郎がガンガン進めるオランダ追求企画。
ここまで読んだら読みましょう。

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お縄パフォーマー・ツバキさんの話シリーズ9
【未来都市アムステルダム?】
(縄というのが、ツバキさんの発言です)
「オランダの人、
といってもいろいろな人がいるわけですけど、
概してきさくな人が多いっていう印象なんですね?」
「きさくだし、正直って印象。
正直で率直な人が多いって感じたな」
「わりとすぐ話しかけてきたりするんですか?」

「そう。私もレストランとかにいる時
よく話しかけられた。
隣の席のおっさんとかに。
SMパーティーに行った時も、
昔日本にいたっていうおじいちゃんに
きさくに話しかけられたし」

「ほ〜!前回のセックス・ショップで
コンドーム1ダース買ったおじいちゃんと
同じ人じゃないでしょうね?」

「違うよ。その人は学者らしい。
北海道の函館にいたことがあるんだって。
それで『函館にはこういうSMパーティーが
なかったから淋しかった』って言ってるの(笑)
ないよそりゃ函館には」

「そのSMパーティーってのは
どんなもんなんですか?」

「そこは毎月1回集まる
300人くらいの規模のパーティーなんだ。
アムスにはそういうパーティーが
他にもいろいろあるんじゃないかな」

「日本にもSMのショーとかあるじゃないですか。
それと違うものなんですか?」
「日本だとショーとして見せるだけとか、
女王様と奴隷がプレイするSMクラブとか、
あるいは小規模のパーティーを
密室でやるみたいなものじゃない。
アムスはもっと規模が大きいし、
定期的だし、数も多い。
値段も安いし、
商売というより自主的なサークルみたいなもの」
「ほ〜!コミケみたいなもんか。
そのパーティーでは
どんなことをして楽しむんですか?」
「パフォーマンスもあるし、
踊ったり、お酒飲んで喋ったり。
もっとハードにやりたい人は地下室があって、
そっちでどうぞという感じ」
「そうか上はなごみで、
地下でバシバシやるシステムか。
ツバキさんもそこで
パフォーマンスしたんですね?」
「そう。それが終わって
バーサロンに行ってお酒を飲んでたら、
そのおじいちゃんが話しかけてきたの」
「どんな感じの人なんです?」
「おじいちゃんは上半身は裸で皮のベストを着てた。
で、下半身はフリチン。
でも足元は普通のオヤジの靴下に革靴(笑)
黒い皮のアポロキャップをかぶってた」
「あはははは。すっげーカッコですね。
パワフルなじいちゃんだな。
そのじいちゃんは
ハードプレイをしに来てるんですか?」
「そうじゃないみたい。
『私はここの雰囲気が好きなんだ』
って言ってて、
踊ったりとか喋ったりしに来てるようよ。
日本のことを話してるうちに
北方領土の話になっちゃって。
おじいちゃんは
北方領土のことを研究しているみたいなの。
ロシアの人とも話し合っているって言ってた。
とにかく日本語がめちゃくちゃうまいのよ。
当用漢字はみんな書けるし」
「はー、インテリなんですねそうとうな。
インテリでインターナショナルでフリチンでと。
そのSMパーティーは民間のものですよね、
いくらアムステルダムでも
SMパーティーにまでお金ださないでしょ?」
「そうだと思うけど。
でも、ゲイ・オリンピックって
いうのがあるって言ったでしょ。
あれはアムステルダム市だったか忘れたけど、
政府系の公の団体が後援だか協賛だかしてるのよ」
「ゲイ・オリンピックを
公の機関が後援してるの?
オランダ政府ってのも
話がわかるっていうのか何て言うのか・・
そうとうの度量ですよね」
「あと、タトゥーの大会みたいのを
アムステルダム市が協賛してて、
市庁舎の中で大会をやってた。
市庁舎の窓からタトゥーの
大会の垂れ幕が下がってた」
「聞けば聞くほど、
アメイジング・ワールドですねえ。
話を戻しますけど、オランダの人っていうのは、
きさくであると同時にあまり干渉しないっていうか、
来るものは拒まず去る者は追わず
って感じのようですね?」
「そう。おせっかいはやかないね。
お互い自分の責任で勝手に生きようって感じ。
堕落したけりゃ勝手に堕落しなさいみたいな。
でも、これだけは許さないっ
ていう共通したことがあるのよ。
それは子供に対する犯罪ね。
それはみんな口をそろえて許せないって言う。
アート・ポルノみたいなバカやってる
アーティストだって言うし。
アムスの友達は日本の
酒鬼薔薇事件にもすごく関心を持ってた」
「一線は引いてるんですね。
倫理がゆるいんじゃなくて、
倫理の幅が大きいのかな」
「でも彼らはサカキバラのことを
アキハバラと間違えてたのよ(笑)
秋葉原も有名だからね。
最初アキハバラが子供を殺したとか言ってて、
なんのことかと思った。
酒鬼薔薇の事件はオタクの事件って
言われてたじゃない。
秋葉原も電気オタクの世界でしょ。
それでオタクっていう言葉で
勘違いしてたらしいんだ」
「オタクつながりなわけか。
彼らは酒鬼薔薇の事件を
どういうふうに言ってたんですか?」
「わからないって。
『子供が子供を殺した。何故なんだ?』って。
『首を切ってさらしものにしたらしい。
悪魔教でもないし、政治的状況もない。
わからない』って。
『どうして日本では死刑にならないんだ?』とか」
「あの事件は外国の人にとっても衝撃的なんだな」

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倫理。何が善いことで何が悪いことか。
それが日本とオランダとはかなり肌合いが違う。
それはきっとオランダは未来か?
というテーマのひとつの大きな核心です。
たぶんそうなんじゃないかな?
日本では今まで倫理の規範とされてきたものが、
いろいろな場面で通用しなくなって、
いっぱいいっぱいになってきてますよね。
その壁を叩き壊した向こうの世界。
それがオランダの社会かもしれない。
そう思うと、もっと知りたくなるんです。
では一緒に踏み込みましょう。もう一歩。数日後に。

1998-10-01-THU

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