YAMADA
カンバセイション・ピース。
保坂和志さんの、小説を書くという冒険。

第16回
「ベイスターズファンの神」

糸井 やっぱり、
横浜ベイスターズのキーは、佐伯なんだ。

ぼくは、ジャイアンツファンとして
横浜戦を見てる時って、
佐伯がいないことについては、
「あ、いない理由が、
 オレの見てない間に起こったんだな」
と思うんですよ。
保坂 (笑)
糸井 で、ベンチにいるのが
テレビカメラに映っていたりすると、
「アウトになったりする時に、
 出てきてくれるといいのになぁ」
とか、思うんです。

出てくると、
「こういうときに、
 打っちゃうことって、あるんだよなぁ」
って、心配なんです。
いちいち、佐伯のことを考えている。

昔は、そういう選手が、
ベイスターズには、いっぱいいて。
盛田幸妃の登場なんて、たまんなかったですよ。
保坂 あぁ。
糸井 盛田幸妃が8回なんかに投げていると、
ほんとはどういうヤツか知らないけど、
巨人側から見ると、
「完成されたヤなヤツ」だったんですよ。
保坂 (笑)
糸井 その完成度は、彼の日常生活と
ぜんぜん関係なく、完璧だったんです。
で、敵方として、そう見てるってことは、
実は盛田幸妃は好きな選手なんです。
「よわったもんだなぁ」と思いながら
相手側の選手を見ているのは、おもしろい。

今、ベイスターズファンの気持ちが、
4番打者と佐伯との比較で、
よーく、わかったよ。

佐伯の話のついでに、
保坂さん、ローズって選手はどう?
保坂 (乗りだす)
いや、ローズはさぁ……。
糸井 神でしょ?
保坂 うん。
糸井 やっぱり!
保坂 だって、この小説は、
ローズ引退の話なんですよ。
糸井 へぇ、そうなんですか。
保坂 ゲラ、持ってきたんですけど。
ほら、ここ、ここ。
糸井 おぉー。
ポチーンと針で穴を開けたみたいに、
光が入ってきますね。
強いねぇ、この「ローズ」という文字が!



保坂さん、こういうことをやりたいんだよね。
うぅ、たまんねえや、これは。
俺も、野球に関しては、いいところついてるね。
……ローズって、ものすごいですよね。
保坂 ローズはね、あの人、
契約金が3億だ5億だでモメてたでしょ?
横浜ファンが、ひとり1万円ずつ出しゃいいじゃん。
糸井 それくらいの人ですよ。
保坂 それでも、充分、まかなえるじゃん。
糸井 よその球団に行くって、
1回、決まった時は、どう思いましたか?
保坂 大洋球団からつづいてる、
ファン不在の体質だけを責めてましたね。
ローズは関係ない。
糸井 キレイですねぇ。
保坂 ロッテに決まった時は、
ともだちみんなで、
「ロッテ戦いかなきゃな」って言ってた。
糸井 それはもう、
活躍するっていう前提で
見ていましたか?
保坂 それは、わかんなかったけど。
糸井 ぼくは、
ローズの動きを、
ベイスターズファンが、
どう見てるのかなあって、
それをちょっと気にしてましたね。
保坂 あんまり、ひさんな姿は、
してもらいたくないけど。
糸井 ローズってすごいよね。
あれ、野球がはじまる前に、
もう1回、やめたんだもんね。
あそこも、「神」ならでは、だよ。
保坂 ぼく、その前の
ブラッグスもすごく好きで。
糸井 ブラッグスも、おもしろかった。
保坂 ブラッグスなんて、おわりのころ、
特に最後の1年なんて、
打率がずいぶん下がっちゃったでしょう?
あれでも、ずーっといてほしかった。
糸井 存在感は、あったよね。
 
(つづきます!)

2003-07-16-WED

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