おさるアイコン
最新の記事 2006/01/31
 
レシピその8
鶏スープ 削りパスタ入り 〜長男が誕生したときの話〜

これは23年前の話。
毎朝恒例のバッバとのお買い物で
「今朝、ちょっと破水した感じ」と話したら
お昼ご飯がちょうど終わったところに、
見知らぬ夫婦がやって来て
「直ぐ 病院に行こう!」と、
私をせかし連れて行ってくれました。
後でわかったのですが、
このご夫婦は隣の棟に住む
バッバの娘夫婦のモスタルダーさん達でした。

そのまま入院をしました。
その病室には6つのベット。
ベットの枕元には小さい十字架がかけられていて
私は初めて見たので、
なじむのにちょっと時間がかかりました。
その十字架の下には誕生した赤ちゃんが
男の子か女の子かわかるように
青とピンクのおリボンがつけられます。

陣痛が始まったのは、夜中の2時半。
今日のように寒い日でした。 
初めて経験する陣痛。
私とお腹の子が体内で分け合う
最後の苦しみ、最後の共同作業。
「私も苦しい。
 でもきっと赤ちゃんだって苦しい。
 お互いがんばろ〜!」
なんて言いきかせながら
襲って来る眠気と戦いながら、
激しく降る雨の窓打つ音に声援されながら、
朝の6時半に元気な産声をあげました。
まん丸顔を見て、産声を聞いて、
なんたることか私は出産台の上で
寝入ってしまいました。

目が覚めるとベットの横でバッバが心配そうな顔。
いつから 私の手を握ってくれていたんだろう。
ベットの上には、ブルーのリボン。 

リエティで初めて産まれた日本人。
「黄色いのは私たちが日本人だからでは?」
と言ったのですが、
お医者さんはいぶかしがり、
黄疸が消えるまで11日間も入院しました。
蒙古斑も珍しかったのでしょう。
彼のおしりも良い標本になりました。

我が子は親と同じ黒い瞳に黒い髪。
それにびっくりされました。
赤ちゃんが生まれるとき、
髪も瞳も育って行く途中で
色が変わるらしいので
誰の色に似るか、
色の家系図で話題がつきません。 
やはり金髪にブルーや緑の瞳が人気の的。
そうですよね、音波では色までは解りませんものね。
産まれるまでの楽しみだったのでしょう。

入院生活。
朝は授乳から始まります。
授乳室で用意して待っていると
疲れきっている母親達に
女として喝を入れるごとく
ここは化粧品売り場? というくらい、
美しく化粧ばっちり、指輪きらきら、
ブレスも忘れませんの看護婦さん達が
両脇に赤ちゃんを抱えて登場。
早飲みの上に大飲みの我が子は、
一番最後に手渡され、
一番最初に取り上げられます。

産まれた時から目鼻だちの凹凸が
はっきりと形成されている
イタリア人赤ちゃんのなかで
彼はまん丸顔でぺったんこ。
珍しいこともあり、みんなから絶賛!
新生児室からのぞいてみても
迫力のまん丸顔は
一番最初に目に飛び込みます。

授乳が終わり病室に帰って来ると
廊下のお掃除中なので乾くまで待ち、
病室にもどり朝食。
ベッドで食べます。
イタリアのトラディショナル朝食で
ミルクか、そこにカフェを入れるか
ティーを小丼のような入れ物に
たっぷりと入れてくれますので
そこにビスケットなんかをたっぷりといれて 
スプーンでつぶしながら 
またはビスケットをつけながら食べたりします。 
それで足りない時は
パンにジャムを付けていただきます。

昼食と夕食は、
各病室にあるテーブルで揃って食べますが、
まず「おっぱいのためだから飲みなさい!」
と自前で持って来ているビールを勧められます。
本当?
そんなこと聞いた事ありません。
‥‥と思っても、
元来のビール好きにはたまらないお誘い。
食事はプリモ、セコンド野菜付き、
果物、パン、飲み物とたっぷりです。


今回ご紹介するお料理は
自宅に帰って来てから
みんなが持って来てくださった
「おっぱいが沢山でるよスープ」
鶏スープ〜削りパスタ入り〜です。
身体もぽかぽかになりますので 
寒さでちぢんでいる時には最高です。
身体の中の何かが動きます。

鶏は老雌鳥を使います。
こちらの諺の
「老雌鳥は良くスープがでる
 (老婦人は知恵の宝庫)」
にもあるように、
老雌鳥ですと良い味がでます。
とても繊細な味なので
まずは一口食べてから
お好みでパルメジャンチーズを
入れてみてください。
それから魔術師の一滴、
お醤油を2、3滴
煮ている時に入れてみてください。
遥かシルクロードを渡って来た
東洋の味の元を加えると
融合的ななんとも深い味わいになります。
注意することは入れすぎない事です。

鶏スープ 削りパスタ入り


■材料

●スープ
老雌鳥:1匹
セロリ:1本
人参:1本
タマネギ(丁字を数本刺して):1個
イタリアンセロリ:2、3本
西洋ビャクシンの実:数個
胡椒の実:数個
塩:少々
お醤油:2、3滴まで

●パスタ
小麦粉:120g
卵:全卵1個と黄身のみ1個
塩:少々




■作り方

(1)水で良く掃除して洗った老雌鳥を1羽入れ、
   煮たってあくが出て来たら、
   綺麗にあくを取り除き、
   セロリ・人参・タマネギなどの香味野菜と
   西洋ビャクシンと胡椒の実を入れ
   ゆっくりと2〜3時間煮る。
   途中味見をしながら塩と数滴お醤油を入れる。

(2)表面の油をとり(残す分量は好み)
   別の鍋にスープだけこす。
  (目の細かいざるを使ってもよいです)
   味を整える。

(3)パスタを作る。
   良く練ってから1まとめにして 
   冷凍庫に30分くらい休ませ堅くした後、
   目のあらいおろし器でおろす。
   くっつきやすいので、
   お盆の中に小麦粉を敷き
   たっぷりと小麦粉をつけながら
   ぽろぽろ状態にする。

(4)ざるで小麦粉をよく払ってから、
   出来たスープに直接入れ、数分煮る。


スープはたっぷりと作って冷凍にしておくと
何にでも使えて便利です。



3時間ゆっくりと煮て。




パスタを削ります。




よく小麦粉を付けてぽろぽろ状態。




パスタの出来上がり。
冷凍にしても取って置けます。




出来上がったスープに
良く粉を払ったパスタを入れます。



お好みでパルメジャンチーズもどうぞ。
BUON APPETITO!
 
ご感想はこちらへ もどる   友だちに知らせる
©2005 HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN All rights reserved.