山岸俊男先生はこれまでも、
社会学に詳しくない人でも読めるおもしろいご本を
いくつも出されていますが、
この『日本の「安全」はなぜ消えたか』は、
またいっそう、するすると読み進められつつも、
ミステリーのようにドキドキする本でした。
そしてタイトルにあるように、
日本人ならきっとドキッとするようなことが
書かれています。
日本人は「謙虚」で、周囲のことを気づかう
「利他的」な人々で、まじめな「会社人間」‥‥
というのはどうも、違うようなのです。
それを解き明かすために、
たくさんの事例や実験の結果が挙がります。
たとえば人間は、自分の思いとは裏腹な行動を
することがあるのに、他人に関してはそう思わない。
ものごとの判断の基準は、自分が所属する社会において、
どっちが得かによって決まる。
農村の生活は心豊かな安心社会だが、
はたしてほんとうにそれだけなのか。
高度な信頼を必要とする都会の方が、
農村よりも他者との関係のうえで
発展的なのではないか、などなど‥‥。
なんだか日本人として、一個人として、
さいしょはしばらく不安な気持ちになりますが、
そういった価値観も、行動の癖も、悪いことではない、
という内容になっているので、
落ち込み過ぎることはありません。
むしろ、ちょっとした自分の行動を変えてみよう、
と思わせてくれます。
まだそれくらいの理解ですが、
ほんとうにおもしろかったです! |