その1929

すべての子どもたちは
美しい名前を持っています。
ひとりずつひとつ、かけがえのない名前を。
ところが、その燃える命ともいえる名前は
しばしばよその誰かによって
あっさりと、しかもやや滑稽な感じで
「まつがわれて」しまうのです。
そんなわけさ! 「名前の言いまつがい」特集!
あなたの名前はいかがですか?
どうぞ、最後までおたのしみください。

私の名前は「加奈子」です。
大学生のとき
アルバイト代をもらったお給料袋に
「○○加茶子様」と書かれていました。
調べてみると遡ること3ヶ月、
「加茶子」でした。
全然気づかなかった!
ぱっと見わからないよね。
(加奈子と加茶子)
小学生の頃、自宅の電話に出た私は
目を輝かせて父に電話を取り次ぎました。
カモシカさんから!」
父の友人の名は青鹿さんです。
(おとぎ話大好き)
友達の「我有(がう)」さんは、
銀行で、
われありさ〜ん」と呼ばれて、
「あ、はい」と当然のように対応してました。
いつも、読みまつがわれているんだろうな‥‥。
我有さんとは同じ会社の同期だったのですが、
新入社員歓迎会で酔っ払った社長から、
「ガウー!」とか言われて、
ちょっとかわいそうでした。
その会社は2年後に潰れましたけど。
(がうりん)
以前、啓子さんという方が
名前を説明する時、最後の手段で
「谷啓の『啓』」と説明したら
わかってもらえるとありましたが、
我が家もそうです。
ウチの父は「肇」という難しい漢字で、
説明する時非常に苦労します。
しかし「ハナ肇の『肇』です」と言うと、
ほぼ9割の確率でわかってもらえます。
そしてやっぱりウチもこれは最後の手段です。
(クレイジーキャッツ)
姉が結婚して間もない頃の話。
結婚して変わった姓は「吉川(きっかわ)」。
ある時、電話で相手の方に
姓の漢字を伝えようとしていました。
相手「お名前を教えていただけますか?」
姉 「きっかわ○○です」
相手「きっかわは菊川でよろしいですか?」
姉 「いえ、大吉の吉に3本線の川です」
相手「大吉の大に川ですか?」
姉 「え? いえ、大吉の吉のほうです」
相手「ああ! よしかわ(吉川)様ですね!」
姉 「いいえ、『きっかわ』! です」
どんだけ間違えるんですか‥‥。
(今は「吉川晃司の吉川」)
アメリカからの留学生が我が家に
ホームステイしていたころの話です。
当時高校生の私と彼女(留学生)が
駅で電車を待っていたとき、
私の中学の同級生二人とばったり会いました。
二人は彼女に英語で自己紹介。
それを聞いた彼女は戸惑っています。
私はそれを見て
「何で?」と思いましたが、気がつきました。
同級生二人の名前は「愛」と「優」。
英語での自己紹介が
「My name is I.(アイ)」
「My name is you.(ユウ)」
に聞こえてしまったんですね。
「私の名前は私です」
「私の名前はあなたです」
って言われても、それは戸惑います。
(味噌はドイツ語でも「miso」)
自分の名前を
「Eウスケ」
と書いてしまったことがあります。
「あれ、なんか違うなぁ」とは思ったんですが、
しばらく気づかなかったおバカな僕です。
(ヨウスケ)
名前にかぎらずいろんな「言いまつがい」、
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それでは、また明日、お会いしましょう。

イラスト:しりあがり寿


2009-05-27-WED
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© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN