この本の著者である
リータ・レーヴィ・モンタルチーニさんは
なんと1909年生まれ!
今年100歳を迎えられる、女性の脳神経学者です。
ユダヤ人として圧政下にありながらも研究の道を進み、
渡米後の1983年、ノーベル賞を受賞されています。
この本は1998年に出版された著書の全訳であり、
まさに、歳をとっても脳は衰えず
ますます進化することの証しのような本です。
著者はまず前半で、脳の研究の進歩をたどり、
近年明らかになってきたことを
順を追って説明しながら脳の可能性の高さについて
論じています。
このあたりは専門用語も多く、
すべて理解するのは、わたしには難しそうです。
でも部分的に、池谷裕二さんの『海馬』をはじめとする
本にあったあの話だな、と思いだすことができたので、
そちらも読んでいて良かった、と思いました。
さて本の後半は、
ルネサンス期の芸術家
ミケランジェロ・ブオナローティ(1475〜1564)、
科学者であり発明家である
ガリレオ・ガリレイ(1564〜1642)、
論理学や数学に長けた
哲学者のバートランド・ラッセル(1872〜1970)、
イスラエルを建国へと導いた
政治家のダヴィッド・ベン=グリオン(1886〜1973)、
絵画をはじめ造形美術作品全般で世界中に
その名を知られるパブロ・ピカソ(1881〜1973)の
5人について、ひとりずつその偉業をたどっています。
比較的長命だったこの5人が、
晩年になるにしたがって
ますます多くの創造的活動をしてきた様子が、
とてもおもしろく読めました。
「脳・精神の活動のこの特質は、今名をあげたようなその分野で傑出する物にだけ限られたものではなく、能力を妨げられずに発揮できる望ましい環境にあれば、人類すべてが共有するものだ。」(本書より)
という著者の言葉が心強いです。 |