いろどり 稼ぐおばあちゃんたちの町。
14 体を使う人。

糸井 横石さんが、「栗よりも栗のイガがいけるな」
と思ったのは
何がきっかけだったんですか?
横石 使こてるのを見て。
山田 ああ、お料理屋さんで
実際に。

14 体を使う人。
横石 うん。これはもっと使いたい人が
いるやろな、と思て。
それに、料理人の方が、
採るのがたいへんやったと言うんです。
ですから、その方にぼくは
イガのまま採れる竹ばさみをつくってあげました。

何でも、現場に原点があるんですよ。
現場を見てるとそれがよくわかる。
向こうの人は、
逆にこっちの現場を知らないけん、
ぼくのほうが強い。
お互いの現場を見る
ということはすごく大切なんです。
糸井 「いろどり」は
ものすごく情報を公開してるけど、
横石さんの情報非公開ぶりは
もう日本有数ですね。
横石 ほんま。みんな、
「ようそこまで公開しますね」
「大丈夫ですか」と言うけど
大切なことはやっぱり
足と体で得たものしかないんです。

14 体を使う人。
糸井 オープンソースの時代なんだけど、
その一方で
特許に守られないクローズドな情報が
どれだけ体内に蓄積するかが
ほんとの仕事の芯に
なるものなんですね。
横石 すごい表現だね、それは。
でもね、こないだ糸井さんの事務所に
はじめて行かせてもらったんだけど、
すぐわかった。
社員の顔見たら、パッと
それはすべてわかったね。
糸井 おバカばっかり?

14 体を使う人。
横石 もう、わかりますね。
「なるほどな」と、すぐわかった。
体を使う、信用できる人、多いね。
糸井 そうですね。
結束できない子は、やっぱり困るんです。
何かあったら、その場はニコニコしていても
あとでしっかり一緒に闘える子が必要なんです。
横石 顔をパッと見ればわかります。
これはすごいメンバーやな、って。
動物的な勘が働く人が多いやろな。
独特の雰囲気があるし。
ちょうど別の、IT関連の会社に
行った帰りだったから、よけい
「これほど違うものか」とびっくりしたよ。
ああいう雰囲気が、いまの会社にないんですよ。

14 体を使う人。
糸井 「いろどり」のおばあちゃんたちみたいな顔が、
いまの世の中にないのと同じですね。
ぼくも、横石さんといっしょで、
絶望の末に「ほぼ日」ができたんですよ。
一同 (笑)

14 体を使う人。
横石 そうですね。
ああいう雰囲気がなければ、
ほぼ日刊イトイ新聞のようなものは
できないです。
だから、みんなが見る。人気がある。
わかります。
糸井 これだけ長いことやってて、
真似するところが
いっさい出てきてないんです。
真似してもしょうがないんだけど。
横石 ああいう集まりが、集まらないんですよ。
集めようと思ってもかなり難しい。
山田 そんな厳密なことはないんでしょうけど、
集まった結果は、
そういうことになっているのかもしれませんね。
立木 菖蒲さんが大判焼き(回転焼き)を
出してくれましたよ。
山田 おいしそうっすね。
糸井 オレは、半分でいいかな?
山田さん、半分こしようか。

14 体を使う人。
菖蒲 半分になんか、せんでええわよ。
一同 ははははは。

14 体を使う人。
山田 もちもちしてて、
おいしい。
横石 ここでみんなで
縁側で食べるからおいしいんです。
デスクでひとりで食べると思うと。
山田 たしかに。
糸井 見るためのものが、
人は欲しいんです。
夫婦で飯食うときに見るテレビもそう。
料亭も、風景があるところは高いんです。
ひとりで行ったら
カウンターに座りたいでしょ?
横石 そうやね。ひとりで行ったら
ぜんぜん旨くない。
カウンターに座ったときの味は10倍違います。
板さんのことばひとつ、
柿の葉いちまいで、
料理のおいしさが、
スーーーッと頭に入ってくる。
口に入れる前に、頭の中が
「うまいうまいうまい」となるんです。
不思議ですよ。

14 体を使う人。
山田 「いろどり」がぼくたちに必要な理由、
わかりますね。

(つづきます。次回は最終回ですよ)
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2006-10-26-THU

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