糸井 |
政府や都会の社長に、
お話しをされる機会も多いと思いますが、
みんな、どういう反応なんですか。 |
横石 |
「何言うてるんやろうな」と
いう顔をされるのがほとんどです。 |
糸井 |
モラルに聞こえちゃうのかな? |
横石 |
そうかもわからんね。
モラルではないんやけどね。
文化財が何だ、
地域おこしがどうだ、
ブランドをつくろう、
金儲けができるビジネスモデルを、とか
みんなが言うけど、それは前提。
ぼくは、「食えなきゃいかんのだ」という観点が
まずどっちかというと強いですね。 |
山田 |
事業を安定的に展開するための
技術とか、
そういうことでもあるんですね。 |
糸井 |
うん。それに、スタートラインがちがいますよね。
だって、仕事をしようと思って
「いろどり」は、はじめたわけだから。 |
横石 |
とにかく、ここに住む、
この人らに仕事がある、というのが
いちばん大事やと思たなあ。 |
糸井 |
横石さんは、おばあちゃんたちが一日中
だれかの悪口を言っているような暮らしというのが
ほんとは、腹が立って
しょうがなかったんじゃないでしょうか。 |
横石 |
そうです。
農業指導で町をまわっているときに、
縁側で嫁の悪口を言ってる人たちがいて、
お昼をすぎて、
もういっぺん同じ場所を通ったときも
まだしゃべってる。
何をあんなにしゃべってるんや!
すっごい、すっごい、
嫌だった。
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糸井 |
それが原点なんだ。 |
横石 |
なんでそんなこと言うんかな、と。 |
糸井 |
人間をこんなに
ダメにしたのは何なんだ、ということですよね。
怒りが原点にあるね。 |
横石 |
みんなが忙しいて
みんなが自分のやるべきことを思てたら、
そんなふうにはならないわね。 |
糸井 |
横石さんは、ほんとは短気なんでしょうね。 |
横石 |
負けず嫌いやね。
「このやろう!」と思たら、
なんとしてでもやってやろう、と
思いますね。
ぼくがおばあちゃんたちに書くファックスを
見てもろたらわかるけど、
気が入ってしもとんよな。
「行くぞ」「やるぞ」いうてね。
それが、この人ら、わかるんやね。 |
糸井 |
エモーションだよ、エモーション。
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山田 |
怒りのエモーションが
いちばん持続すると言いますからね。 |
糸井 |
うん。
怒りもそうかもしれないけど、
この場合は悲しみかもね。 |
山田 |
そうか。
悲しみは、変えたくなりますね。 |
糸井 |
そんなんアリかよ、っていう
思いですね。 |
横石 |
このファックスは、
こっちにおるときは毎日書きます。 |
山田 |
毎日。 |
糸井 |
「がっかりしたよ」とか
「これじゃだめだよ」とか
そういう言い方をされることはあるんですか? |
横石 |
ぜったいないです。
「ああ〜」といっしょに
言うことはあるけど。
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糸井 |
つまり、共感があるんですね。 |
横石 |
このへんは糸井さんと
似ているところがあると思うけど。 |
糸井 |
うん、似てるよ。
根っこの「怒り」な部分も、たぶん似てるよ。
このファックスは、横石さんが
ほんとうに思ってないと書けないものですね。 |
横石 |
みんな大笑いして見てくれます。
朝、起きたときに
あれせなあかん、これせなあかん、
というのが、最も大事なんです。
することがある、出番がある。
だから、80歳過ぎてても、
一日ずっと仕事ができるんです。
驚きですよ、一日中、仕事をしているんです。
年寄りは、やっぱり体のあちこちが痛いと思うよ。
ほなけど、あの人たちは痛くないんです。
休みの日が、いちばん痛いと言う(笑)。
人の気を育てるのが、いちばん大切なんです。
(つづきます!)
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