糸井 |
タモリさんが関わっているジャズクラブ、
それが黒字ってだけで、すごいですよね。
|
タモリ |
すごいですよ。
家賃、5か月滞納してますから。
うちのジャズクラブは、
地下に2軒あったところを借りているから、
テナントから出ちゃうと
地下街が閑散とするわけ。
だから
「もう出ないでくれ」って言われていて……
だけど、ある時、内容証明書つきで、
「もう滞納になっていますので、
この次にとどこおった場合は出ていってくれ」
という紙が入っていたんです。
それで、お店のスタッフが
あわてて電話したらしいんです。
そうすると
「あぁ、うちも会社ですから、
一応、ああいうのは出しますよ」
と、笑いながら言ったんだって。
たまに、大家が激励に来るらしい。
「がんばんなさいね」
って……もうああなると立場が逆ですよ。
|
糸井 |
すごいなぁ。
そこでは、ジャズの演奏をしているんですか?
|
タモリ |
生演奏を、毎晩、入れてますよね。
|
糸井 |
それでもダメなんだ。
お客さんもいるんでしょう?
|
タモリ |
まぁ、少ないですけどね。
|
山下 |
毎晩やるからダメなんですよ。
週末だけにしておけばいいものを……。
|
タモリ |
そう。
毎晩やろうっていうことになって。
|
山下 |
豪華なもんだよね。
毎日毎日、違うヤツが来て、
生で音を出して。
|
糸井 |
山下さんも、
そこで音を出したことは?
|
山下 |
昔は、よくありますよ。
|
タモリ |
ミュージシャンは安いんですけど、
だんだん、ライブハウスって
潰れているんで……
ミュージシャンにとっての職場がないんです。
|
糸井 |
どこに、どういう問題が、
あるんだろうねぇ。
|
タモリ |
うーん。
|
糸井 |
いや、もちろん、
俺がその経営をやれば……
とかいうことは思ってないですけど、
なんだかものすごく簡単なことが
間違ってるんじゃないか、
という気もするんです。
|
山下 |
うん、そうね。
|
タモリ |
だからやっぱり
こういう企画で、ジャズを
ちゃんと解説していかないと……。
|
糸井 |
うん。
落語だって、みんな、
はじめてのお客さんばかりなのに、
「はじめての落語」を聞いた人は、
ニコニコして、帰りましたからね。
|
山下 |
でもさ、毎晩毎晩、
違う落語家が出てます、
っていう時、人は来ますか?
|
糸井 |
それはダメですね。
|
山下 |
ね?
|
糸井 |
それは、だから、
やっちゃいけないですよね、たぶん。
|
山下 |
そうだよね。
|
糸井 |
6日休んで、
日曜だけのほうがいいですね。
|
山下 |
そうでしょう?
週末だけのほうが。
でも、ジャズは
「毎日」をやっちゃうの。
|
タモリ |
やりますね。いつもやってますよね。
|
糸井 |
それをやってるのは……つまり、
「俺の話を聞いてくれ」だからですよね。
|
タモリ |
(笑)うん。
|
山下 |
(笑)経営者もそうなのよ。グルなの。
|
糸井 |
「こいつらの話を、毎日、聞いてくれ」
って(笑)。
|
タモリ |
「おまえの話は、もう聞いたよ」
「いや、今度は
ちょっと違う友達の話をしますから!」
「ほんと?」
「うん、これは、
ちょっと違っておもしろいですよ!」
|
糸井 |
……あぁ、それは、無理ですよね。
|
|
(つづきます) |
|
|