ほぼ日刊イトイ新聞 - イタリアンマンマの直伝レシピ


	2009/05/17

レシピその91
パンツェロッティ　バッバ風
～バスの中でのできごと～

午前中、バスに乗ったときのことです。
近くの青空市にでも出かけるのでしょうか。
バスの中の乗客は主婦や老人がほとんどで、
なごやかな雰囲気でした。

停留所が近くになったとき、
降りる準備で数人が席を立ち、
降り口の前に並んでいました。
停留所前の信号でバスが止まりました。
軽い振動を感じたものの
座っている私には
全く影響はなかったのですが、
並んでいた60代後半の男性が
そばにいた70代と思われる女性にむかって
軽い調子で
「足をふんだぞ。気をつけてくれよ」
と、注意をうながすと、
注意された女性は急に大声で、
「私のせいではないわ。
　バスが急に止まったからよ」
と終わりなき熱烈会話対戦が始まりました。
居合わせた乗客は、ほぼ全員が
２人の対戦に参加する体制を整え、
「わざとしたんじゃないから」
「すぐ女は大声でさわぎだすからな～」
「あのふたりの会話は聞いていられないな～」
「すぐに謝ればいいんだ」‥‥
身振り手振りつきの大声で
本人たちに言葉を投げかける人や、
独り言のようにつぶやく人、
それぞれの人がそれぞれ思っていることを
あれやこれや言い始めました。
また、当の本人たちが、乗客にむかって、
返事を投げ返すというやり取りに発展し、
なごやかさは消え失せ、
バスの中の人たちは、
本領発揮！　とばかりに活気だってきました。

そして最後には
「最近の運転は本当に荒いから」
「そうだそうだ、運転手が悪い！」
「切符代もちゃんと払っているのに
　ケガをしたらどうする？」

矛先は運転手さんに向かい、
運転手さんは、
ハンドルから両手を離して祈るポーズ。
「MAMMA MIAー!! （なんてぇことだ！）」
今回の運転手さんは
やさしい人だったのでしょう。
つぶやきで済みました。

以前にも運転手さんに
矛先が向いたことがあり、
そのときはバスを止めて、
乗客に向って鶴の一声を言った
運転手さんもいました。

とにかく、
騒ぎを起こした本人たちは、
停留所で降りて行きましたが
残った乗客は「やれやれ」と言いながらも
どことなくいきいきとした顔です。
イタリアの人たちは、
こういうことが大好きなんですね。

「自分の言葉」を持ち、
「自分の意思」をはっきりと表わす、
いつ何時でも、全く知らない同士でも、
コミュニケーションが
自然体でできる人たちなのだと、
彼らの明るい顔を見ると
うらやましい気さえしました。

さて
今回ご紹介するのは
バッバが日曜日によく作ってくれた
イタリアの揚げパンのような料理です。
皆で集まったときに
あれこれと具を決めながら作るのも
楽しいです。
揚げたての熱々を食べてみてください。
楽しさもおいしさも格別なものになりますよ。