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以前ご紹介した 最高級の「トラディショナルバルサミコ酢」を作っている モデナの醸造所に再び行ってきました。 今回の目的は、バルサミコ酢の「樽替え」を見ること。 先日もご紹介しましたが、バルサミコ酢のつくり方は、 地元産の甘味のあるトレビアーノ種の 白ぶどうを圧搾してジュースを作り、 それを36〜48時間かけて、 半分くらいの量になるまで煮詰めて 数年間寝かした後で、樽に入れます。 樽に入れた後に 7種類の違う木の樽に移しかえながら、 それぞれの木の香りをつけていきます。 これが「樽替え」です。 樽の移しかえの時期は、 毎年、菌の働きの弱い1月〜2月に行われます。 醸造所はぶどう畑に囲まれています。 車から降り、冷たい澄んだ空気を胸一杯吸っていたら 突然、目の前にクジャクが飛び降りて来て ビックリしました。 空飛ぶクジャクに出会ったのは初めてでした。 ふと屋根を見上げると、 放し飼いのクジャクたちが 屋根の上で休んでいました。 こののどかな自然のなかで バルサミコ酢はゆっくりと発酵熟成されています。 さて、ご主人のジョバンニさんが 案内してくれた部屋では 15年もののバルサミコ酢が醸成されていました。 樽替えのお手伝いをしているのは、 ご主人のいとこさんです。 樽替えは、どのように行われるのか? 私は実際に見るまで、 バルサミコ酢の入っている木樽を抱えて、 別の木樽にすべての酢を移しかえるのだと、 と想像していました。 ところが、ジョバンニさんは 長い管を持って来ました。 管の一方を大きい樽に入れ、 もう一方はひと回り小さい樽の方に入れて、 スイッチを入れました。 大きい樽から小さい樽へと移しかえていきます。 小さい樽になればなるほど、 熟成年月が長いバルサミコ酢、ということです。 バルサミコ酢は醸造中に、 1年で10%ほど蒸発します。 また、商品として出荷するバルサミコ酢は、 一番小さな樽のものを20%の量と決まっているため、 そのことを計算に入れて、 樽に入れる分量を決めます。 たとえば、15年物のバルサミコ酢の場合、 15年間、毎年10%ずつ減っていくのですから、 たいへんなことですね。 バルサミコ酢は付いている樽の香りや 醸造年別のものをブレンドしながら、 家ごとに伝統の味に仕上げていきます。 樽の移し替えの際は、 その味になるように、 手元をランプで照らしながら、 長年鍛えた職人技とカンで 必要な分量だけを足して行きます。 毎年どんどん複雑な味になって行くのが この方法を見てわかりますね。 ゆっくりと全体を混ぜ合わせます。 味見です。 この樽のバルサミコ酢はさっぱりとした香りで 酸味の切れ味のいいものでした。 小さい樽と味の違いを確認します。 こちらは酸味がありながらも、まろやかな味です。 同じ年に同種類の木樽に仕込んだバルサミコ酢でも それぞれの木樽で味や香りが微妙に違います。 それは説明がつかない 自然の力によるものだそうです。 ご主人の 「同じマンマから産まれた双子でも性格が違うだろ」 という、わかりやすい説明に、思わず微笑みます。 毎年2000本以上の樽替えを この時期にするそうです。 天井から樽がつり下がってました。 この樽は、昔、この地方の貴族たちが、 旅行のときに持ち運んだものだそうです。 旅行のときは、この地方にしかないバルサミコ酢を 必ず持って行ったそうです。 彼らにとって生活に かけがえのない物だったのですね。 白ぶどうの果汁を煮詰めて 長い年月をかけて作るバルサミコ酢。 最終的には、ごく少量になっていきます。 この方法で作るバルサミコ酢は ぶどうの果汁が多量に必要で、 手間も時間もかかり、技術が必要なため、 一般の人たちは作り方を知っていても ワインを発酵させることで かんたんにできるビネガーを作っていたそうです。 黒褐色に輝き、 魅惑的な芳醇な味わいのバルサミコ酢は いったい誰が考えついたものなのでしょうか? 秋のぶどうの収穫も ぜひ、一度観てみたいと思いました。 さて、今回ご紹介するメニューは 春の味がいっぱいのお魚料理です。 優しい野菜の味と一緒に 蒸し魚を楽しんでください。 食べるときに、バージンオリーブオイルと バルサミコ酢をたっぷりとかけて めし上がってくださいね。
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