糸井 |
バンドのメンバーどうしの中で、
「こいつは、
こいつのやっていることが
わかっていないなぁ」
と思う瞬間もあるわけですよね?
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山下 |
ほんとにうるさいやつがいると
「あそこで俺がこう吹いたのに、
おまえはなんでああやったのか」
という話になっちゃう。
同時に即興をやっているんだから、
なんだって起きるのにね。
クラシックだったら、
「まちがえたね」
「すみません」で済むんだけど……。
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タモリ |
ジャズだから、
「まちがい」ってありえないんだよね。
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糸井 |
つまり「センスが悪い」と言われるわけだ。
きついなぁ……。
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山下 |
そうそう。
「なぜ、俺の言うことがわからない?」
これは
人間どうしの戦いになっちゃうから、
ほんとにむずかしいよ。
それで落ちこんだやつだっているんだから。
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糸井 |
(笑)おかしいなぁ。
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山下 |
ピアノはそういうことを言われる率が高い。
立っている人のうしろで
伴奏することが多いじゃない?
そういうことがイヤだから、
ぼくは渡辺貞夫以来、
人のバンドで弾いて、
ある人の音楽に貢献するというのは、
できなくなりました。
ぜんぶ、自分がバンマスでやってるよ。
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タモリ |
セロニアス・モンクは、
マイルズ・デイビスの
裏でやっていたんだけど、
やめちゃったんですよね。
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山下 |
あれは、どちらも、
やらないほうがいいということになって……。
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糸井 |
ジャズの有名人として
名前が残っている人たちは、
全員がワガママですよね?
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山下 |
うん。
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糸井 |
ドキュメンタリーとかを見ると、
「そばにいたらイヤだろうなぁ」と思うもん。
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山下 |
そりゃそうですよ。イヤですよね。
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糸井 |
ジャズの人って、つぶしが効きますか?
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タモリ |
効かないんじゃないかなぁ。
山下さんは、
つぶしが効く、珍しいぐらいの人です。
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山下 |
ジャズマンって、案外、
まじめで暗いやつが多いよね?
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タモリ |
ええ。
ジャズ一本できていて、
もちろん話してみると
部分的にはおもしろいんだけど……。
俺、ミュージシャンが急に
「どうもありがとうございました。
えー、今度の曲は、
友だちのサキソフォンの何とかが
特別に参加してくれました」
みたいなことを、
ちょっとしゃべりだす時に、
すごく引く時がありますね。
そのまま、しゃべりなしで
次の曲に行ってくれないかなぁと。
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糸井 |
(笑)山下さんって
「昨日と同じですけど」
という料理は出せないタイプですよね?
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山下 |
それはそうです。
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タモリ |
「そのかわり、メニューは任してくれ」と言う。
「醤油? 今日はダメ」って。
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山下 |
(笑)そうだね。
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(つづきます) |
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