いまも本屋さんに並んでいる、
見なれた文字。
「あっ!これ、おぼえてる」という、
なつかしい文字。
日常の、意識しないところで目にする「堀内さん」。
その最たるものが、これらの雑誌の表紙タイトル文字、
つまり「ロゴ」かもしれません。
それぞれの雑誌の個性がつたわってくる
印象的なロゴがうまれたのは、
エディトリアルデザイナーとして、
雑誌のなかみ、性質をよく知っている
堀内さんがてがけたからこそなのでしょう。
ロゴをデザインするとき、
堀内さんは読者層の分析などはしなかったそうです。
むしろ雑誌の質とかコンセプトから入って、
今までになかったもの、
飛びついて読みたくなるようなものを
作ろうと言う感じですね。
(『雑誌づくりの決定的瞬間 堀内誠一の仕事』より)
そのとおり、飛びついて読んだ人が、たくさんいました。
「いま読みたいのは、この雑誌だ」と
ひとめでわからせてくれる、
親近感とインパクトで視線を止まらせるロゴ。
シティ・ボーイのための雑誌『POPEYE』の、
かわいい妹、というコンセプトで創刊されたのが
『Olive』です。
“Olive”の「i」の頭の点が丸(○)になっているのは、
フランスの女の子が書いた文字がヒントだったそうです。
澁澤龍彦さんが責任編集をした
『血と薔薇』(1968~69)は、
エロティシズムの本質をとらえ、反響をよんだ雑誌です。
堀内さんと澁澤さんは、生涯の友人といえる仲。
編集美術を担当した堀内さんがつくった
ゴージャスにしてミステリアスなロゴが、
個性的な誌面を連想させます。
『いりふね・でふね』は、1970年代、
パリに住む日本人のためにパリで発行された
月刊ミニコミ誌。
シンプルなロゴは親しみやすく、
てづくり感がつたわってきます。
いまでこそロゴづくりは
コンピュータを使ってする仕事になりましたが、
当時はもちろん手書き。
そして、デザインするときには
毎号、こんなふうに「指定紙」をつくりました。
上の画像はぜんぶ、当時の堀内さんの仕事です。
同じロゴでも、デザインによって
またちがった雰囲気や個性がうまれます。
(だから、いまでも、使われているんですね。)
タイトルロゴというのは、冷たいのはダメだし、
お高くとまってるのもダメで、
やはり誰でも真似て書けると言うのが
いいんじゃないですか?
特徴があって、そこだけとにかく
ちゃんと書けば似るというのが。
(『雑誌づくりの決定的瞬間 堀内誠一の仕事』より)
似たものができるかどうかは別として、
当時、「書いた、書いた!」というかた、
あんがいいらっしゃるんじゃないでしょうか。
ぼく(武井)もそのひとりです。
マンガを書き写すのと同じように、
いろんな雑誌のロゴを写して書きました。
そんなチャーミングなロゴを、
堀内さんはたくさんつくってくれたんだなぁ。
そうそう、資料のなかにこんな絵がありました。
どうやら小学生時代に描いた落書き。
お母さんがスクラップ帖にまとめていたものが
残っていたんです。
この「ドウヤウ オ正月」という文字、
ちゃんとタイトルロゴになってる‥‥!
そして、ロゴと絵と文が
「デザイン」されているー!!!
‥‥かなわないなぁ。
かなわないと言えば、さきほどお見せした
『Olive』創刊号や第2号の表紙ですが、
イラストに描かれている女の子は、
アメリカのマンガ「ポパイ」に出てくる
ポパイのガールフレンドのオリーブ・オイルです。
(ちなみにブルータス<ブルート>は、ライバル関係です。)
このイラストも、じつは堀内さんの手によるものです。
そうなんです、描けちゃうんです、堀内さんは!
まるで作者(エルジー・クリスラー・シーガー)が
のりうつったかのよう。
このあたりのことはいずれ「挿絵の堀内さん」で
お伝えしたいと思っています。
また、ほぼ日から大発見を頂いてしまった…
「ぐるんぱのようちえん」
「おそうじをおぼえたがらないリスのゲルランゲ」
「くるまはいくつ」
「たろうのおでかけ」
「こすずめのぼうけん」
ああ、大好きでたくさん読んで、
コドモたちにも幾度も読み聞かせた本が。
ぐるんぱが靴屋さんやお皿やさんで働く絵が
とても好きなのですが、
本当に取材に赴かれたのも、
リスを飼って、ゲルランゲの絵を描かれたのも、
今知って、「なぁるほどー!」と
膝を叩いております。
ああ、早く仕事を終えて、帰って読みたい。
嬉しいです。ありがとうございます。
(Aさん)
協力 堀内路子 堀内花子 堀内紅子
取材 ほぼ日刊イトイ新聞+武田景