HABU
ハブの棒使い。
やればできるか、晴耕雨読。

18年間勤めた会社を元気にやめて、
奄美大島に移り住んだ鳥飼さん。
その名の通り、バードウオッチングが大好きで。
生き物ぜんぶが大好きな人から、「ほぼ日」に不定期便。

クロウサギ、ヒカゲヘゴの巨木、
アマミヤマシギ、マルダイコク・・・
そして、ハブに遭遇するのはごく自然なことらしく、
そいつを叩くための棒をもって歩くんだそぅだ。

同じまねはできなくても、
読ませていただいて楽しみましょうや。

その69 4年目の梅雨のある一日

目を覚ますと朝の4時過ぎでした。

窓を開けて確かめると、梅雨の合間の晴れ間が望めそう。
急いで身支度を整えて4時半には家を出発しました。
車を飛ばして日の出前には観察ポイントAに到着。
ここではオーストンオオアカゲラという
キツツキが子育て中。
例年に比べて遅い繁殖行動はいかなる理由でしょうか。
親鳥が交替で餌を運ぶ様子をしばらく双眼鏡でのぞき、
ヒナが巣立つのはまだ数日先と判断しました。

車に戻って観察ポイントBへと急ぎます。
こちらでは珍しいランが開花直前なのです。
車を降りて山道をたったと登ります。
さて……残念、開花はまだのようです。
去年まで隣にあった別の株は今年はもうありません。
盗掘にあったのか、学術目的で持ち出されたのか。
いずれにしても残った株には、可憐な花を咲かせて欲しい。

突然雲行きが悪くなってきました。
雨が落ちてこないうちに観察ポイントCへ向かいます。
ここは渓流、イシカワガエルのオタマジャクシがいます。
この前の大雨で流されなかったかが心配です。
澄んだ水底をそっとのぞくと……いましたオタマジャクシ!
小さな尻尾を振って、元気に泳いでいます。
いったいいつ手足が生えてくるのでしょう。

大粒の雨が落ちてきたので観察は終了。
豪雨の中、家に帰り着いたのが午前10時。
それから1時間ほど昼寝
(というのかなあ、午前中だけど)。
起きて昼食のスパゲティをつくり、
午後はミステリーの原稿書きに費やします。
5時間で5枚、ま、こんなものでしょうか。
気分転換にいま「ほぼ日」の原稿を書いています。

これが終わってメールでクサナギさんに送ったら、
今晩は麻婆豆腐でも作りましょうか。
それをつまみにビールを飲みつつ、
テレビでプロ野球を観戦しようっと。
腹がふくれたところで、読書タイムに突入予定。
読みかけの小説が佳境に入ったところなので楽しみです。
睡魔との戦いに敗れるのは
おそらく日付が変わる頃でしょう。

毎日がこのように過ぎていきます。
天気がよければ一日中生き物を観察していることもあるし、
天気が悪ければ一日中机に向かっていることもあります。
気が向けば夜通しで観察に出かけることもあるし、
気が向かなければ日がな読書に費やす一日もあります。
仲間と楽しく飲み騒ぐときもあれば、
3日くらい人と会わないときだってあります。

奄美に移住して丸3年が過ぎました。
勝手気ままな毎日ですが、
自分なりに島での暮らし方が身についてきたようです。
生き物の観察にも随分時間を費やしました。
わかってきたことが少々で、
まだまだわからないことが一杯です。
ミステリーについては……うーん、どうなんだろう。

「ほぼ日」に連載をはじめて丸3年が経ちました。
ひょんなことからはじまったこの企画、
奄美の生活を自分なりにレポートしてきたつもりです。
書ききれていないことも書き残した課題もあるのですが、
ぼちぼちマンネリ気味だろうと総括しています。
ということで、今回が「ハブの棒使い」の最終回です。
これまでありがとう&新企画でお会いしましょう!

さて、明日は何時に起きようかな。
鳥飼さんの新作が出ました!

本格推理 書下ろし
『桃源郷の惨劇』

三転、四転する推理
そして作中作に隠された<暗号>が明かす真相とは!?

そこはヒマラヤの奥地、
桃色の花々に煙る文字通りの桃源郷だった。
針金倫明(はりがねみちあき)ら日本人スタッフの目的は、
新種の鳥を世界に先駆けて撮影すること。
古老が出した条件は一つ
「神の領域を侵してはならない」だ。
通訳はさらに、神とはイエティ(雪男)だと訳した。
本当に実在する?
半信半疑のまま撮影を開始した直後、
カメラマンが惨殺され、遠ざかる巨人の影と足跡が!



『桃源郷の惨劇』
トウゲンキョウノサンゲキ
著者名:鳥飼否宇
祥伝社文庫
文庫判/144頁
定価:本体381円+税
ISBNコード:4-396-33094-4
2003年2月10日発売

 

鳥飼さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「鳥飼さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2003-06-01-SUN

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いままでのタイトル

第一部
2000-05-16  最初ですから、ハブでも
2000-05-19  島の時間
2000-05-23  いとしいアマミノクロウサギ
2000-06-01  フクロウの恋の季節
2000-06-13  選挙で活気づいてきた
2000-06-17  海の生き物あれこれ
2000-06-26  クッカルに雨の大切さを教わった話
2000-06-30  晴耕雨読第一期総括
2000-07-06  女の同居人について語ってしまおう
2000-07-17  海面から眺める光景
2000-07-21  あまーい罠に誘われて…
2000-07-27  珍商売について考えてみた
2000-08-11  マングローブ探検隊
2000-08-13  こだわりのわが家拝見
2000-08-22  日の当たらない森と日を当てる人
2000-09-03  真夏の夜の夢
2000-09-08  シマジュウリ
2000-09-14  一緒に飲もうじゃないか!
2000-09-21 見えない境界線
2000-09-27 アマミヤマシギ御難
2000-10-09 天高くタカの舞う秋
2000-10-13 ガジュマルと妖怪
2000-10-22 満月とマングローブ
2000-10-28 死者の使いが舞う人里で
2000-11-04 写真つきの半期総括
2000-11-11 食べてはいけない!
2000-11-19 目立つが勝ちという生存戦略
2000-11-25 真似るが勝ちという生存戦略
2000-12-02 擬態づくし
2000-12-09 大島紬――かくも念入りな仕事ぶり
2000-12-18 鳥の世界の「とりかへばや物語」
2000-12-25 幸福感に包まれたある冬の日
2001-01-04 ゴキブリ論
2001-01-10 奄美大島発正月レポート
2001-01-17 カエルの島、島のカエル
2001-01-23 続・カエルの島、島のカエル
2001-01-30 「自然の権利」知っていますか?
2001-02-06 花をめでるということ
2001-02-14 イボイモリに倫理を学ぶ
2001-02-25 如月満月、長い夜(前編)
2001-02-27 如月満月、長い夜(後編)
2001-03-06 ヤンバルの森VSアマミの森
2001-03-19 田中一村という画家
2001-03-27 オオトラツグミ一斉調査
2001-04-03 凛と咲く
2001-04-13 不調和な景色
2001-04-22 親鳥奮闘記
2001-04-27 最後ですから、ハブ棒でも
番外編
2001-06-13 晴耕雨読、ときおり殺人(番外編)
第2部
2001-07-10 その49 母ガメの目にも涙
2001-08-12 その50 無人島、午前4時
2001-10-14 その51 秋の朝のひとコマ
2001-11-08 その52 魚捕りにはまった大人
2001-12-09 その53 中国のハト
2002-01-23 その54 ぼっとどりに翻弄された夜
2002-02-12 その55 奄美の寒い冬
2002-02-05 その56 ゲンゴロウ馬鹿に勝った日
2002-03-31 その57 のどかな黒糖製法
2002-04-24 その58 奇人列伝
2002-05-08 その59 奄美島唄の逆襲
2002-07-08 その60 不審船といわれても
2002-08-05 その61 時間よとまれ
2002-09-22 その62 海に祈る
2002-10-30 その63 鳥を待つ
2002-12-26 その64 クリスマスに思う
2003-03-02 その66 長寿の島
2003-04-01 その67 新緑の赤
2003-04-30 その68 リーフ釣りにはまる