1963年、
ヨーロッパで映画に出演した際の海外経験を
エッセイに書き始めたことから伊丹さんの
文筆家としての才能が開花を始めます。
ここには伊丹さんの著作を始め、
そのエッセイ第一号が掲載された雑誌、
手書きの原稿、伊丹さん専用に作られた、
猫のイラストが入った原稿用紙などが
展示されています。
糸 井 | この展示、中村さんらしくていいですね(笑)。 手描きの字は役に立ってますね、こういう時に。 |
中 村 | すごくいい字だと思ってね。 字をフューチュアした展示にしました。 |
糸 井 | 字を見ると、 盛んにご本人は原稿を書くのが 遅いっておっしゃってたのは、 本当なんでしょうかね、やっぱり。 |
中 村 | それが、原稿は遅くなかったらしいですよ。 しかも、できあがったら、全然直さなかったと。 |
糸 井 | あ、そうですか! 盛んに遅いっておっしゃってますよね。 |
中 村 | すごい量を書いたからでしょうかね。 |
玉 置 | 丁寧に書いてる感じですよね。 |
糸 井 | もう頭にできてから、書くんだな、きっと。 |
中 村 | 鉛筆でね。 腹ばいになって原稿を書くのね。 それで、展示ブースの「一」のところにも 子どもの時に腹ばいになって何か書いてる 写真があるけど、大人になっても 同じ格好というのがおもしろいですね。 |
糸 井 | ああ、同じだ。同じだ、そうだ。 |
中 村 | 腹ばいになっていつも書いてて。 |
糸 井 | 人は変らないんだなあ。 |
中 村 | ねえ、変わらないんですね(笑)。 |
玉 置 | でも、ワープロができたとき、 脚本のことでは、喜んでました。 直したいところを消して 書き直すのが簡単だから。 |
中 村 | 入れ替えもできるし。 |
糸 井 | ああー! そりゃ大きいですよね。 |
中 村 | 伊丹さんはわりと 進取の気性を持った人でしたもんね。 そんなふうに新しいものも ちゃんと取り入れられる人だった。 |
子供の頃から、絵の才能が抜群だった伊丹さん。
エッセイの挿絵や本のカバー画など、
多くを自ら手がけています。
展示には、原画もたくさんあり、
緻密な絵もユーモラスなイラストも、
伊丹さんのタッチを感じることができます。
手まわし式の閲覧台は、
次々出てくる絵が楽しい展示です。
糸 井 | イラストの閲覧台が、 蓄音機になってる! お客さんは回しますか? |
中 村 | はい、回しますよ(笑)。 |
手回し式の閲覧台は2台あります。 ほんの少しですが、回している様子を動画でご覧ください。 |
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糸 井 | 絵が、考えに、似てますよね、やっぱりね。 |
中 村 | そうそう。オーソドックスで、 うんうん。 いい絵ですよね。すごくいい。 鉛筆デッサン的なのも、 単線のイラストレーションも、 いいですよね。 これ「二日酔いの虫」。 このイラストはTシャツにしたんです。 自分が二日酔いの日に着ようと思って(笑)。 |
糸 井 | (笑)。 こういう原稿も、 ちゃんと取っといてあったんですね。 |
中 村 | あったんです。 |
伊丹さんのエッセイ『女たちよ!』のイラストの原画もあります。 |
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糸 井 | 捨てるには惜しいっていうの、 誰が見てもわかりますもんね。 |
中 村 | でも、素晴らしくいい状態では 保管されてなかったんです。 |
糸 井 | 出版社に置き去りみたいなことも、 ありえた時代じゃないですか。 |
中 村 | あったでしょうね。 だから、見つからないのもあって、 散逸もしてると思います。 |
糸 井 | 引き出しにも、イラストが。 |
中 村 | そう、 引き出しを自分で開けて見てもらうんです。 最近のミュージアムは、 来館者用のパソコンを並べておいて 画面で検索してもらう方式が多いんですが、 ぼくは、ミュージアムに来てまで コンピューターの画面を見たり、 マウスを触ったりしたくないんです。 それより、本物をじかに見たい。 それも、見せられるんじゃなくて、 自分で能動的に見たい‥‥というわけで、 この記念館では、 愉しく見るための工夫がいろいろしてあります。 |
引き出しを出したり、いろんなところを見てみてください。 |
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(つづきます) | |
2009-10-09-FRI |
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図版:トリバタケハルノブ