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お久しぶりです!
走るのに絶好の季節がいまですねー。
お二人とも走ってますか?
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ぼくは食べて痩せるほうで手一杯。
でもジムを週2回にしたのと、
トレーナーについてもらって、
ヨガ系のストレッチを始めたよ。
あと「トレッドミルで逆走トレーニング」
っていうのをやってみたよ。
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それ話が長そうなので、
流していいですか?
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(気にせず)ハーネスをつけて
ちょっと恥ずかしい格好で吊り下げられてね、
傾斜がついてぐいんぐいん進む
トレッドミル(ランニングマシン)に
後ろ向きにとびのって、後ろに走るんだよ。
怖くて面白いよ!
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どうも武井さんはエンターテインメントを
スポーツにもとめすぎるきらいがありますね。
べっかむ3はどうです?
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うーん、こどもとかけっこかなあ。
すっかりあたたかくなったから
やらなきゃいけないなあって思いつつ。
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あたたかくなったって、
もうすぐ夏ですよ‥‥。
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(あえて話題をかえて)
そんなことよりさ、にしもっちゃん、
ロッテルダム・マラソン走ったんでしょ。
その報告をきちんとしなくちゃ!
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そうでした、そうでした。
わかってはいたんですが、
ロッテルダム・マラソンが
あまりにも素晴らしすぎましてね。
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(ひそひそ)
そのわりに渡欧直前はブルーだったよね。
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(ひそひそ)
旅、たのしみだねって言ったら
「オレはみなさんが思うような
旅の楽しみはどうでもいいんス!
もうスリに遭うくらいが
話題が出来てちょうどいいんです」
とか、わけのわからないモードに
入っちゃってたよね。
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戻ってきてしばらくも
やけにキゲンが悪かったよね。
「あー、うー」しか言わないしね。
大平正芳か。
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大平元首相のモノマネって誰もわかりませんよ!
そうじゃないんです。
ペラペラ喋るのももったいなくて、
余韻を1ヶ月ほど噛み締めておりました。
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ふーん。なんかそういうところが妙な男気だよね。
「聞いて、聞いて」じゃないんだね。
ともあれ完走したんだよね?
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3時間16分40秒で無事完走しました。
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3時間16分40秒‥‥?
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3時間16分40秒‥‥!
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今回は3時間15分を切ることを
目指していたんだよね?
記録更新はならず!! 惜しい!
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ええ。そこは無念です。
前にも言いましたが、
平坦なコースのロッテルダムマラソンは
世界でも有名な高速コース。
最低でも3時間15分以内、
3時間ひと桁を狙って練習してましたからね。
特に3月に入ってからはかなり追い込みましたし、
2月に買ったデニムが
4月にはゆるゆるになっていたくらい、
体重もこの10年で一番軽くなっていたんですけどね。
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そうそう、身体もペランペランになってたもんね。
うすっ! って思ってた。
記録が出なかったのは、そのせい?
トラブルでもあったの?
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帰国して判明したんですが、
どうやら「ランナー貧血」
ってやつになっていたんです。
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ランナー貧血? それは初めて聞く言葉だ。
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レース直前、ぼくがかなり追い込んだ
練習をしてたのは知ってるでしょう?
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うん。70歳のミック・ジャガーが
毎日13km走っているのに対抗して、
それまで10kmくらいだった朝ランを
15kmに伸ばしたんだよね。
ミックもにしもっちゃんもよく走るなあと思ってたよ。
ジャガー西本って呼びたいくらいだったよ。
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それじゃ女子プロレスみたいです。
ともあれ追い込んだだけあって身体もキレてきて
さあ、いよいよ仕上げだ!
となるレース2週間前に入ったところで、
突然、身体が動かなくなったんです。
体重は軽いはずなのに、
身体は重くてスピードが出なくて
ジョギングのスピードが精一杯。
最初は「疲れがたまっているのかな?」
と、思って、距離はそのままにして
スピードを落としてみたんですが
なかなか調子があがらなかった。
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あ、渡欧直前のゴキゲン斜めは、そのせい!
帰国直後の無口も、そのせい!
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帰国して血液検査をしてわかったんですが
赤血球がかなり少なくなっていたんですね。
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どうして毎日運動しているのに
貧血になっちゃうわけ?
もっと健康になりそうなもんなのに。
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ランニングって着地するたびに
足裏で赤血球が潰れているっていうことは
ご存知でしたか?
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ええ。そうなの?!
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わあぁ。怖い。
だから走るのは危ないんだよ。
くわばら、くわばら。
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武井さんは、どんだけ赤血球が潰れても
それを補うくらい、
ガンガン食べているので問題ないです。
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うん。レバー好きだし、
こないだも、ひじきを山盛り作ったよ。
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酸素を運ぶ役目である
赤血球が少なくなるということは、
有酸素運動には致命的なことなんですよ。
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なるほど、スピードが上がらなかったのは
貧血でうまく酸素が身体に
行き渡らなかったからなのか。
でもさ、5kmとか10kmならまだしも、
そんな身体でよくフルマラソンを走れたね。
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実は25km過ぎたあたりで、
身体が動かなくなって
リタイヤしようかなと思ったんです。
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うわ、それは悔しい!
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ロッテルダム・マラソンじゃなければ
完走できなかったでしょう。
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昨年、申し込んだときは
一人でオランダに行って、
一人で走る予定だったんですが、
「西本、ロッテルダム走るってよ」
という話がランナー友達の間で広まって。
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「桐島、部活やめるってよ」みたいだ。
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おれ、食べすぎだってよ。
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(無視して)シネスイッチ銀座の
吉澤さんから連絡がきたんです。
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ああ、懐かしい、
シネスイッチの吉澤さん。
かなり昔の「ほぼ日事件簿」に載ってる
あの腸内洗浄の人だ!
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わざわざリンクを張ることもないと思う。
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そう。あのひとです!
あの当時はお互い不健康を
絵に書いたような生活をしてんですが、
いまでは吉澤さんも
フルマラソンを3時間5分で
完走するランナーなんですよ。
その吉澤さんから
「今度、ロッテルダムマラソンを題材にした
『人生はマラソンだ』という作品を
シネスイッチ銀座でやるから
試写会に来ない?」と。
「ロッテルダムを走る予習にもなるし、
なによりも、西本さんなら、ランナーとして
この映画に共感するはず」と。
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でもさ、にしもっちゃんのツボは
独自路線だからねえ。
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確かに、試写会場でも多くの人が
エンディングやゴールシーンで
涙を流していたんですが、
ぼくが泣いたシーンは
サッカーファンには有名な
「You’ll never walk alone」という
サポーターズソングを
リータワーズさんというオランダ人歌手が
ロッテルダム・マラソンのスタート前に歌うシーン。
感動ポイントがおもいっきりズレてました。
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ほら、やっぱり。
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サッカー好きな人だと
たまらないシーンなんですけどね。
この映像を見てくださいよ。
セルティックとリバプールのサポーターと
一緒に歌っているのがリータワーズさんです。
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すごく盛り上がるのはわかったけど、
ノリづらい曲だね‥‥。
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ロッテルダム・マラソンのスタートは
リータワーズさんと一緒に
ランナーが大合唱してから
スタートするのが「お約束」なんです。
今年のスタートはこんな感じで。
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本物が歌うんだ。それはすごいね!
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オランダの松崎しげるみたいな?
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オランダのグッチ裕三みたいな?
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せめてオランダの布施明と言ってください‥‥。
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映画の話に戻しますけど、
この『人生はマラソンだ』という映画は
ロッテルダムの自動車工場が舞台。
昼から酒を飲みながら仕事を全くせずに
カードゲームに興じるおじさんたちが、
借金まみれの自動車工場を担保に
「フルマラソンを全員完走できから、
借金をチャラにしてもらう」
という賭けにでるんです。
賭けに勝たないと生活もままならないというわけで
全く走らなかった中年男性たちが
一念発起してロッテルダムマラソンを
走るというストーリー。
本番のレース中に撮影したというだけあって
スタートもコースもすべて本物の
ロッテルダムマラソンなんですよ。 |
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まさに中年陸上部的映画じゃない?
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設定だけきくと
おもしろそうじゃん!
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うん。実際、おもしろいんです。
試写会場には「ほぼ日ランナー手帳」を
一緒に作った『NumberDo』の涌井さんもいてね。
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おおっ! 涌井さん。
京大陸上部出身、まさに文武両道を
絵に書いたような男。
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その涌井さんから
「西本さん、ロッテルダム・マラソン走るんですよね。
『人生はマラソンだ』を紙面でも紹介しようと思って
NumberDoでもロッテルダムを取材することになりました。
ぼくも走りますし、作家の角田光代さんも走ります。
記事にランナー目線をいれたいので
取材にも同行しませんか?」
というお誘いがありましてね。 |
(文武両道を絵に書いたような男こと、涌井さん) |
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直木賞作家の角田光代さんと一緒だったの?!
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ええ。他には箱根駅伝ファンには
たまらない徳本一善選手とかも。
吉澤さんも映画の宣伝も兼ねて走ることになり、
現地で合流したら、すごい大所帯に(笑)。
武井さんから
「すっごく不味いよ」と言われていたオランダのご飯も、
ぼくにはあっていたようで問題なかったですし。 |
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あれ食べた? 生ニシンの酢漬け。
あれ、どこがうまいんだ?
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基本的にはキッチン付きのアパートで自炊してたので
ニシンをマーケットで買ってきて、
わさび醤油で食べました。
うまかったですよ(笑)。
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そうか。わさびつければいいんだ。
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レース前日はみんなでご飯を作って
カーボローディングもしましたしね。
外食するより、市場やスーパーに買い出しに行って
食事を作ったほうが、安上がりだし、楽しかったです。
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ぼくのすすめる「自炊旅」!
そうなんだよ、食材は悪くないから、
じぶんでつくればいいんだよ。
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なんか充実した旅だなあ。いいなあ。
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ええ。おそらくぼくほど
充実した初ロッテルダムマラソンを迎えた人は
そうそういないと思います(笑)!
NumberDoの取材に同行して
いろんな視点でロッテルダム・マラソンの
お話を聞けましたし。
まずコース攻略については
「おRunだぁず」という
在蘭邦人のランニングチームのかたに
しっかりうかがいました。
ロッテルダム・マラソンはこんな大会です! |
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至れりつくせりの情報だけど、
なんで大阪弁なの?
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お話をうかがった人がそういう人だったんです(笑)。
この方、ヨーロッパでマラソンを走るために、
土日がしっかり休める仕事に転職したらしいんですよ。
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この人そのものがアツいね(笑)。
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そのほかにも
ロッテルダム・マラソンの総責任者である、
事務局長のマリオさんや
『人生はマラソンだ』の脚本を書き、
主演もされているマルティンさんにも
お話をうかがいました。
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(事務局長のマリオさん) |
(『人生はマラソンだ』の脚本&主演のマルティンさん) |
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そこまでくると
遊びの域を超えてるじゃん。
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ま、涌井さんにくっついて
話を聞いてただけなんですけどね。
ふたりの話によると
ロッテルダム・マラソンには
第二次世界大戦で街のすべてが破壊されたこと、
強烈なアムステルダムへの対抗心、
が背景にあるようなんですね。
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ああ、そうだよねえ。
オランダの首都アムステルダムと違って
第二の都市ロッテルダムは
古い町並みがなくて
近代的な建物ばかりなんだよね。
建築に興味がある人には
たまらない街でもあるけど。
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(駅の形も独特で…。) |
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第二次世界大戦で街がすべて破壊された
ロッテルダムの人たちには
「ゼロからつくり上げる」という精神が
生まれたんだそうです。
だから、このロッテルダムマラソンも
市民にとっては、
単なるマラソンを超えた存在なんだと。
走る人だけでなく、走らない人も、応援することで
このイベントを作ることに参加しているんだと。
それがアツイ応援につながっているんですね。
首都アムステルダムにも
アムステルダムマラソンがあるらしいんですが、
ロッテルダムのように街が一体となったような
盛り上がりには欠けるらしいんです。
映画でも描かれているんですが、
ロッテルダムの人はアムステルダムが嫌いらしいですよ。
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そうか、首都でもあり、文化の中心である
アムステルダムのことをロッテルダムの人は
「けっ!」っていう目で見てるんだね。
大阪の人からみた東京みたいな感じ?
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ああ、その感じかも。
だから、「人生がマラソンだ」が公開されたときは
「よくぞわが町、ロッテルダムをテーマにしてくれた!」
と、ロッテルダムでは
子供からお年寄りまで大反響だったんだそうですよ。
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でもさ、にしもっちゃんも、
いろんなレースに出たり、見たりしてきたわけじゃない。
ロッテルダムは、それでも特別なの?
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道幅の狭いコースにびっちり人がいて
選手に手が届きそうなくらいの距離で
「GO! GO! GO! GO!」と声援がとぶんです。
まるでツール・ド・フランスのようでしたよ。
長い冬が終わり、
春の訪れをつげるイベントだからか、
この日は街が爆発しているんですよ。
ロッテルダムテクノの発祥地だけあって
勝手に大爆音でDJをしているブースが
コースの至るところにあるし。
ロッテルダム・マラソンは平坦なコースのため、
記録がでやすいレースと言われてますが
本当の要因はこの応援じゃないかと思うんです。
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(つづきます) |