YAMADA
カンバセイション・ピース。
保坂和志さんの、小説を書くという冒険。

第14回「散文と韻文」

 ※このページをお読みの方に、ささやかなお知らせ。
  保坂さんが最高傑作かもしれないとおっしゃっている、
  7月末発売の『カンバセイション・ピース』を、
  保坂和志原稿用紙&手紙つきで、特別に300冊のみ、
  「ほぼ日」でミニ販売をする予定なんです。
  今後、この対談はさらにたのしくなり、なおかつ、
  小説を書くことについての保坂さんのインタビューが
  後日連載の予定ですので、期待をしていてくださいね!


糸井 保坂さんが、
詩に行かないのはどうしてなんですか?
保坂 やっぱり、韻文と散文の違いなんです。
糸井 体質ですか?
保坂 体質なんでしょうね。
小説が、ぼくにとっては、いちばん、
いろいろ入れられる気がするっていうのと、
詩は、かたちの上でのしばりが、
多すぎるような気がするんです。
糸井 谷川俊太郎さんと話すと、
逆に、散文を書くことについて
「とんでもない!」って言うんですよ。
散文を長く書くなんて、信じられないと。

保坂さんの韻文嫌いと、
谷川さんの散文嫌いは、
根っこのところではおんなじだと思うんです。

「したくないことを
 しなきゃいけない時間がイヤ」
と。

ぼくなんかは、谷川さんの気持ちが
とてもよくわかるんだけど、
逆に、村上春樹さんは、昔、
「いや、いっぱい書くのはラクだよ」
って言ってたんですよね。

やっぱり、それは、おたがい、
「それが好きな人」が書けばいいんだって、
ぼくは感じたんです。

保坂さんも、苦しさも含めて、
自分に合った方法を選んでるんだと思う。
保坂 ある意味ではそうですね。
ぼく、もともと、詩に親しみがないですからね。
文学少年じゃないですから。
ましてや、短歌なんて、詠んだこともない。
俳句は、作ったことを覚えてるんです。
自分で詠んだ俳句というのが、中学2年ぐらいの、
「名月の 月の光で 雪景色」
という……。
糸井 もう、ふざけてるね。
保坂 (笑)ぼくは自分では、
「なんてイイ句なんだ!」
って思ったんですけどねぇ。

糸井 (笑)
保坂 月が煌々と夜中に出ていると、
雪景色に見えるんですよ。
糸井 もう、今の説明はすでに小説ですね(笑)。
保坂 (笑)
糸井 韻文のよさを無視してますよね。
保坂 (笑)
糸井 韻文が飛躍しただけですよね。
……体質という言葉でしか言えないね。
保坂 うん。
あと1個はね。大学1年の時に、
「ふるさとをもとめてみらいをさまよう」
糸井 (笑)エッセイだよ。
それ、エッセイ。
ほんとだ……向いてない(笑)。
保坂 作ったのは、その2つだけなんですよ。
糸井 しかも、覚えてるってことは、
自分でも「なかなかいいな」って……?
保坂 うん。(笑)
糸井 (笑)不思議だなぁ、
その、俳句のセンスのなさは……。

サッカー選手と水泳選手みたいなものかな。

ただ、散文書く時も、
ここの文字を、ちょっと変えても
自分が気づく、みたいな文章かいてますよね?
保坂 いや、そうでもないですよ。
そこまでは、デリケートじゃない。
テンポ感が、
「あれ、おかしいな?」
って思うことはありますけどね。
糸井 でも、その同じ人の、
俳句と称するものは……。
アナーキーでふざけたもので。
保坂 (笑)「称する」って。
 
(つづきます!)

2003-07-14-MON

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