糸井 |
蕎麦屋のオヤジさんのように、
演奏じゃなくても、
場所提供ということで、
「俺の話(ジャズ)を聞け」
というタイプの人が、
やっぱり、混じりますよね。
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タモリ |
(笑)「俺の話を聞け」
というヤツもいるけど、
「こいつの話も聞け」
と連れてくるヤツもいる。
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山下 |
(笑)結局、みんな連れてきちゃう。
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糸井 |
まぁ、かっこよく言えば
「俺の話を聞け」は、
表現欲ということですよね。
それと、オーディオマニアと
ジャズマニアって、重なったりしていませんか?
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山下 |
そうだねぇ……よくわからない分野だけど。
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タモリ |
オーディオファンには、
クラシックだけっていう人もいます。
ただ、よく聞くとおもしろいですよ。
スピーカーから出ている
コードの間隔は何センチがいいかとか、
コードの長さをミリ単位で切っていって
「ここだな」って言ったり……。
こっちには、
わからないぐらいの差なんです。
実際に聞くと、やっぱり、
ものすごく、いい音なんですけど。
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糸井 |
それは……
「俺の話を聞いてくれ」の、
オーディオ版ですよね?
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タモリ |
(笑)そう。
だから、自分がいちばんなんです。
でも一理あるんですよ。
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山下 |
ただ、オーディオを極めた人って、
ライブを聞いていると、
音が悪く思えるんじゃないかなぁ。
そこをどう塩梅しているんだろう。
ジャズ喫茶のオヤジなんて
世界最高のプレーヤーの
最高の録音を最高の音質で
しょっちゅう聞いてるわけじゃない。
だから、ライブに来た
そこらのミュージシャンの音楽を
聞いておもしろいのかなぁ?
いつもカラヤンを聞いている人が
日本の楽団を聞いて
「おまえらは違う」
とか思っているような
ものなんじゃないかって、
ジャズマンの方では想像しちゃうよね。
だから、
ジャズ喫茶のオヤジとジャズマンって、
案外、微妙な関係です。
ライブ感覚とちがうもん。
オーディオで鍛えられているから。
それに、くりかえし同じものを聞くと、
それが完成した作品にも
聞こえるからね、ジャズって。
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糸井 |
ただ、そこには事件性がないですよね。
山下さんとタモリさんが
共通しておもしろがっているのって、
事件性のような気がするから。
次の瞬間に何が起こるか、
誰もわからないという事件性。
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タモリ |
そうです。
だから、音楽ができあがる
現場にいるという興奮があります。
産婦人科医じゃないけど、横で見てましたと。
音楽ができあがる場所にいるというのは、
やっぱりジャズの醍醐味です。
ある意味、演奏者と一緒になれる瞬間は、
そこなんでしょうね。
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山下 |
そうそう。
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(つづきます) |
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