お縄パフォーマー・ツバキさんの話シリーズ14
【いつでもぷかちょの映画監督、
イアン・ケルコフとは何か?】
(縄というのが、ツバキさんの発言です) |
私 |
「イアン・ケルコフ監督は1964年生まれだそうだから、
34才くらいでしょう。
働き盛り。バリバリですね。
イアンさんは、オランダ人じゃないんですよね。
南アフリカ共和国の生まれです。
ヨハネスブルグの。 で、白人です。
私は恥ずかしながら南アフリカ共和国のことを
あまり知らないんです。
アパルトヘイトと呼ばれる人種差別政策が行われ、
それが国際的な批判を浴びて経済制裁などが行われて、
アパルトヘイトは終了しますよね。
それはわりと最近のことですよね。
それでその後第1回の選挙で
大統領になったのがマンデラ氏。
そのくらいのことしか知らないんです。
イアンさんはアパルトヘイトの
政策が国際的な非難を浴び、
国内でも反対運動が活発になっている渦中で
青春時代を送ったんでしょう。
彼は大学時代に反政府運動に参加したって
プロフィールに書いてありますよね。
それで、卒業後2年間の徴兵を宣告され、
それを拒否してオランダに行ったんですね。
それが1983年。だいたい19才のころ。
それでオランダで
映画を志して映画の学校で勉強して、
映画を撮り始める。
紹介をかねて長々と喋っちゃいましたけど、
ツバキさんが接したイアン・ケルコフは
どんな感じだったんですか?」 |
縄 |
「イアンは最近マリファナをやめたらしいの。
『僕は吸いすぎていた』とか言って。
でも私が知り合った頃は、
のべつまくなしマリファナでイッちゃってた。
その南アでの話になったこともあるけど、
イアンはパフォーマンスをやったらしい。
頭にイバラの冠をのせて
キリストみたいになって、
そのイバラに花火を点けたんだって」 |
私 |
「危ないじゃないですか」 |
縄 |
「うん。
『僕がキリストになって、
花火を点けて』て言ってた。
『髪が燃えちゃったんだけど、
ずっと風呂に入ってなかったから、
髪がバンバン燃えちゃって、
ひどいことになっちゃって、
頭蓋骨までやけどが達しちゃって』って」
|
私 |
「あっちゃ〜」
|
縄 |
「『それで入院しちゃって』って言うの。
『頭が痛かったんだけど、痛くても俺は
病院に行かなかったんだ!』だって(笑)」
|
私 |
「すぐには行かなかったってことですね?」 |
縄 |
「そう。だから
『なんで行かなかったのよ?』
って私は聞いたの。
そしたら『行きたくなかったんだ。
行く必要がないと思ったんだよ俺は』って言うの」
|
私 |
「行ったほうがいいのにねえ」 |
縄 |
「『でも倒れちゃって』って(笑)
それで病院に連れて行かれたらしい。
『だから頭に怪我をした時は、
病院に行ったほうがいいよ』だって(笑)
てめえに言われたかねえよっ!
って思ったよ(笑)」 |
私 |
「はぁ〜。なんなんでしょうね。
そうとうなガンコ者だなあ。
しかもマリファナを
ぷかちょと吸いながら話してるから、
なんか支離滅裂ですね。
あと、どんな話をしたんです?」 |
縄 |
「なんかね。哲学的にものを考える人なの。
それがなんていうか、黒い哲学なんだよ」 |
私 |
「黒い哲学。どういうもんなんでしょうね?
SMみたいなことと関係ある?」 |
縄 |
「うん。彼にはSMがすごく新鮮だったらしい。
イアンはSMの作品をいっぱい撮ってて、
それがオシャレでかっこいいんだ!
カメラワークがずっと最初の頃から良くて」 |
私 |
「撮影してるとこも見たんですか?」 |
縄 |
「私も出演しちゃったんだ」 |
私 |
「え? ツバキさん、
イアン・ケルコフの映画に
出てるんですか?」 |
縄 |
「うん。イアンはカメラを持つと、
けもののように素早く動くよ(笑)
ここにいたかと思ったら
サッと向こうに行って」 |
私 |
「ましら(猿)のような動きってやつですね。
で、ツバキさんはどういう作品に出たんですか?」 |
縄 |
「なんかニーチェが現代にいたら?
みたいな話らしい。
ニーチェ、オナニーして目覚める。
マザコン脱出! みたいなの(笑)」 |
私 |
「なんすか、それ?」 |
縄 |
「ノイ・バウンテンの
ボーカルがナレーションをやってて。
なんか女の子がいっぱい出てくるの。
イアンは普通は拾わないようなところも撮るの。
私はお縄パフォーマンスを撮られたんだけど、
縄を直してるようなところまでずっと撮ってた。
ストップ、って言ったのに」 |
私 |
「ほぉ〜!普通拾わないとこも拾うと」 |
縄 |
「彼は編集命だからね。
そうやって撮って、今度は篭って編集するの」 |
私 |
「やらかすところと篭るところ。
映画監督の資質は持って生まれたみたいですね」 |