生い立ちだけでも十分に衝撃的です。
貧しく苦しい、でも他人のために尽くし通したご両親。
そのご両親と故郷の村を
なんとか幸せにしたいという想い、
それから、生まれ持った激しい闘争心と執念の強さが、
戦後から高度成長期にかけての
時代のうねりと合わさり、本当に圧倒されます。
とにかく若い頃は怒って闘って怒って闘って‥‥。
でも、お世話になった住職さんの教えから、
今度は家族を守り、信念を守るために闘い始めます。
一度、方向を決めたら、
体がぼろぼろになるまで進みっぱなし。
大病をした後、さらに哲学は研ぎ澄まされて、
たどりついたのが、
木の加工方法である「EDS加工」。
どんな節くれだった木や曲がった木、クセのある木でも、
割れやすい竹や繊維ばかりの南国の植物でも、
とにかくなんでも
固く締まった使いやすい木材にしてしまう魔法の加工。
窯にいろいろな種類の木を丸太のまま放り込んでも
たった数日でそれぞれが適度に変化している、簡単さ。
どんな木でも、打った釘が抜けず、
端や節に打っても割れず、
建築資材として使えるようになるのだそうです。
これで、日本の林業が立ち直る、
貧しいアジアの国で産業を生むことが出来る、
地球だって生き延びる、
そう夢を語る石井さんの言葉も、
本当のように思えます。
でも、石井さんは現在、それを理解しない学者とも、
政治とも企業とも決別して特許を守り、
闘い続けています。
この技術を金儲けのために使ってしまったら、
たちまち日本やアジアの木々は買い占められて、
日本の村やアジア諸国の貧困を救うことは
出来ないままだろう。
できたら、財団を作り、
環境と貧困問題解決のためだけに
この技術が使われるようにしたい、とのことなのですが、
石井さんはその中途にいます。
現在、石井さんの頭の中には
この技術を発展させた新たな技術のアイデアが
詰まっているそうです。
それを実現するためにも、もう時間がない、
研究にもっと時間をさきたい、という心境が
最後の小川棟梁との対談で明かされています。
(ゆき) |