- 今村
- ぼくはよく卒業生に、
「偉くなるか、尊敬されるか、金を儲けるか、
どれかになるように」
と言うようにしています(笑)。
全部にならなくていいんです。どれかでいい。
「それでいつか未来に、
大学のために何かしてほしい」
と伝えます。
お金のある者は寄付する、
地位のある者はそれを使う(笑)、
尊敬される者には大学のブランドを上げてもらう。
笑い話のようですが、
少しずつ、叶いつつあるのかなぁ、と。
これはほんとうにありがたいことだと思います。
APUという大学は、大分県と別府市の
大きな支援で生まれた大学です。
そして、官界や産業界にも助けていただいた。
そんなことから、
夢みたいな学校をつくったのだから、
将来は、国の内外に巣立っていった卒業生たちに
APUを支えてほしいと思っているんです。
日本の私学の財政の運営はなかなか大変です。
収入のほとんどを学費に依存しなければならない。
国立は国から援助が多く、
学費比率は半分かそれ以下です。
私学は国からの援助は、1割程度で、
あとはほとんど学費に依存しています。
APUも大変で、今後も、
その構造を続けるのがいいとは思わない。
国内外からの学生だけでなく教員も、
世界の大学と競いながら募集をしていて、
それらの費用も経常費から支出しなけばいけない。
将来は、アメリカの大学のように
潤沢な基金をつくって、
それを運用していくことにより、
学費への依存を下げていきたいと思います。
APUはそれにチャレンジしたいし、
できると思います。
そのために卒業生たちには、
母校にどんどん帰ってきてほしいのです。
- ──
- それは、ライくんたちが言う
恩返しの精神ですね(笑)。
- 今村
- そうですね。確かにそうだ(笑)。
- ──
- 考えてみれば、地元や大学への恩返しは、
学生にとっては
働くパワーになるのかもしれないですね。
いまの学生の中には
自分のやりたいことがわからないと
迷っている人もいると思うのですが、
わからなくてもいいから、
飛び込んでみるのもいいかもしれません。
- 今村
- 均質な集団にいて、
たとえばクラスが全員日本人で東京人で、
成績が同じくらいで──、そういう中で、
グローバル化だ! がんばれ! と、
いくら叱咤激励しても難しいんじゃないかな。
- ──
- 「温泉の朴くんの会話」は
生まれないですよね。
- 今村
- うん。多様性というのは大事だと思います。
たとえばコミュニティも
多様化したほうがいいですね。
もしかしたら、東京に生まれて
ずっと東京で住んでいる人って、
多いのではないですか。
- ──
- そうかもしれませんね。
東京に生まれると、
東京を離れる理由がなかなかありません。
- 今村
- 地方創生という言葉があるけど、
まさにいま、東京にとどまらず、
地方から何を発信するかを考えるほうが
おもしろいと思います。
APUのキャンパスの立地も、当時はものすごく
ハンディキャップだと思ってました。
別府というだけでも遠いし、
しかも、キャンパス校舎は山の上にあります。
- ──
- APUは天空の城みたいな感じですね。
- 今村
- 志願者がなかなか集まらないときは、
「こういうところだから無理なんだ」
ということをずっと理由にしてました。
だけど、いまはもう「あそこでよかった」と
心から思います。
まぁ、みなさん、就職したら
だいたいビルで働くじゃないですか。
だから大学ぐらいはああいう
すばらしい景色の中で過ごすのはいいと思うんですよ。
- ──
- 建学されて、10年経つんですが、
学生さんが目指すものが
変わってきてるという実感は、ありますか?
- 今村
- うーん‥‥。
- ──
- 1期生の国際学生さんたちは荒々しく
いろんな人がいて‥‥。
- 今村
- いまの学生はおとなしくなった、とよく言われますが、
そういうところもあるかもしれません。
ぼくは、卒業生には
中小企業でも、もっと働いてほしいんです。
中小企業には、うちの学生たちを
切実に必要としてるところがたくさんあります。
でも、これは仕方のないことだけど、
学生たちはどうしても
東京の大企業をめざしますよね。
- ──
- 今村さんは、なぜ学生さん生徒たちに
中小企業で働いてほしいと思われるんですか?
- 今村
- 将来、起業する学生が多いからです。
たとえばメガバンクで働いて
企業のありさまがわかるなんて、10年じゃ無理です。
そこでずっと働くならいいし、
銀行や金融にずっと関わっていたいなら、
それは経験になるでしょう。
しかし、起業しようと思っている学生は
スパンが短いのです。
10年もかけられないかもしれない。
一方、中小企業では、採用されてすぐに、
仕事をどんどん任され、
重い責任を持たされます。
そうすれば、会社全体が早く、よく見える。
日本の先端技術も、実は中小企業の中にもあります。
起業のテーマが詰まっている。
だからぼくは中小企業を勧めたいのです。
昨年も、ある地方の中小企業の方が来られて、
「社員が海外に行かないので
社長が飛び回ってて大変だ」
とおっしゃっていたんです。
「インドに進出したいんだけど、
インドの学生、来てくれるかな」
とおっしゃって、これは良縁がありまして
インド人の大学院生がその会社に就職しました。
すごく喜ばれましたし、
当人もめちゃくちゃ喜んでいました。
(つづきます)
2015-02-19-THU