ハブの棒使い。 やればできるか、晴耕雨読。 |
その28 真似るが勝ちという生存戦略 突然ですが、質問です。 チョウの雄と雌はどちらがきれいでしょう? 一般的に雄と雌の姿形が著しく異なる生物の場合、 (ちなみに、これを性的二型といいます) 雄のほうが派手なケースが多いものです。 雌は子孫を残すために生きのびる必要があり、 生息環境に溶け込むような地味な衣装をまとい、 雄は雌の気をひくために美しい衣装を身に着ける。 これが生物界の基本ルールなのです。 それで、次の写真を見てください。 ツマグロヒョウモンというチョウの雄です。 ヒョウ柄をまとっているのでヒョウモンという名前です。 では、次の写真も見てください。 同じくツマグロヒョウモンの、こちらは雌です。 どうですか、雌のほうがきれいでしょう? まあ、美醜は主観的な判断なので決めつけられませんが、 少なくとも雌のほうがカラフルであることに異論はない。 冒頭の質問に戻りましょうか。 チョウは他の生物とは違って、雌のほうがきれいなのか? いいえ、違います。 チョウだって、基本的には雄のほうが美しい。 では、なぜツマグロヒョウモンは…??? ここで前回(その27)の話を思い出して欲しいのです。 毒チョウ、カバマダラのお話でした。 このチョウは幼虫時代に食べた植物の毒を体に蓄積し、 天敵の鳥からわが身を守っているのです。 だから、自分を目立たせるという生存戦略をとっている。 そんな内容を復習しながら、 もう一度、前回のカバマダラの写真をよく見てください。 何かに気づきませんか? そう、ツマグロヒョウモンの雌とよく似ているでしょう! ツマグロヒョウモンの雌は毒なんか持っていません。 しかし、毒チョウ、カバマダラの姿を真似ることで、 あたかも毒を持っているかのように天敵をあざむく。 つまり擬態です。(正確に言えばベーツ型擬態) トラの威を借るキツネ作戦ってわけです。 人間社会でもこのタイプの擬態はよく見かけます。 民間の警備員の制服は あきらかに警察官の制服に擬態していますし、 街にコギャルがあふれたのだって、言ってみれば 全国の女子高生が安室奈美恵に擬態したためでしょう。 とかく浅知恵を働かせる人間ならわからなくもないですが、 昆虫にもこんな機転の利いた生存戦略を授けるのですから、 進化とは実に興味深いもの。 でもなんで擬態するのは雌だけなの? これも子孫を残すための優先順位と説明されていますが、 美しくないのに加えて天敵の目にはさらされっぱなしの ツマグロヒョウモンの雄って、悲しすぎるのでは。 |
2000-11-25-SAT
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