ジョージ いい? このフロアはもっとも危険なの。
絶対、必要というものじゃないのに、
見ると欲しくなるものばかり!



── わ、ハンガー?!

ジョージ そう、いきなり高級ハンガーよ!
ナカタハンガー。
昔、ゼニアさんがこちらの
ナカタハンガーだったの。
ジャケットに必ずつけてくださって。
その人に合わせて肩の厚みを変えてくれてね。
だからうちはたくさんありますっ。
‥って、やな言い方しちゃった!
いけ好かないやつだわー。

── こちらになにやら人間工学に基づいた
エルゴノミクス・デザイン的な
オフィスチェアがありますね。
いいなあ、こういうので仕事したら
効率があがりそうですね!



ジョージ かたちから入る子ねえ。
快適すぎてグウグウ寝ちゃったりしてね。

── 文房具もかっこいいですねえ。

ジョージ エルメスではないけれども
エルメス的なるものとか、
そういう上質なものの遺伝子を
受け継いだ感覚の製品が多いわね。
そしてここは、万年筆。
モンブランデュポンの超限定品であるとか、
もう、男子にはたまらない世界よ!
ステキだわー。
自分のサインって書いたことある?
芸能人っぽいやつ。
必要もないのに練習するんだけど、無理!
だいたい丸文字でジョージって書くけど、
そういう時はペンにこだわるしかないかな、
って思うのよ。羽根つきのペンで書くとかね。
ここにくれば見つかるかもしんない。





── サインはともかく、万年筆の需要は
今もしっかりあるってことですよね。

伊勢丹の人 はい、ご自分で育てるというタイプの商品は
たいへん需要がございますね。

ジョージ 女の人が靴を必死になって選んでいる時、
つきあうのが厭だったら、男はここに来い!
そうすればお互い楽しめるものね。
御覧なさい、ウイスキー樽で作られてるペンもある。
長い間使っていたテーブルの足で
作ってみませんか? って。





── 野球の折れたバットで
ボールペンを作ったりしますよね。
子どもが使ったランドセルを
10分の1に縮小するとか。

ジョージ そしてフロアを歩くとここに
ラルフ・ローレンがあるの。
ラルフ・ローレンのライフスタイルって憧れる?



── どうでしょう。好きな人は多いですよね。

ジョージ NYでね、
ラルフ・ローレンのスーツを着てると
広告代理店の人、
ブルックス・ブラザースを着てると
ウォールストリートの人、って時代があったのよ。
だからブルックス・ブラザースのスーツを着て
銀行に行ってもお金は貸してくれないの。
だって、お金を貸す人のためのスーツだから。

そしてダナ・キャランが出来たときに、
広告代理店の人はダナ・キャランにいき
ラルフ・ローレンはどっちかというと
スーツを着ないで仕事をする人のための
お洋服に向かっていった。
そういう意味ではいまの伊勢丹さんにある
こういうアウトドアラインのほうが
ラルフ・ローレン的なのかもしれないわ。

── ブルックス・ブラザーズの
ブラック・フリースは憧れますよ。
トム・ブラウンの。
ジョージ それが残念なの、ボクにはブルックス・ブラザーズの
日本で売ってるサイズじゃ、小さくなっちゃったの。

あ、こっち、こっち。
奥にスパもあるのよ。





── あれ? 女性向けですか?

伊勢丹の人 こちらは男性です。
リフレクソロジーのみ女性もOKですよ。

ジョージ あ、スウェーディッシュなんですね。
やさしくリンパの流れにそって
血の巡りをよくするの。
ほかにもディープティッシュは、
強く細胞を押すやつでしょ、
熱い石をのせるホットストーン。
いろいろあるのね!

伊勢丹の人 ギフトカードもあるので、
プレゼントに使われる方もいらっしゃいますよ。

ジョージ なるほどー。ちょっとステキかも。
でもバーバーはないのよね。
あったらいいのになあ!
安くなくていいから、
それこそ、1万円払ってもいいから、
嫁さんが買い物をしてる45分とか、
あるいは25分とかでちゃちゃっと
キレイにしてくれるような。

── 銀座のダンヒルには
バーバーがありますよ。
そういう感じなんでしょうね。

ジョージ ロンドンのハロッズのバーバーもよいですし!
本当に髪を刈るだけ、シェーブしてくれるだけでも
対応してくれるようなね。
いっそシェーブショップでもいい。
2丁目の人たちは来るよー。
シェーブアンドネイルなんてどうかしら。
絶対、面白いと思う!

── こちらは1階とはまた別の
フレグランスのコーナーですね。
あ、サンタ・マリア・ノヴェッラは
8階のほうが品揃えが多いんですね。



ジョージ ここのローズ・ウォーター
枕カバーとかに
ぱしゃっとやると気持ちいいのよ。
プレゼントにしても、安くって!

── かと思うと、オーディオが!
本館とはまたちがうんですね。

伊勢丹の人 こちらにはリン(LINN)の試聴室がございます。



ジョージ そもそもLINNを扱うってところが変だから。

ここの試聴室には音源が持ち込めるの。
でも、LINNを聞くには一番なにがいいんだろう?
クラシックじゃないのよね。
ニューエイジっぽいものや
アコースティック系、
カントリー&ウエスタンなんかがいいかも!

── カメラはライカ(LEICA)だけですね‥‥。



ジョージ ライカのM9‥‥ギョギョギョ!
純正レンズをつけたらこんな値段になるのね!
うわーっ!
‥‥っていうか、頑張ろう!
もっと頑張って、
これが買えるようになりたいわ!

── そして、カフェがこちらに。



ジョージ ここはまるでエアラインのラウンジ
新宿ってなかなかいい喫茶店がなくって、
というのは、あっても、
どこもとっても混んでいるの。
ここ、実は穴場なのよねー。
で、ここも混んでたら、
こっちの売り場の椅子に座る、と。

── かっこいい椅子が置いてありますね。



ジョージ ル・コルビュジエのグラン・コンフォート。
‥‥のある家ってどんな感じ?

── かっこいいと思います。

ジョージ 今、てらいもなく、
これを置けるってステキよ。
でも気をつけて。3連にふたりで座ると
クッションとクッションの
境目に座ることになるからね。
愛がある家庭は2シーターよ!
ああ、ここなら住めるわー。
スパもあるしご飯も食べられるし!
 



























■ エルゴノミクス・デザイン
人間工学にもとづいて、使い心地がいいように出来上がったモノのコトをそういうの‥‥、よね? 多分、そう。昔、法外な値段のエルゴノミクスをうたう椅子を買ったことがあったんだけど、当時のボクは100キロオーバー。どう座ろうが、お腹がつかえてくるしいの‥‥。エルゴノミクスデザインのその実力を発揮させるための、まず体作りをお願いしますって言われたことがあったのよね‥‥。所詮、人がデザインするものってそんなモノよってうそぶいたコトがあったわね!













■ モンブラン
ステーショナリーの中で一番、枯れたモノ‥‥、文句なくそれは万年筆だと思うのよね。機能や形をコレ以上変えようのない完成されたモノはない。だから、新しい商品を作ることって難しい。そう言ってあきらめなかったのがモンブラン。トスカニーニだとかマリーネデートリッヒだとか、過去の偉人の名前を冠した限定品を次々、リリース。それぞれちょっとしたひねりがあって、見続けてると買いたくなるのよ。いつか「ジョージさんモデル」とかってできないかしら‥‥、って期待してるの。二丁目のジョージさんでなくって、ジョージ・ブッシュでもいいからさぁ‥‥(笑)。

■ デュポン
オトコの宝飾品といえば「時計」と「ライター」。昔はそう言われたモノであります。そのライターの最高峰のひとつがデュポン。タバコに火をつける道具としてでなく、手の中で光を放つアクセサリーとしての存在感は抜群なのね。だからデュポンの高級筆記用具は、字がかける高級ライター。そう思えばいいんじゃないかしら。ちなみにココの通常ラインのボールペンは、ボールがなめらか、ウットリするほど字がよく書けるの。若干太字で、ひらがな向きにできていて、細軸のモノは日本の女性の手にピッタリ。ひきしまった華美にすぎないデザインも愛らしくってステキです。











































































■ ダナ・キャラン
ボクにとってのニューヨークって、女性のスーツ姿が似合う仕事と生活が表裏一体をなしている街。マディソン街を颯爽とゆく、ピンストライプのパンツスーツを来たブルネット。多分、彼女がきているスーツはダナ・キャランのシグニチャーラインじゃないかなぁ‥‥、って。そんなコトを思わせる。
それがダナ・キャランと言う存在ネ。なにしろ彼女が展開している主要ブランドの名前が「ダナ・キャラン・ニューヨーク」ですからね。地名。それも町の名前を冠したブランドなんて、他にあるかしら‥‥。うーんっとねぇ‥‥、あったわ‥‥、あった、ミチコロンドンコシノがあった。

■ アウトドア系のお洋服
ワタクシ、アウトドアというものにまるで縁がないにもかかわらず、「プレッピーはL.L.Beanが大好き」ってな感じの雑誌の特集にハマってしまい、一時期、かなり買いあさってしまったのネ。
スポーツ系のお洋服。例えばテニスブランドや、サーファー系のお洋服が全盛の中、地味な色めのチノパンだとか、ブーツやランバージャケットみたいなモノばっかりを着ていたら、お友達がこういうの。「お前は毎日、山からおりた狩人みたいだ」‥‥、って。今だったらば、「そうよ、くまさんみたいな殿方を狩りに来てるの」って言い返すこともできたんだろうけど、当時は黙って耐えていた。苦い思い出‥‥、いまはもう。


■トム・ブラウン
トム・フォードの次は、トム・ブラウン。時代の先端を行くオトコ服って、トムが作るのかもしれないわね。しかも二人のトムは対極にいる。艶っぽくってオトコの色気をプンプンさせたトム・フォード。引き締まっていて無駄なもののないストイックにしてミニマルなトム・ブラウンと対照的で、それも時代の違いなのかなぁ‥‥。過剰な色気は今の時代にはトゥーマッチ。ボクの色気も今は控えめ、おとなしめ。

■ スパの楽しみ
スパって、五感のあるべき状態を取り戻す行為‥‥、のことを言うんじゃないかしら。何かに効くとか、何かを直すとか、直接的な効果を期待するものじゃなく、本来あるべき自分をとりもどすためのあれこれ。ひとりでたのしむよりも、愛ある二人でたのしむとよりシアワセをとりもどせるんじゃないかしら。昔、ニューヨークのWホテルに「ビジネスエグゼクティブおふたりのためのスパプログラム」っていうのがあって、これって、性別は問わないの? って無粋にも聞いたのよ。そしたらアッサリ。男性エグゼクティブの方々にご好評を頂戴しております‥‥、って。惚れたわね‥‥、さすがゲイフレンドリーなホテルだわ。

■ バーバーの楽しみ
立派なホテルの立派な床屋さんのおなじみさんです。おなじみの床屋さんを持つというのは、優秀なホームドクターを持つのと同じコトじゃないかと思うのネ。ホームドクターは体の変調を教えてくれる。床屋さんはココロのムードを教えてくれるの。だって鏡越しとはいえ、1時間以上もずっと顔を見ながら仕事をするでしょ。ジョージ様、最近お仕事お忙しいです? とかって言われるときは、大抵、顔がこわばってたりするのよね。今日はお顔のマッサージをサービスしましょう‥‥、なんてそれは、顔と一緒にココロの中までほぐしてくれるサービスだったりするワケよ。

■ ダンヒル
ジェントルメンを生み出す装置‥‥、とワタシは思う。フォーマルからカジュアルまでお洋服がたんとあるわね。カバンもある。ネクタイだったり、そうね、ダンヒルの刺繍の入ったポケットチーフなんて粋なものもある。でもそれ以上に「ジェントルメンの嗜み」をたのしくさせる小道具がある。葉巻やタバコにまつわるさまざま。煙を嫌うボクもそれら小道具のうつくしいさまにウットリしながら、なにか他に使い方はないかしら‥‥、って想像力を巡らせる。葉巻に火をつけるためのマッチ。リンをタップリ含んでいるから消臭効果が抜群なのネ‥‥、たのしい発見。男子の趣味のミュージアム。

■ 2丁目のシェーブアンドネイル
オカマの髭はメイクアップ。だからこだわる。髭を生やしていないオカマも、襟足だったりもみあげだったり「毛の生え際」はメイクと同じこだわるべきばしょ。あら、今日は右と左のバランスが良くないわ‥‥、ってそれで一日、憂鬱になったりするのよ。ちなみにキレイに磨き上げられたネイルは、「コンガリ小麦色の日焼け肌が裕福の象徴ではなくなった今」のオカマのステイタス。

■ ローズ・ウォーター
甘い囁き。切ない吐息。情熱に満ちた愛の告白。そこにほんの少しのジェラシーを足す。それが薔薇の香りと思う。恋するオカマはとても好き。

■リン
オーディオ機器だけを作っている、小さな会社。でもスペシャル。音も姿も、自らをイタズラに主張せず、にもかかわらず圧倒的な存在感を持っている。うつくしいのです。しかも控えめ。日本の茶室に唯一置くことを許されるであろうオーディオ機器じゃないかと思う。

■ライカ
堅牢であり、実用的であるコトが最大の価値を作り出す「精密機械の極致」だと思うの。不思議よねぇ‥‥、日本の人には作れぬ何かがドイツにはある。もっと簡単に、正確にものを写すカメラは他にも沢山あるのだけれど、そうしたカメラが写せぬ何かをライカだけが切り取れるのね。なんだか不思議。時計だってそう。車もそう。日本人としてなんだか悔しい。悔しいついでに、いつか絶対、エルメス別注のライカを買ってやるんだわ‥‥、って思って今日もがんばるの(笑)。

■エアラインのラウンジ
エアラインのラウンジって、その国の「もてなされたい場所」のイメージが投影されるの。特にナショナルフラッグはそう。アリタリアはまるでカフェ。エールフランスは高級レストランのサロンのような雰囲気で、英国航空は書斎な感じ。日本のエアラインのラウンジって、どこも上場企業の役員応接室のよう。なんだか暗くて重々しくて、あんまり好きじゃないのよねぇ‥‥。











■ル・コルビュジエのグラン・コンフォート
金属の四角いフレームに、四角いクッションを組み合わせただけ。こんなに単純で、こんなに潔くって、なのにこんなにすわり心地のいい椅子が、この世に他にあるのかしら‥‥、って。しかも見るより、座った方が数段ステキ。ただ、寂しいのが座ってしまうとその椅子のうつくしさを見ることができなくなるコト。だから一脚だけ買うっていうのはありえない。絶対、二脚。それからもひとつ肝心なのが、この椅子にふさわしい空間を用意しなくちゃいけないってコト。うーん、モティベーションがあがるわね。




いっぺんにいろんなもの見たー。
伊勢丹新宿店メンズ館8階ってそうとう、
男子には面白い世界です!
女子の感想も聞いてみたい。
次回からはメンズファッションの世界へ!
2012-07-23-MON