- ほぼ日
- 遠いカトマンズの学校に入ったのは、
4年生ですから、9歳か10歳の頃だったんですね。
- ジョシ
- はい、そうです。
- ライ
- そこから家族と離れて
ぼくたちはひじょうに勉強しました。
学校から外には出ません。
家には年に2回か1回だけ帰れました。
その学校には、小学4年生から高校2年生までの
生徒が通います。
高校を卒業するまで、学費も、
食べものも服も全部、
国に出してもらいました。
- ほぼ日
- 年に1度の里帰りのお金ももらえるんですか?
- ライ
- それも出してもらえました。
合格してから、ずっと、国に
めんどうをみてもらって
ここまで勉強をすることができました。
だから私たちはいま、
国に恩返しという理念を持って、やっています。
- ほぼ日
- そういうチャンスをおふたりに
国が与えてくれた、ということになるんですね。
- ライ
- はい。
もし国がお金を出してくれてなかったら、
私たちもマレーシアやアラビアで
はたらいていた可能性が高いと思います。
これからは私たちは国に返さないといけない、
そう思いまして、考えていましたんですけれども、
どうやって返せばいいかわかりませんでした。
でも、日本に来て
いい教育をもらいました結果、
いい学校をつくれば、
子どもたちが私たちのように
はたらくためにではなく留学をしに
海外に行くことができるかもしれないと
思うようになりました。
そうして私たちは、学校を設立しました。
2011年のことです。
最初は村の方々と一緒にお金を集めました。
25万円ぐらいです。
そして、最初の校舎をつくりました。
村の方々のおかげで
土地も安く買うことができました。
- ほぼ日
- 資金は、日本で寄付を
集めたのではないんですか?
- ライ
- 最初は、寄付の制度も
まったくわかりませんでしたので
それはしませんでした。
学校を建てよう、と思いついたとき
お金がなくてもはじめよう、
それは何とかなるんじゃないかな、と
ぼくたちは思いました。
結局、自分たちがアルバイトしたポケットマネーと、
大学の先輩たちにお願いして
2000円、3000円ずつぐらい集めました。
それが10万円くらいになりました。
村の方々からも、ありがたいことに
15万円ぐらい集まりました。
そして、木と竹で学校をつくりました。
- ほぼ日
- 先生はどうしたんですか?
- ライ
- 先生は、最初はひとりだけお願いしました。
この学校が成功するとは
村の方々は誰も信じていませんでした。
でも、先生としてやってきた彼女は
これを成功させると思っていました。
まずは10人ほどの子どもたちが入学しましたが、
先生は最初の9か月間、
ボランティアで教えてくれました。
まわりの人たちにいろいろ文句を言われても、
彼女は続けてくれました。
- ジョシ
- その彼女も
「いろんな人にお世話になったから」
と言っていました。
- ライ
- その後、私たちは、この学校の中身とインフラを
徐々によくしていき、
ネパールに帰るときに日本人の友人を
いっしょに連れていって紹介したりしました。
そうしているうちに、村の人々からもゆっくりと
信頼をもらいはじめることができました。
いまは期待をもって、考えてくれています。
- ほぼ日
- これは、日本で言う学校法人など、
政府の教育のシステムに組み入れてやるための届け出や
法的な許可を出してやったことなんですか?
- ライ
- それが、最初はなかったんですよ。
- ほぼ日
- ああ、最初は塾のような学校だったんですね。
- ライ
- そうですね。
私たちは日本にいましたので、
その準備はできなかったんです。
- ほぼ日
- おふたりは当時大学生だったわけですものね。
すごい。
「とりあえずやっちゃおう」ということですね。
- ジョシ
- 現地の子どもたちが
英語で授業を受けられるようにしましょう、
という課題がすぐにあったから、
誰の言うことも聞かなかったです(笑)。
じゃ、スタートしよう! という感じで。
- ほぼ日
- 子どもたちは、
政府の学校には通っていなかったんですか。
- ライ
- 政府の学校に行っていました。
学校に行ったあとに、
私たちのその学校に通ったりしていました。
最初はほんとうに大変でした。
私たちは日本で学生をしていましたから、
現地に行こうとしてもなかなか行けませんでした。
ですから、いろんな方々にもお世話になりました。
学校の制度としては
いまでも未完成なままなんですけれども、
でも、ひとつだけ、ルールを守ろうと思いました。
それは、時間を徹底的に守ること。
それまで学校では、時間は誰も守らなかったから。
みんな勝手に来て勝手に帰る。
子どもから大統領まで、誰も時間を守らないんです。
私たちは、日本に来て、
時間を守ることの大切さがわかりました。
ですから、自分たちがつくった学校では、
先生と子どもたちが時間を
しっかり守ることがきまりです。
誰も時間を守らないところで、
私たちの学校の子どもたちだけが時間を守ったら、
それは奇跡ですから。
- ジョシ
- いま、そのことで
ぼくたちの学校は有名です。
(つづきます)
2015-02-04-WED