友人のアントニアをご紹介します。
ベネチアの近くで育ち、ミラノに暮らす64歳です。
家族は、定年後、趣味にあけくれている夫で、
家のことですることといえば、
朝の散歩がてらに新聞を買いに行くていど。
36歳の長女は結婚して近所に住んでいて、
34歳の長男はマンマで始まり、
マンマで終わる1日を過ごす独身貴族。
そんなアントニアの朝は、窓ガラス磨きで始まります。
彼女は化粧品店も経営しますが、
「店頭に立つのは私でなくともできる」と親戚にまかせ、
自分は家族や孫のために家事や介護をこなし、
週に2度のボランティアに情熱を燃やす日々です。
こんなことがありました。
ある朝、寝ぼけた顔で犬の散歩をしていると
アントニアが自転車で通りかかりました。
彼女は自転車の速度もゆるめず、大きな声で
「犬の散歩なんていいながら、
実は、彼とデートじゃないの~?」なんていいながら
ウインクして去っていきました。
色気のあるイタリアおばさんでもあるんです。
大黒柱マンマのスーパー・アントニアは、
小雪の降る日も、太陽の日ざしが強い日も、
トレードマークのタイトスカートをはき、
猛スピードの自転車で、ミラノ中を駆け巡っています。
物がない時期を経験しているアントニアの口癖は、
「もったいない」「ムダをしないように」です。
また、「だれがそんなことをいったの?」
という言葉もよくいいます。
自分がよいと思い納得できれば、それが一番、
という彼女。
私が最高に彼女を好きな理由のひとつです。
なんにでも労をおしまず、知恵と手間かける
アントニアの作り出すものには
ファンタジーがあります。
料理の材料も驚くほどにムダをせず、
おいしいものを作り出します。
その柔軟的な考え方に、みんなは感服、脱帽!
アントニアに「昼食のアイデアをちょうだい」と
お願いすると、
「冷蔵庫にあるものをいってごらん」と、
つねにアドバイスをくれます。
今回ご紹介するポルペッタも、アントニアに教わった
冷蔵庫のあり合わせの材料を使った料理です。
冷蔵庫のすみで眠っている肉を集めて
作ってみてくださいね。
分量が6~8人分と、少し多めですが、
煮込みの肉料理は一度にたくさん作ったほうが、
おいしいソースができると思いますし、
保存しておくと重宝します。
どうぞお試しになってくださいね。