お金アレルギーになってリストラされた
30代の元銀行マン高見武春くん。
お金を1円も使わない生活がしたくて、
東北の田舎の農村に
自給自足するためにお引っ越し。
とてつもなく世話好きの村長さんや、
自分のことを「神様」というおじいさんなど、
キャラの濃い村の人たちとの暮らしが
はじまるわけですが‥‥。
のんびりした田舎暮らしの話でもなく、
ファンタジーという言葉でくくれる話でもなく、
予想外の連続です。
こんなに先が読めないマンガは、はじめてかも。
まったく知らない土地に地図なしで行き、
道を曲がるたびに真新しい風景が
どんどん開けていくような感じがして、
それが気持ちよかったです。
ところで、最初のうちは、
都会からやってきた主人公の高見くんに
まったく共感できませんでした。
なぜならば、私がたいへんな田舎育ちだから。
生まれは北海道の極寒・釧路ですし、
母方は親戚一同、400年続く百姓です。
くわだって、すきだって、かまだって使えます。
田んぼで動けなくなって、もがいた経験もあります。
高見くんのような農業をやったことがない人が
冬がきびしい村にやってきたら、
周りが迷惑! 甘いわっ‥‥と、
読み始めは、1村民の気持ちになってました。
しかし、そんな私の目から見ても、
田舎のようすは細部にわたってことごとくリアルで、
そこに暮らす人々も、実在するかのような、
自分の想像力を越えた人たちばかりで、
そのリアルさゆえに、不思議なことがあっても、
だれがどんなことをしても、
「まあ、そういうこともあるだろうしなあ」
と、思えるようになっていました。
読後、自分のキャパが
ほんのちょぴりだけど広くなって、
息がしやすくなったような、
そんな余韻がいまだに続くマンガです。 |