著者の曾野綾子さんは、
幼い頃からのカトリック信者であり、
人の心や家族をテーマにしたたくさんの作品で
多くのひとに読まれ、支持される作家であり、
NGOの代表として世界各国でボランティア活動をし、
日本財団の会長をかつてつとめ、
現在は日本郵政株式会社の取締役‥‥、と、
公私共に、人の間に身を投げ出したような経歴の方です。
しかし曾野さんの小説やエッセイを読むと、
人が本来持つ純粋さを無心に信じているとか、
理想の平和な社会を求めて、こういった活動をしている、
という感じは、うかがえません。
曾野さんのいろんな本から
「善人は、なぜまわりの人を不幸にするのか」について
書かれている部分を集めて抄録したこの本を読んで、
その「感じ」が、よくわかってきたような気がします。
しかし時とすると、善意ほど恐ろしいものはない。悪意は拒否できるが、善意は拒否する理由がないからだ。
(本文より)
善意の恐ろしいのは、善意で目が曇ること、
そのため「人はそれぞれ違う」ということが
わからなくなること。
私には、いくつかの軸で書かれている本書の中で、
この方面からの照らし方が、
もっとも、どきーん、としました。
でも、ほんの1年前だったら、
違うところが気になっていたような気がします。
ほんとうに人というのは一筋縄ではいかないですね。
できれば、他人に対してもそう思い、
自分の理想を押し付けたりしないように
気をつけたいです。
しかしその気負いも、「無理せずほどほどにね」と
曾野さんに言ってもらえそうで、いいんです。 |