HOLAND
オランダは未来か?

「ホ 〜!ラント」第13回目

雑誌「SWITCH」の1996年6月号にアムステルダムの
特集記事があります。
アムステルダムのアーティスト群像と、
自律メディアやゲイなどのムーブメントを紹介しています。
私はこの特集をツバキさんに教えてもらったんですが、
他にも同じような雑誌の特集があるかと思って
大宅壮一文庫に行って調べたんですけど、
「SWITCH」の特集ほどの質量ともに充実したものは
見つかりませんでした。
これは画期的なアムステルダムの現在の紹介の仕事だと
思います。
アムステルダムに興味のある方にぜひお勧めします。
今回のツバキさんへのインタビューは
「SWITCH」を横に置いて始まります。
ではどうぞ。

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お縄パフォーマー・ツバキさんの話シリーズ13
【未来都市アムステルダム?】
(縄というのが、ツバキさんの発言です)
「ツバキさんにアムステルダムの町の話をいろいろと
してもらったんですけど、ここらで話題を変えて、
ツバキさんがアムステルダムで出会った映画監督の話に
移りたいんです。
ツバキさんに教えてもらった雑誌『SWITCH』の
アムステルダム特集号がここにあるんですけど、
この特集は充実してますね。
たくさんのアムステルダムの
アーティストが紹介されていて。
アート・ポルノや前回の話に出たレストラン
『ザ・サパークラブ』の主催者トワルト・フォスも
紹介されています。
アート・ポルノの写真がページの
片面いっぱいに載ってますね。
これは路上でのパフォーマンスですね。
右端のペニスが付いた大きな帽子をかぶって、
鞭みたいのを振りまわしている
気のきわめて強そうな女性。
これがジャネットですか?」
「うん」
「んで、中央のトップレスの女性のおっぱいを、
左右から男がしゃぶりついている。
この向かって右のグラサンをかけて、
バイブをおっぱいに
当てながら乳首に吸いついている
イナセな男。これがズート?」

「そうみたいね。
アート・ポルノはジャネットとズートを
中心にしていろいろな
パフォーマーが集まるから、ここには
5人写っているけどそれはその時々で変わる」

「それでいよいよ、
こっちのページにその監督が
写っているわけです。
彼の名前は、イアン・ケルコフ」

「イアンちゃ〜〜ん!」

「この写真はひときわエグイですねえ。
裏地が蛇皮の皮ジャンを着て、
ハイネケンを突き出して
カメラをぬうっと覗き込んでいる。
金澤セイヒローばりの剛毛の無精ひげ。
アブなそうですねえ。
この目。目がイッちゃってますね」

「うん、ずっとイッてる。
マリファナが好きで年中吸ってるから」

「では、タイトルを変えましょう。パタ!
【いつでもぷかちょの映画監督、
イアン・ケルコフとは何か?】 」
「イアン・ケルコフは初の商業用長編映画
『アムステルダム・ウェイステッド!』を
1996年に発表して
アムステルダムで大人気になったんですよね。
それまでは異常性愛や
グロテスクなものを描き出す
アングラな作品を作ってきたらしいですね。
イアン・ケルコフはどんなお人柄なんですか?」
「いいやつ。
でも私はイアンの話す
英語はよく聞き取れないんだけど。
くせのある英語で、
スラングとかもいっぱい使うから」
「もう全身がくせで出来ちゃってる、
って感じですかねえ」
「イアンと話していると、
まともな答えが返って来たことがないんだ。
誰かが『何か飲む?』って聞いてきたとするでしょ。
私は『紅茶がいいな』なんて言ってると、
イアンは『俺。血』なんて言うんだから(笑)」
「へそまがりですねえ。
そういう人は案外シャイだったりするもんですけど」
「うん、いいやつなんだよ。
イアンの撮っている映画の主演男優に
『イアンの印象はどうだった?』って聞かれて、
『いやあ何を言ってるんだかわかんないよ。
喋るのが速すぎて』 と答えたの。
そしたらその俳優が
『彼女が君が何を言っているのか
分らないと言ってるよ』って
イアンに言ってくれたみたいなのねどうやら。
『今度は彼女にはもっと
ゆっくり喋ってやってくれ』って。
それで次にあった時、異常にゆっくりと喋るの。
しかも私が答えようとすると、
この写真の目でじーーーっと見つめてるんだよ(笑)
可笑しくって、喋れなくなっちゃて」
「優しいじゃないですか。
私もツバキさんに教えてもらって、
渋谷のUPLINKという所で
『アムステルダム・ウェイステッド!』を観たんです。
そこで売っていた
『テクノ』という作品のビデオも観ました。
それしか観てないんで言うのもなんですけど、
この監督は
極度に内向的なところと、
ドワッとやらかしてしまうところの
両面があるような気がしました。
日本で言うと、町田康、昔は町蔵っていってたけど、
あの人の感じに似たものを感じましたね」
「彼は私が会った時は、
次回作に取り掛かってて
忙しかった時期だったからあまり話せなかったんだ。
でもイアンはシャイだし、
すごく繊細で傷つきやすいと思う」
「興味深い人ですね。
この人はアムステルダムやオランダについて
どんな考えを持っているんだろう?
ぜひ知りたいですね俺」

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再来年は日蘭交流400年記念の年なんですね。
このインタビューを始める時には知らなかった。
このコーナーは、
もう一度「蘭学」を志すって感じなのかな。
ここを平成の出島たらしめん、みたいな。
ありゃま、でかいことを言っちゃったぜ。

1998-10-22-THU

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