第8回 「雰囲気だけはジャズ」の人。

タモリ ジャズをたのしむには、
「俺の話を聞いてくれ」
の、その話を聞いてあげる
優しさを持たないといけないんです。

プレイヤーが
何をしてくれるじゃなくて、
自分がプレイヤーに対して……。
山下 まぁ、ジャズマンって、
どいつもこいつも、
いい演奏をしちゃった後は、
もう世界でいちばん
自分がえらいと思っていますからね。
糸井 作曲と演奏と、即興ですべてやるから?
山下 そうなんだろうね。その錯覚がすごい。

ただ、最終的には、
ジャズマンは、勝手なことをして、
自分で責任を取るしかないんです。

どんなことをしても自分の責任なんだから、
それでバカモノと言われて蹴りだされても、
しょうがないんです。
それでもしたけりゃやりなさいというもので。
糸井 なんか、剣の道みたいですね。
タモリ 剣の道です。
糸井 新しい斬り方を考えるんだけど、
それで死んだら自分が悪いという。
山下 そうそう。
タモリ 一度、
女性ジャズボーカリストの
公開オーディションというのを
やったことがあるんです。

バンドをつけて……おもしろかったです。

「自分はすごい」
と思ってるやつばかり来る。

そういう目で見ていると、
オーディションがおもしろくてしょうがない。
ものすごいヘタなんだけども、
雰囲気だけはジャズ。
糸井 今は、どういうところで
ジャズを演奏するんですか?
山下 純粋なライブというより、むしろ、
お酒を飲ましているところだとか、
蕎麦屋で、月一回やっていたとか、
そういうのもありますよ。

蕎麦屋のオヤジがうるさいやつで、
「ニューヨークじゃ、みんな、
 食いながら聞いてるんだから、
 日本人は蕎麦屋で
 食べながら聞いたっていいんだ」
とか。

そういうところで、
学生やプロになりたて、
みたいなのがやっていたり……
何でもないレストランに入って、
下でジャズが聞こえるから行ってみたら、
若いのがデュオをやっていたりする。

そういうのって、
ぼくが行く立川あたりには特に多いのかなぁ。
糸井 ほんとに、落語の状況と似ていますね。
落語も、そういうところでやりますもの。
山下 蕎麦屋、すごくうるさいんです。
お店に入ったら、もう、
すぐに真空管のアンプがあるの。

「すげぇ」と思ったんだけど、
うるさいことは、うるさい。
タモリ (笑)
 
(つづきます)



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2005-01-02-SUN


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