やあ、いらっしゃい ― 中村好文さんと歩く、伊丹十三記念館

糸井重里が、松山の伊丹十三記念館を訪れました。設計のみならず、キュレーターとしても活躍した建築家の中村好文さんと、館長の玉置泰さんの案内で、じっくり、見て回ります。どうぞ、ごいっしょに。

第4回 「五:エッセイスト」〜「六:イラストレーター」

伊丹十三記念館見取り図

五:エッセイスト

1963年、
ヨーロッパで映画に出演した際の海外経験を
エッセイに書き始めたことから伊丹さんの
文筆家としての才能が開花を始めます。
ここには伊丹さんの著作を始め、
そのエッセイ第一号が掲載された雑誌、
手書きの原稿、伊丹さん専用に作られた、
猫のイラストが入った原稿用紙などが
展示されています。

糸 井 この展示、中村さんらしくていいですね(笑)。
手描きの字は役に立ってますね、こういう時に。
中 村 すごくいい字だと思ってね。
字をフューチュアした展示にしました。
糸 井 字を見ると、
盛んにご本人は原稿を書くのが
遅いっておっしゃってたのは、
本当なんでしょうかね、やっぱり。
中 村 それが、原稿は遅くなかったらしいですよ。
しかも、できあがったら、全然直さなかったと。
糸 井 あ、そうですか!
盛んに遅いっておっしゃってますよね。
中 村 すごい量を書いたからでしょうかね。
玉 置 丁寧に書いてる感じですよね。
糸 井 もう頭にできてから、書くんだな、きっと。
中 村 鉛筆でね。
腹ばいになって原稿を書くのね。
それで、展示ブースの「一」のところにも
子どもの時に腹ばいになって何か書いてる
写真があるけど、大人になっても
同じ格好というのがおもしろいですね。
糸 井 ああ、同じだ。同じだ、そうだ。
中 村 腹ばいになっていつも書いてて。
糸 井 人は変らないんだなあ。 
中 村 ねえ、変わらないんですね(笑)。
玉 置 でも、ワープロができたとき、
脚本のことでは、喜んでました。
直したいところを消して
書き直すのが簡単だから。
中 村 入れ替えもできるし。
糸 井 ああー!
そりゃ大きいですよね。 
中 村 伊丹さんはわりと
進取の気性を持った人でしたもんね。
そんなふうに新しいものも
ちゃんと取り入れられる人だった。


伊丹十三記念館見取り図

六:イラストレーター

子供の頃から、絵の才能が抜群だった伊丹さん。
エッセイの挿絵や本のカバー画など、
多くを自ら手がけています。
展示には、原画もたくさんあり、
緻密な絵もユーモラスなイラストも、
伊丹さんのタッチを感じることができます。
手まわし式の閲覧台は、
次々出てくる絵が楽しい展示です。

糸 井 イラストの閲覧台が、
蓄音機になってる!
お客さんは回しますか?
中 村 はい、回しますよ(笑)。

手回し式の閲覧台は2台あります。
ほんの少しですが、回している様子を動画でご覧ください。
糸 井 絵が、考えに、似てますよね、やっぱりね。
中 村 そうそう。オーソドックスで、
うんうん。
いい絵ですよね。すごくいい。
鉛筆デッサン的なのも、
単線のイラストレーションも、
いいですよね。
これ「二日酔いの虫」。
このイラストはTシャツにしたんです。
自分が二日酔いの日に着ようと思って(笑)。
糸 井 (笑)。
こういう原稿も、
ちゃんと取っといてあったんですね。
中 村 あったんです。

伊丹さんのエッセイ『女たちよ!』のイラストの原画もあります。
糸 井 捨てるには惜しいっていうの、
誰が見てもわかりますもんね。
中 村 でも、素晴らしくいい状態では
保管されてなかったんです。
糸 井 出版社に置き去りみたいなことも、
ありえた時代じゃないですか。
中 村 あったでしょうね。
だから、見つからないのもあって、
散逸もしてると思います。
糸 井 引き出しにも、イラストが。
中 村 そう、
引き出しを自分で開けて見てもらうんです。
最近のミュージアムは、
来館者用のパソコンを並べておいて
画面で検索してもらう方式が多いんですが、
ぼくは、ミュージアムに来てまで
コンピューターの画面を見たり、
マウスを触ったりしたくないんです。
それより、本物をじかに見たい。
それも、見せられるんじゃなくて、
自分で能動的に見たい‥‥というわけで、
この記念館では、
愉しく見るための工夫がいろいろしてあります。

引き出しを出したり、いろんなところを見てみてください。
(つづきます)
2009-10-09-FRI
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コラム ようおいでたなもし、松山
  伊丹十三記念館のスタッフが、
記念館に来たついでによってもらいたい、
松山近辺の見どころや、おいしいもののお店を
ご紹介します。
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図版:トリバタケハルノブ